工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

樺のコレクションテーブル

collection table

コレクションテーブル by Birch


樺での制作
本来はこれはブラックウォールナットによるものなのだが、展示会でこれに目を停めた客の要望で材種およびサイズ変更での新たな制作となった。

濃色材と白木では大きくイメージが異なるのをあらためて感じ入る。
発注者の受け止め方はどうだろうかと、少し気を揉む。
白木はより端正に映り、また軽快でカジュアル感がある。

仕事としてはブラックウォールナットの方が材種の固有の特徴でもある靱性からして、やりやすいことは確か。

しかし、かつて松本民芸家具に携わり、また引き続いて地元のこのメーカー特約代理店の特注家具の制作に勤しんでいた頃、集中的に樺材と戯れ親しい関係にあったことからすれば、違和感なく快適に作業できたことは言うまでもない。

サイズを20%ほど増大させたものの、脚部のボリュームは変えていない。
ここをあまり大きくすると本来のエレガントさが損なわれる気がしてできなかった。
バランスとしては悪くないだろう。


foot今回戸惑ったのがステーのセッティング。

前回のデータは図面に印すことなく終えてしまったようで、再度の確認作業に追われることになった。
さほどのことでもないが、ハードウェアのセッティングが重要なものであるにも関わらず、認識の甘さが出たというところか。

機能としての特徴はあらためて語ることもない。
コレクションされている器、小物などをディスプレーしながら、お茶を楽しむ。
あるいは接客の時、客人に好みの器を選んでいただき、それで供する、という楽しいテーブルだ。

日本国内においてはこうしたものはかなり特異な分野のものであるようで、受注に繋げるというのは容易くない。

ただこのような異分野のものを定番に確保することで、家具工房としての意匠的なイメージを膨らませる効果はあると見る。

なお市場ではいわゆるアンティーク家具などから見いだせる分野のものかもしれない。
しかしどうしても様式的で過度な装飾が施されたものになりがちであるので、こうしたシンプルでクラフト的なものの価値は見いだせてもらえるのではないか。

ディテールを見れば脚部のテリ脚が特徴だが、この辺りは実はとても微妙。

過度に有機的なフォルムにするのは好みではないし、かといってミニマルなものではおもしろくも何ともない。

ほどよく、外連味が無く、美しく造形するというのはとても難しい。

なお、ブラックウォールナットのものが半製品として在庫してあるので、受注承りますよ (^^)


《Collection Table》

Size(mm):970w 630d 400h
Material:Birch
Finish:Oil Finish
Inside partition:3 × 5

open

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  • ブラックウォールナットとは、随分イメージが変わるもんですね。
    樺の縮みとガラス(またはアクリル?)の透明感がマッチしていて
    美しいです。
    先日の鼓継ぎ手が、ここに使われているのですね、名古屋で見せて
    いただきました。
    ところで、このように細い部材が多い場合、樺の白太はどうするのでしょう?
    1本の部材に赤白混ざると、ちょっと変ですので、白太の部分はどこかにまとめて使うような事になるのでしょうか?

    • acanthogobiusさん、過分な評価で面映ゆいですね。
      この樺はあまり良いものでもなく、ウダイ樺などと呼ぶものですが、白太が多いです。
      今回は顧客の要望でできるだけ明るく、ということもあり、あえて赤身を避けるような木取りでした。
      脚部拡大の画像、ガラス甲板枠をご覧いただければお分かりのように、ガラス側に少しだけ赤身が見えています。つまりほとんどが白太のようなもの。

      話しは変わりますが、この留めで回した枠の木取りは全て柾目です。
      しかし柾目製材の荒木から木取ったと言うことではありません。

      1.8寸板の板目(木端が柾目になるような)から取ったのですが、
      妻手+長手の長さで、2枚。1.2寸の小割にし、ぐるりと柾目で、かつ木目が繋がるように配したわけですね(以前どこかで似たようなケースがありましたね)。

      同様に幕板側のガラスを嵌める留めの枠組みも、厚い板から小割にして回すことで柾目で繋がせた、というところです。

      ただ無自覚に寸法取りの良い方法ということで木取るのではなく、見付けにどのような木目が表れるかと言うことを想定し、必要とあれば1ランク、2ランク上の厚板から木取るというよう考えも必要です。

      そうした木取りにおける配慮は一見煩わしいもののように思いますが、結果としてStudio Furniture としてのクォリティーを獲得できるのであれば惜しまずに頭をひねりたいものです。
      余談が長きに過ぎました。

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