工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

S邸への李朝棚納品とマホガニー

李朝棚
この春に制作依頼されていた家具がやっと納品できた。マホガニーによる李朝棚。
画像の左はもうずいぶん以前に制作納品させていただいたもの。
右が今般あらたに制作したものだが、正面の扉、抽斗の配置などは依頼者の要望に依るもの。つまり既に使っていた3層の李朝棚のデザインと同じイメージで希望する収納を満たしたいという、やや無謀な話だ。
でもそうした無茶も受け入れ、解決するのが注文家具屋の務め。
ただ問題は塗装がウレタンクリヤで仕上げるということ。
かなり以前に納め、塗面は納品時と較べれば、退色などもあるだろうから、これに合わせ、かつ経年変化で同じように馴染んでくれるような塗装を施す、というこれまた無茶な注文だ。
しかし昔から世話になっている地域でも最高の塗装技能を有するA氏に依頼することで見事に解決。ご覧のようにまるで一連の制作の如くに仕上がった。
職人というのはあらゆる要求に、暫し考え込みながらも、ニコッと笑って「分かった、やりましょう」と頷くものなのだ。
ところで問題はこのS邸の飼い猫ちゃん。納品の時もじゃれつき、脚にまとわりついて大変だった。初対面であるにもかかわらずこの小さな主、猫好きなことが分かるのか、離れようとしない。
それはどうでも良いことだが、問題は設置された家具が痛むこと。
脚の爪研ぎ、あるいは粗相。いや、この猫はちゃんとしつけがされているので心配はないか。
今回、久々にマホガニーでの制作であったが、厚板も含めまだまとまった在庫もあるので、このマホガニーで一度各種家具でのシリーズものでも作ってみたいと思う。
今の時代、残念ながらマホガニーは人気がないから「何、コレ、ラワン?もしかして‥」なんて言われかねない。
言ってやろう。「冗談じゃねぇ、こちとら真性マホガニーだい。文句あんのかい」、ってね。
この材種の良さというものは刻んだことのある人には良く分かると思うが、その良さを生かしたデザインと仕事で人気復活を賭けてみるのも、家具職人の務めか。
棚の木彫「童子」は地元の木彫家、前島秀章の作品(前島秀章美術館

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  • こんばんは。
    マホガニーは時間が経つとどんどん色が濃くなってくる
    (良くなってくる)ので古い物と新しい物の色を合わせるのは
    たいへんでしょうね。地域にネットワークがあるのはありがたいことだと思います。
    マホガニーは好き嫌いの別れる材のようですね。私は好きです。

  • すばらしい ensemble ――。
    ぱっと見た瞬間、そこに行ってみたい、直にこの目でこれらのものを視てみたい、と思いました。
    もちろん、主役は、前面に並ぶ新旧ふたつの李朝棚。
    それを引き立てる脇役として、木彫があり、絵皿があり、うしろの壁にかけられた暖簾の書がありますね。
    >職人というのはあらゆる要求に、暫し考え込みながらも、ニコッと笑って「分かった、やりましょう」と頷くものなのだ。
    まさに、artisan としての矜持が光りますね。
    それで、一読者としてお聞きしたいのですが、うしろの暖簾の書は、どなたが書かれたのでしょうか?
    じつは、この夏に思い立って、○○の手習いを自己流で始めたのです。
    腕はまだまだ拙いけれど、眼は、いい書に接すれば接するほど、急速に肥えてきます。
    こういうのびのびとした書を、いつかは書いてみたいものです。

  • 風に吹かれて さん 晴れがましいコメントありがとうございます。
    書の筆者については、聞いていたはずなのですが、失念してしまいました。またオーナーにお会いしたときにでも尋ねておきます。
    書といえば工芸家の方々は素人なりにも味のある筆さばきをされる方は少なくありません。ボクが私淑していた陶芸家の先生もなかなかのものでしたね。
    ボクは?、さっぱりあきません。私書でさえワープロですもん(苦笑)

  • 風に吹かれて さん、書家の名前が判りました。
    浜松市在住の「内山斉放」(うちやま せいほう)さんという人です。

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