工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

POP UP studioに描く(森下真・家具展)

POP UP studio1

表現活動において、展覧会という催しに何を求めるか、という問いにはいくつかの答え方ができると思う。
これはファインアートに限らず、ボクたちが企画する木工家具の展覧会においても本質的に大きな差異はない。

すなわち、作家が心血を注いで創作した作品の披露であり、これを広く一般に開示することで批評を受けるというのも主要なテーマの1つ。
木工家具展覧会の場合では、機能における合目的性、時には新奇性であり、それらに貫かれる美質を問うものであるだろう。

これらを通して作者の美意識、造形での力量、そして当然にも木工という手法を用いるからには投下された技法の練度、多様性、なども問われるということになる。

それらの1つの結果として売買が成立するということもあるわけだ。
顧客との間では、何か、パンやら牛乳をコンビニで求めるといった消費動向とは本質的に異なる関係性がそこにはある。

これまでファインアートから家具の展示まで様々なものを積極的に観てきたボク個人としては、展覧会に求めるものは何かと問われれば、作品の背景に潜む作者の美意識、造形における批評性というものを常に考える。
そうした要素を満たすものでなければ観るだけの価値はないと考えている。
モノに溢れかえる現代社会にあって、あえてその世界に身を投じて作品を世に問うという営為というものは、優れた批評性が無くしては意味はない。

木のものは暖かくて良いですね‥‥、手作りですね‥‥、といった陳腐な常套句で事足れりとする、両者のズブズブな関係性というものは、批評性とは無縁。

今日は森下真さん(DISCREET CHAIR)の個展が開かれている「POP UP studio」を訪問。
初日に出掛ける積もりだったが、甲州への出張があり叶わなかった。
申し訳なかったね、とばかりに照れ笑いを振りまいて、来訪客と談笑する場に割り込む。

真新しい白を基調とした清潔感あふれる小さなギャラリーに、テーブルセット、ソファ、キャビネットなど、新作を中心に展示されている。

工房名にもある通りチェアメーカーの森下さんだが、そのスタイリッシュなデザインと造形力は、新たに起こしたと思われる新作テーブルにも遺憾なく発揮されている。

前段における美意識と批評性というものについて考えれば、この森下さんの個展は十分に楽しめるものだろう。
本人がこれを読んで、“的外れ ! ”と言われても、である。

会期はもう残すところ2日間となってしまったが、本人も笑顔で迎えてくれるので、励ましに(冷やかしに?)行ってくれると嬉しい。

個展要綱の詳細はこちらから
画像上は前庭からのPOP UP studio
画像下は内部(一部)

コンデジ携帯して出掛けたものの、バッテリーが空で撮影できず、iPhone 4 での撮影になってしまった。
いずれ本人がWeb、Blogにupしてくれるでしょう。

POP UP studio2

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