工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

職業訓練制度の新たな試み

グランシップ
昨日の納品行ドライブ過程でラジオから流れてきた(トラックは残念ながら iPod は接続できませんので<笑> )ニュースで注目されるものがありました。
これは県内の清水技術専門校(いわゆる訓練校)の木工科で、新たな職業訓練制度を導入する、との話しでした。
静岡というところは地場産業としての木工業が盛んな地域ですが、ご多分に漏れずやや斜陽産業といわれかねない状況を呈しているようです。このため若年労働者の雇用も思うように進まないという問題を抱えているといいます。
これを改善させるための行政側の新たな試みとして「日本型デュアルシステム」なる職業訓練施設と企業側の相互乗り入れというような官民一体型の人材育成システムを立ち上げようということのようです。(参照

家具製造の人材育成 来月から木工科でデュアルシステム 清水技術専門校
県は職業訓練施設と企業での実習を組み合わせた「日本版デュアルシステム」として、清水技術専門校(静岡市)の木工科で地場産業の家具製造業の人材育成を始める。同システムの木工科での実施は全国初。県は「地場産業の人材育成も全国的に珍しい」(職業能力開発室)としている。
 同システムはフリーターやニートなどの若年層の職業的自立を促し、雇用のミスマッチ解消を目指す。若年者の雇用対策とともに後継者不足に悩む家具製造業の活性化を狙う。
 訓練期間は5月18日から来年3月15日まで。家具製作に必要な材料や製図の基礎知識と、木工用各種機械器具を使った加工技術を身につける。清水技術専門校で6カ月間の基礎訓練を行った後、静岡市内などの協力企業10社で2カ月間の現場実習を経て、パートとして3カ月間働く。訓練を終えた段階で、合意すれば正規雇用となる。
 おおむね35歳以下で就職希望者が対象。定員10人で適性試験と面接で選考する。5月6日まで応募を受け付ける。

決して悪くないシステムと思います。ぜひ成功させていただきたい。


ただ、地場産業木工業を取り巻く疲弊状況という問題は単純ではない。若い労働力を確保させるための魅力ある職場環境の整備、職業意識の植え付け、誇り高い職人の復権をめざすギルド的職能集団の構築が欠かせないと思うのだが、こうしたパースペクティブに指標を定めた長期的、かつ本質的基盤整備をやっていこうという意識などどれだけあるのかは、はなはだ心許ないというのが実状でしょう。
数十年も職人として身を粉にして会社のために働き、不況になったからといってこの職人を解雇し、その穴埋めにパート労働に切り替え、次には技能水準が低下したからといって、「使い物になる若手労働者を送り込んで欲しい」とお役所に泣きつく。
ボク自身訓練校で基礎技能を学ばせてもらった経験もありますが、半年や1年で職能など身に付くものではないです。訓練校の指導教官を育成する訓練大学からやってきた人の下で訓練することが多いのでしょうが、先の解雇された老練な職人を適切に配置し、じっくり腰を据えてカリキュラムを進めるといった事なども含めた重層的な指導人材配置を試みるなど、手厚いサポート態勢を考えることも必要でしょう。
写真は今日出席した「社会講座」の会場「グランシップ」なる建築物です(磯崎 新 設計)
普段、工房での仕事ばかりですので、頭は錆び付いてしまってます。たまには脳みそに刺激を与えるということもしておかねばなりません。各界、気鋭の研究者、碩学の学者が毎週来てくれてます。

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