工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

春風に誘われて、外作業

桟積み
4月下旬並の暖かさ、に誘われて鼻歌交じりにトラックでドライブ。目的地は土場。
工場の周囲には土地が無く、少し離れたところに材木倉庫を構えた土場(材木の乾燥場のことを称する)があります。今日はテーブルの天板の材料出しです。
家具に用いる材木はしっかりと乾燥されていませんと使えません。
さっそく3年前から天然乾燥してきたブラックウォールナットを取り出してみました。
おそるおそる含水率計を当てました。
ウキウキ、嬉しさは春の陽気からのものではなく、その数値からです。1寸5分(≒45mm)の厚さなのに、何と13%を切る低い数値を示してくれました。


伐採時の「含水率」は100%を越えるものですので、そのまま使うとしますと、大変なことになってしまいます。家具は置かれる住環境の空気中の水分率(「平衡含水率」という、地域、季節によって異なるがaboutに言えば約15%)に限りなく近づこうとしますので、その結果痩せてきたり、反ったりします。この木の動きのエネルギーは驚くべきものがあるのです。結果、損傷したり、機能障害に陥ることになります。あるいはまた害虫、害菌の侵犯を受けやすくなります。
また木は乾燥しますと物理的特性(強度)がはるかに高まりますし、塗装のノリも良くなるのです。そうそう、それから軽くなりますから加工も容易に、運搬もラクチンに。
含水率計
乾燥させるにはTopの写真のように野外で【桟積み】といった「天然乾燥」をさせるのです。上述のように長時間(数年)適切な乾燥状態におくことで、平衡含水率まで落とすことが可能ですが、これだけでは不十分で10%以下まで落としてやる必要があります。
このためには「人工乾燥」という処理が必要になります。
ボクも「天然乾燥」の後に、県内西部にある乾燥工場に依頼して「人乾材」に仕上げます。(ここでは乾燥について詳述できませんので、あらためて本サイトにて解説できれば、と考えています)
しかし・・・、ブラックウォールナットに関しては、ボクは「人工乾燥」はしません。理由は「色」です。
ブラックウォールナットの価値はその何物にも代え難い独特で高貴な色気なのです。大変残念なことですが、「人工乾燥」をしますと、この色が褪せてしまうのです。
以前本サイトの「Monologue」(参照)でも触れましたように、市場に出回っているブラックウォールナットのそのほとんどは「人乾材」です。その色気は残念ですが本来のブラックウォールナットの色調を留めるものではありません。平板でパンチが無く、あでやかな生花が「人乾」を経るとたちまちドライフラワーのごとくになるようなものです。
そのため他の材種よりも、長時間天然の風に晒し乾燥度を進めるようにしています。
しかし、13%を切るなんて、オドロキのうれしい誤算でした。
幅広の丸太でしたので、2枚を接ぎ合わせて90cmの天板が取れそうです。

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