工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ミズメ、再び

ミズメチェスト


先の「器のチェストbyミズメ」、塗装を終え、駆体に甲板を取り付け、暫く乾燥時間を置き、発送準備という段取りだったが、甲板だけ再塗装することにした。

駆体に取り付けた後、サンディング作業でのペーパー脚が気になったから。
今回は #320でフィニッシュとしたのだが、少し番手の選定が甘かったかもしれない。
駆体に汚れ止めの養生を行い、あらためて#400 → #600と、より丁寧に再度サンディングを行い、塗装を施す。

どうして誤ったか。ミズメという材質の堅さ、緻密さが想定を超えて番手の細かさを要求したということである。

木を扱う人には常識の領域の話だが、柔らかい木には細かい番手で追っかけてもさほどの効果は認められないし、逆にローズウッド、黒檀のような堅い木にはよほど細かい番手で追っかけていかないと良質な板面は得られない。
ミズメの場合、最低でも#400以上でないと無理だということになる。

うちでは主たるサンディングの工程はストロークサンダー(3点ベルトサンダー)で行うのが一般だが、駆体に取り付けた状態ではこの方法は使えない。
したがってBOSCHのランダムオービタルサンダー、 #400でまず丁寧に研磨し、その後硬質ウレタンのサンディングパットに#600を取り付けて行う。
それぞれのサンディング工程の前には水引きをするのがより効果的ではあるが、1度オイルを含浸させた板ではその効果は望めない。

ま、しかし大きく改善したのでありがたい。

せっかくだから、国産材のいくつかの樹種とともにミズメの堅さというものをその強度の数値から参照してみようと思う。

材種 気乾比重 曲げ強さ 圧縮強さ せん断強さ
ミズメ 0.69 1,090 500 150
真樺 0.69 1,060 475 145
クリ 0.55 785 425 80
ケヤキ 0.62 1,010 475 130
ヤチダモ 0.65 1,030 465 125
単位はいずれも[Kg/c㎡]
須藤彰司 著、「カラーで見る世界の木材200種」より

木の物理的性質、その強さというものも、様々な側面から評価されねばならないが(収縮率、耐久性、摩耗性、加工性 etc),ここで示した強度は客観的評価の一次データとして有用であることに異論を挟むこともない。

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  • ネットで少し調べてみると、ミズメの白太はマカバの
    ように真っ白ではなくて、少しピンクがかっている
    ようですね。
    オイル塗装で濡れ色になっていることもありますが
    この程度であれば、赤身と白太の差をあまり気にしなくても
    良いのかもしれません。

  • acanthogobiusさん、ネットと申しますと、ヤフオクなどに出品されているということなのでしょうか。へぇ〜、そんなものまでもね。認識不足でした。
    材色を文字で表現するのは難しいところですが、
    真樺 心材:淡紅褐色  辺材(白太):黄白色
    ミズメ心材:紅褐色   辺材(白太):黄白色  
    といったところです(記事中、須藤彰司 著書より)
    つまり辺材はさほど変わらないけれど、心材の赤みが違う、ということですね。
    これらに較べ、雑カバの心材は淡褐色、辺材は灰白色といったところでしょうか。
    ミズメ辺材がピンク掛かっていると言うのはちょっと違うかも知れません。
    ところで、家具制作において材色という問題は重要で、またなかなかやっかいなものでもあるわけですが、ご懸念の赤白はその代表的な問題の1つですね。
    今回は顧客がミズメ、ナチュラル仕上げをご希望されたわけですが、私はいくつかの着色方法のバリエーションを持ち、対応しています。
    ミズメという材種で思い浮かべるのは松本民芸家具であるわけですが、ここの塗装システムはこの赤白問題を巧妙に解決しています。
    薬品着色と顔料着色など複数の着色方法を施すことで、あまり色差のない結果を生み出しています。
    赤身(タンニンが固着している)への着色→薬品着色の効果
    白身(タンニン成分は少ない)への着色→顔料着色の効果
    ただ平板に真っ黒に塗っているわけではないのですね。均質に赤黒く底光りするような良質で高度な塗装システムです。
    私はこうした手法は取りませんが、阿仙、あるいは劇薬ではありますが重クロム酸溶液など、薬品着色による効果を希に使うこともあります。
    ただ何でもかんでもナチュラルオイルフィニッシュというのも芸がありませんので。
    アンモニア燻蒸で独特の色調を出すのも効果的です。
    今後、良質な材木の入手が困難になってくる時代に、塗装システムの向上は必須の課題になってくるでしょうね。

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