工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

Tool Test プランジルーター(FWW誌から)

ルーターテスト1


Fine Woodworkingマガジン #214(最新号)に〈Heavy-Duty Plunge Router Tool Test〉が掲載されている。

このBlogにも詳しく紹介してきたようにうちではFestool社のOF 1400という2-1/4hpのものをメインのハンドルーターとして快適に使用している。
今回はFestool社のものを含む3hpのプランジルーターを対象としたテストではあるが、興味深く見較べることができた。(Blog内 インプレッション記事

読後、結論的に申せば、OF 1400という機種選択は全く正しかったことを傍証するものとなっていて、その意を強くしたというところである。


テスト対象とされた機種は以下の通り。
・Bosch 1619EVS(→Boschサイト
・Dewalt Dw625(→DeWALTサイト
・FestoolOF2200(→Festoolサイト
・Freud FT3000VCE(→Freudサイト
・Hitachi M12V2(→日立工機サイト
・Makita RP2301FC(→マキタ サイト 取説PDF[商品紹介ページがないので]
・Porter-Cable 7539(→Porter-Cableサイト、DELTAと合併しちゃったの?)
・Triton TrA001(→Tritonサイト

上記国内メーカーの2機種は、いずれも同機種名で国内販売されている。

誌面ではそれぞれ個別の評価も掲載されているので、詳しくは本誌、あるいは会員登録されていればWebサイトから提供されているPDFでご覧いただくとして、ここではBEST OVERALLの機種と、BEST VALUEの機種について簡単に触れるに留めておきたい。

ルーターテスト2まずは意外だったのが日立の〈M12V2〉への高い評価。
〔BEST VALUE〕として選定されているのである。

無論、単に価格が安価というだけではない。
「This router plunges smoothly and handles very well.・・・
Adjustments to plunge depth settings are easy, and switching between macro and micro adjustments is simple.・・・」
プランジルーターに求められる機能と性能を高い水準で満たしているというものである。

ただ残念なことに、これは〈Festool OF2200〉との比較でのことになってしまうのだが、
「the router’s dust collection is ineffective」とされ、集塵機能の問題が挙げられている。
加えて付属のレンチが無骨であることも指摘されている。(これはどうもボクも使っているM12の頃から何ら改善されていないということのようだ)

しかしいずれにしても「M12V2」がBEST VALUEという評価されていることは素直に嬉しい。
日本製ということはもちろんだが、ボクが最初に購入したハンドルーターというのが日立のM12という機種で、今も現役で稼働中であることからだが。
このM12V2というのはこの後継機種ということになる(V2と言う名称はVersion2を意味するのか?)。

以前〈Festool OF 1400〉の記事のコメント欄だったか、この日立 M12V2をガンダムのようなデザインとして、そのイメージをくさしたのだったが、撤回すべきかもしれないね。
国産老舗のメーカーとして、その開発努力を称えよう。

なお、このBEST VALUEだが、その価格評価は、あくまでも米国内でのものであることを知っておきたい。
製造国内のユーザーからすれば、いわば逆ざや的な価格設定であるのは競争原理からのものとはいえ、これを穏やかに理解するのは困難。

国産といえば圧倒的人気を誇るマキタだが、この〈RP2301FC〉という機種は、照明(LEDランプ?)、スピンドルブレーキ、デプス機能などは評価されるものの、プランジメカニズムが弱い、あるいはパワースイッチの操作性に問題があるとされている。
「The power switch was a nuisance,too.‥‥If you don’t immediately release the safety switch, the router is locked on and turning it off can be a nuisance.」
と、2ヶ所にわたって「nuisance」の言葉が使われているが、ちょっとあんまりではないか。

最後に〔BEST OVERALL〕、つまり最優秀機種だが、やはりというべきか、〈Festool OF2200〉が高い評価を受けている。
「・・・Ergonomically, it was the most comfortable router to use.・・・」
「Ergonomically」は人間工学的な作り, 使い勝手, 使い心地と訳されるようだが、全くボクも同様な評価であることは先のBlog記事でも記述してきたところだ。
さらに、BEST VALUEとされた日立の〈M12V2〉の大きな減点要素だった集塵機能が、この〈Festool OF2200〉は「Dust collection is excellent」として最高の言葉を用い、高い評価が与えられている。

RouterOF1400なおこれは現在の木工関連の電動工具への評価基準として全般的に言えることなのかもしれないが、集塵性能への評価が欠かせなくなりつつあることを強く示唆するものと言えるだろう。

実は過去にも記述してきたところであるが、
〈Festool OF1400〉を導入して、はじめて集塵性能の高さが与えてくれる快適さに気づかされたのだが、これは集塵機のパワー、およに切削量(排出量)に規定されるのは当然としても、Festool社の機種の集塵システムが80〜100%のダスト回収率を誇るということを目の当たりにして、その快適さはとても驚かされるものだった。

それまではハンドルーター作業と言えば帽子を被り、マスクをして、防塵メガネを装着して‥‥、もうもうと吹き上がるダストにまみれながらの作業であると覚悟していたし、訓練校の頃、若い訓練生がいかにも激しい作業をしているんだぜ、とばかりこれ見よがしにダストまみれを誇ったものだった。

何と時代遅れで、クリーンな作業と対極にあるダストまみれを誇る幼さだったことか。
これはダストまみれになるという作業環境を改善するだけではない。

ダストが少なからぬ切削作業における障害になっていることは経験的に知られていることでもあるからだ(テンプレート切削ではダストがテンプレート倣いを阻害する)。

しかもFestoolルーターの集塵システムのアタッチメント取り付けは、工具フリーのワンタッチというすばらしさ。
ユーザビリティをとことん追求した設計思想をそこに見る思いで感激もの。

画像上はテンプレートガイドを本体に取り付けようとしているところだが、ただ所定の場所に押し込むだけでバチッと固定される。(解放は画像下に見えている緑のロック解除ボタンを2本の指でつまむだけ)

画像下は集塵アタッチメントを取り付けようとするところ(工具フリーで、ベース所定の溝に合わせ、ベースに付いている緑のレバーを倒すだけ)。しかも集塵効率抜群。

もちろん、ここで評価される〈Festool OF2200〉と、〈Festool OF1400〉は別機種だ。
しかしこのFWW誌に紹介され、高い評価を受けている基本的な機構はほぼ同一と考えて良いと思われる。
開発時期もほとんど同時期であったようなので、パワー、およびハンドル機構などに差異(優劣ではない個々の特質としての差異)はあるものの、他の基本機能においてはほぼ同じとみて良いだろう。

ここでも触れられていないし、また恐らくは日本で最初に紹介したこのBlogの記事でも書き落としてしまったことの1つ、スピンドルロックの高い機能について触れておきたい。
スピンドルロックの締め付け、および解除はシーソーボタンを押さえ、レンチで六角ナットを操作するのだが、ここにラチェット機構が内蔵されているのは作業者にとってとても快適。
他の最新機種にも同様の機構があるのかもしれないが、これは高く評価されるべきところだ。

コレットナットの上の横長の緑色の部分がスピンドル操作の時のロックシーソーボタン。これを左右どちらかに倒すことでロックされ、1本のレンチでカチャカチャとラチェット機構が働く(締め付け、解放で倒す方向が異なる)。

さてうちには大型のピンルーター(ルーターマシン)が設置されているので、ハンドルーターとしては3hpまでは必要とされず、〈Festool OF1400〉の2-1/4hpで必要にして十分。
重量が7.8KgもあるOF2200はとても自由な扱いはできない。OF1400の4.5Kgという重量は手頃なボリュームだ。

サム・マルーフのビデオでは片手でハンドルーターを振り回している姿に圧倒されるのだが、ボクにはとてもそんな真似はできない。
〈Festool OF1400〉の高い性能とErgonomicallyを享受し、快適なルーター作業を楽しんでいきたい。

* 画像はFWW誌よりお借りしました。感謝 !

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 「ガンダムのようなデザイン」と言ったのは私でした。
    今でも、その印象は変わっていませんね。
    FWW誌最新号は、まだ私の所には届いていません。
    Porter cableの3馬力の固定ベースをルーターテーブルに
    付けて使っていますが、3馬力のプランジベースを手持ちで
    使うには、確かに重過ぎますね。
    OF1400は使ってみたい機種ではあります。

  • acanthogobiusさん,
    私はルーターテーブルとしての使用経験は少なく、コメントできる立場にはありませんが、
    Poter Cableはルーターテーブル用に固定で使用するには適性機種の1つかも知れませんね。
    電動機としての基本的性能、あるいは昇降システムにおいて比較優位であるように思います。
    新幹線車中、iPhoneからです。

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