工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

古色のTVキャビネット

37Z1キャビネット


地デジテレビ、当初の予定より早まり、昨日納品され、セットアップしたところ。
セットアップとは言っても地デジ、BSデジタル、それぞれのアンテナを接続するだけ。
録画は外部HDDにUSB接続するだけという簡単な作業。

アンテナもUHF、およびBSパラボラ、それぞれこれまで20数年間使い続けてきたおんぼろアンテナではあったが全く支障なし(地デジ対応はぎりぎりまで遅らせたが、BS受信の方は放送開始直後のことだった)。
地デジ・コールセンターへの問い合わせでは旧いパラボラはCSには非対応と言われていたが、そういうことはなく問題はなかった。

家電店、その他地デジ普及促進関連のところの言い分にそのまま乗らないように、自己武装していくことも重要だね。

風雪に耐えてきただろうからアンテナの信号取得レベルは幾分下がっているはずだが、そこはデジタルであるので、映れば完璧だろうし、ダメなモノは全く映らないはず。
今度暇があったらパラボラのお椀、フキフキしてあげようかな。

映像は高精細。階調豊か。
東芝のREGZAという機種だが、フルハイビジョン、LEDパネルは所詮韓国LG電子のもの。
詳しくは良く分からないが、フルハイビジョンLEDパネルを自社生産している国内メーカーはシャープだけでしょ。違った?
家電メーカーでの画質の差異はパネルの品質の他、映像エンジンが大切だが、東芝のものは悪くない。
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さて、TVキャビネット。


縦横、一間 ≒1,800mm、要するに床の間のようなところに嵌め込んだ、という状態。(画像のTVは嵌め込み)
下台中央(ガラス扉部)にAV機器収納。
抽斗2杯はDVDメディアなどの収納
右側はCDディスク収納、3段の吊り䙁方式の抽斗にびっちりと。
左側は以前は小型のテープデッキなどを収納していた。

上台、下部は4本の柱だけ。37インチパネルがジャストフィット。(というより、TVサイズをこのキャビネットに合わせただけ)
上部にガラス扉の収納
上台の構成は大型のブックシェルフ型のスピーカーを左右に配置することが前提であったので、このような配置、構成になった。
また全体をキャビネットとすると、かなり重くなる(重量という意味ではなく、デザイン的に)ので、上部は柱だけで支える構成とする。

TVキャビネット2


デザインの特徴としては

  • 甲板見付け木端を円弧状に。
  • この円弧状に対応させ、下台は左右の袖へ向かって中折れに。
  • 左右中央柱の真ん中で角度処理。
  • 横のリニアなラインを意識した。
    ▼例えば棚口のラインをそのまま扉羽目板デザインにも延長させ、
    ▼あるいは下台の抽斗の手掛けの部位の延長も同幅で左右扉の横框にする、
    ▼さらには縦方向としては、中央の柱を上下、同位置に配置する、
    など。
  • 扉の框構成は通常のものとは異なる。
    ▼回転軸側の縦框は通常通りだが、召し合わせ側は横桟を外側まで通す。
    これにより観音開きの2枚の扉の横桟が連続した1本の桟としてイメージされる。
    ▼抽手は、この横框から一体的な削りだし。
    左右、観音扉の中央に方形の1つのブロックとして一体的にデザイン処理。
    ▼左右の扉に隙間が生じているが、TVキャビネットという、かなりの排熱環境下にある木製家具は過酷だ。長年の使用で繊維方向の痩せも出てくる
  • 木取りについて
    ▼以前も框の木取りの話しのところで、横框の上桟には柾目を配置し、下桟は板目を持ってくることも多いと言ったような話しをした記憶があるが、ここにもそれが見てとれる。
    ▼柾目、板目の表情の使い分けに腐心したところも伺える。
    ▼あるいは観音開き扉の横桟の木取りも一体として行うことで品質も高まるといったところなどは、ワークショップスタイルの1つの制作基準でありたい。

このミズナラは道産のかなり良質なものだったが、板目の細やかで美しい木目がそのことを表してくれている。
SP前の時計はクラロウォールナットの自作

古色であるのは使い込まれたということと、阿仙で着色してのオイルフィニッシュであることによる。

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制作年代は30代も終わろうとする頃のものだが、
現在同様のものを制作することになれば、いくつかのところで改良が必要になってくるだろうね。
CDは収納しきれずに、溢れかえっているし、
こうした中型サイズの液晶パネルを置くのであれば、もう少し余裕を持ったデザインが必要。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • これは?テレビの画面を塗りつぶしたのですか?
    せっかくのキャビネットが汚くなっちゃいましたね。
    地デジへの切り替えで大型の液晶テレビを買う人が増えて
    キャビネットも需要が出るかもしれません。
    今のartisanさんでしたら、どう作るのか楽しみです。
    機会があったらご紹介ください。
    スピーカーの磁気は影響ないですか?
    防磁タイプでしょうか?

  • >テレビの画面を塗りつぶした
    ストロボ使用したために、液晶画面から枠まで反射を起こしたために、仰る通り黒で潰しちゃいました。
    また、ご指摘を受けて、枠も少しレタッチしましたよ(レタッチ下手くそですみません)。
    >大型の液晶テレビを買う人が増えてキャビネットも需要が出るかも
    私は必ずしも積極的では無かったのですが、これまでも2桁近いTVキャビネットを作ってきています。
    最初は12年ほど前になりますでしょうか。
    この依頼を受けた時は、既成のものがいろいろあるので、そうしたものを探した方が、、などと断ろうとしたのですが、発売されたばかりのプラズマ50インチほどのものを置くので、既製の合板ものではダメ、ということでしたね。(当時のプラズマはかなりの重量があった)
    SPはJBLのスタジオモニタですので、防磁はされていません。
    ブラウン管の時は影響がありましたが、調整機能がありましたので、平気でしたね。
    液晶は大丈夫なようです。

  • 柱上部に見られる三角のものは何でしょうか?

  • 古谷さん、確かに妙に目立つ▲ですね。
    この液晶TVの重量は、わずかに16kgです。しかし20数年前の大型TVはこの3倍の重量があったと思います。
    甲板下の柱位置部(上台柱とTVの重量が掛かるところにあたる)にはこの重量を支えるためのごっつい貫(下台の仕切り框の上桟にあたります)を配置しています。
    この貫を柱に貫通させたのですが、見付に覗く部分を意匠的に施したというわけです。
    ちょっとキッチュだったかしらん (__;)

  • 写真、良くなりましたね。こうでなくちゃ。
    でも、重厚な木製家具とプラスチッキーな(失礼)
    デジタル機器の組み合わせに、何となく違和感を感じるのは
    私だけでしょうか?
    なぜでしょう?

  • 解説ありがとうございます。意匠的な通しホゾというわけですね。僕はこういうアクセント結構好きです。抽手を含めた扉の框構成も流れを感じさせ、効果的だと思いました。

  • acanthogobiusさん、プラスチッキーですか、ははは
    確かに‥‥、ま、でも黒一色のミニマムデザインですので許せる範囲かと。
    欧米では、この無骨なTVモニタを完全にクローズドにし、フリッパードアで納めるというシステムが比較的多用されているようです。
    私も1990年代初期、六本木のパブレストランに、3軒間口、8尺高さののゴージャスなバーキャビネットをその他もろもろ(カウンター、扉、テーブル等々)とともに制作したことがありますが、この時はこのフリッパードアでの扉クローズドシステムにチャレンジしたものです。
    あんたならできるはず、などと乗せられ、、
    バブルな仕事でした。
    話しが替わり恐縮ですが、そうした大物を手掛ける機会に乏しい現代の若い職人はちょっと気の毒。

  • 古谷さんのような方にお褒めに与るのもお恥ずかしい話しです。
    しかし、視るポイント、また美意識において共通する部分があるというのはありがたいものです。

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