工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ルーターマシーンについて(その1)

ルータービット
ルーターは家具製作、木工作業には欠かすことのできない切削用の機械だ。
その用途は成形加工、せん孔、切り抜き、大入れ、座繰り、彫刻などと様々なことに使われる汎用性の高い機械だ。
類種として大型のルーターマシーン(ピンルーター)、ハンドルーター、トリマーなどいくつかのタイプがあるが、今日はルーターマシーン(以下、ルーターと略す)の加工についていくつかのことに触れてみる。
(1日で記述できる範囲を超えているので、数回に分けて記述する)
以前ある木工家が管理されているWebサイトの掲示板でこのルーターについて話題になっていたことがあり、ここに割り込み数度書き込みをさせていただいたこともあった。
どのようなことが話題になっていたか簡単に紹介すれば…、
・ルーターは危険でハンドルーターしか使っていない。
・訓練校でも危ないからといって満足に操作方法を教えてもらえなかった。 etc
といったことのようであった。
これに対してハンドルーターと較べピンルーターのほうがいかに切削性能が高いか、むしろより安全である、訓練校で指導されないのは問題だ、といった主旨で書き込みをした。


ボクもかつていくつかの木工所に所属し、またいくつもの工房を訪ね、このルーターの設置状況、活用状況などについて見知る機会を得たが、上の掲示板で交わされている状況は決して特異なことでもなく、ごく当たり前のものであることが言えるようだ。つまり設置されている工房は少ない。設置していてもその活用状況はとても使いこなされているとはいえないものであった。
その理由として考えられることはやはり掲示板で語られていた、危険性、その性能についての理解の浅さ、ハンドルーターで事足りるので不要、といったことになろうか。
しかしこれらはいずれも正しい解釈とは言えないだろうと考える。故無きルーターマシーンへの誤解であろう。
ハンドルーターと比較して、あるいは手加工での成形作業などと較べての優位性を以下に箇条書きしてみよう。

  1. 切削性能が高い
  2. 汎用性が高い
  3. より安全である

1,切削性能が高い
・まず取り付けることの出来る刃物だが、ハンドルーターでは日本のメーカーのものでそのシャンク(軸の太さ)は12mm(or1/2″)が最大だろう。海外のものでは16mmのものがあるようだが、一般的ではないだろう。
ルーターマシーンのほうは16mmまで対応できるものが多い。(一部では12mmまでのものもある)
したがって取り付けられる刃物の大きさが異なってくる。
刃物のサイズが大きいということはそれだけ切削性能も高いということになる。
・刃物の大きさが切削性能に関わって来るということは、いくつかの要素を含んでいる。まず単純に切削量が異なってくるということが1つ。
次ぎに切削肌の精度に大きく影響するということを見逃してはならない。
一般にルーターの回転速度は20.000rpmほどだ。これはハンドルーターもルーターマシーンもあるいはまたトリマーでもさほどの違いはないだろう。
取り付ける刃物の大きさ、つまりその刃径が異なれば周速度(単位時間あたりの運動量)が異ってくる。このことによって切削肌が異なってくるのだ。言い方を替えれば1刃あたりの材に接する(削る)量が少なければ少ないほどその切削肌は滑らかで、かつ、(ここが重要なところだが、)逆目に強いということになるのだ。
このことは市販のトリマーの刃でも同じ事が言える。例えば1分ボーズ面のビットを選択するとき、そのコロの大きさ(=刃物の大きさ)を考慮しているだろうか。
詳しくは解らないが一般にコロ径は8mm、13mmなどと数種あると思う。その切削肌、耐逆目ということで言えば、できるだけ大きい径を選ぶべきだろう。
これは全てにおいて言えることだ。
ストレートビットでも倣い切削他、とにかく大きい方が切削能力は高くなるのでそうした基準で選択するのが良いだろう。大きい刃の方が軽く、スムースに進むだろう。
ただし曲面加工の場合その対応能力は自ずからその刃径に規定されることは言うまでもない。
・次ぎに当然のことだが、ルーターマシーンは0.6t〜という重量を持っている。そのためボリュームのある被加工物を対象としても安定的な切削加工ができる。
ハンドルーターは被加工物を固定して、機械の方を運動操作させることになるが、しょせん人力での操作なので、自ずからその切削量には限界がある。
                    (今日はここまで)
        top写真はルータービットだが、全て替え刃。説明は次回に

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