工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

半額セールCDから

CD
CDが4枚ほど届いた。
かなり以前からSONY CD Clubという会員に登録していて、既に評価が定着したようなアルバムを購入していた。
これには少し個人的事情がある。若い頃に買い求めたアルバムは、とある事情で全て手元から離れてしまったという状況を修復するためのもの。
しかしここ数年はほとんど注文する対象も見あたらず、いつも「今月は購入しない」にチェックを入れて返送していた。
数日前に届いた案内書に「特別感謝セール」(=半額セール)というチラシが挟まれていたので、何があるのかなとネットから覗けば、数枚興味のあるアルバムが見つかった。
いわば、CDの廉価セールをワゴンから探し出すような趣だね。
そして届いたのが、この4枚。
・シューマン:歌曲集 Dietrich Fischer-Dieskau
・Folklore Best Collection Various
・オキナワ・ベスト・ソング・コレクション
・日本人と木の文化/小原二郎
ははは、皆デジャブなものだ。
でもフィッシャー・ディスカウは持っていなかったし、気分転換には朗々と響くバリトンでドイツの風土を想像するのも悪くないと思ったからね。
フォルクローレはもともと好きで、都心の街頭でのストリート生演奏には聴き惚れることも多く、千円札の投げ銭をして、友人に見咎められるほどだった。
ユパンキは数枚持っているが、ウニャ・ラモスはやっぱりいいね。
シンセによる分厚いサウンドに慣れてしまっているボクたちには懐かしくもあり、知らぬ土地ではあるものの、異郷を想像させるに十分な喚起力というものがそこにはある。


恐らくは死生観すらも、今のボクたちに備わったものとは異なる遠大なものがあるのかもしれない。そう思えるプリミティブなものがある。
日本と較べればめちゃくちゃ貧困で、衣食住にも事欠く日常を送っている彼らだろうが、しかし恐らくは子供達の目は輝き、人々の繋がりは豊かで、そこには真っ当な共同体が息づいていることだろう。
そう、かつて日本にもあっただろう豊かな地域社会。
そこからあまりにも遠く隔てたところに来てしまっているボクたちには、こうした音楽に身を浸すことで、バランス感覚を取り戻すことも必要なのかもしれない。
あらゆるサブカルが米国からのものに席巻されてしまっているからこそ、失いたくない貴重なものの1つがここにはあるからね。
個人的関心としては、いかに米国的文化支配から逃亡するか、脱却するか、異化させるか、ということに意識を持続させていきたい。
世界は広く、ボク等にとって喫緊の課題と言われる金融破綻からの立ち直りなどということから自由な国は実はいくらでもあるのだからね。
オキナワも同様だ。
坂本教授が、ワールドミュージックとしてのカテゴリーに沖縄サウンドを取り上げて既に20年ほどが経過するが、その後日本の音楽シーンにも定着し、奄美から元ちとせ、中孝介も輩出され、あるいは、ちょっと出自は異なるものの、The Boomの宮沢和史クンの「島唄」は今や南米中心に世界へと飛び立って行っているという状況は、うれしい限り。
しかし何だ。このような物言いは大いに問題があるな。
中南米諸国の多くはアメリカによる新自由主義政策による経済支配で軒並み債務国に陥り、様々な問題を抱えているという実態は忘れてはいけない。
無論、チャベスによるアメリカ支配からの脱却と自立経済への道への歩みは期待を持たせるが、昨年秋以来の世界的な経済破綻の余波は、こうした最貧国へと矛盾が押し寄せてきていることは容易に想像できる。
しかしその上でこういう言い方もできるのだということはある。
いかに貧困ではあっても、帰属することのできる故郷があり、共同体があり、豊かな自然がある。
恐らくは金融破綻で貧する、世界に冠たる製造会社からもういらないよ、とばかりに路上に放り出される非正規労働者の少なくない数が、生き延びる術を持たず暗澹としてしまうような国の人々よりも、彼の国の貧しい人々の方が実は精神的な余裕があったりするから、人々のシアワセを図る基準の寄る辺の無さというものを感じてしまう。
口を開けば「百年に一度の経済危機」と、まるで自然災害のような物言いの言説空間には強い違和感を感じてならないし、恐らくはこの時代は、金融破綻、急速な消費低迷というものから、いかに経済復興するかというような近視眼的な見方に囚われるのではなく、人間が生きていくために必要とされる諸価値の総体というものが問われているのだろうという気がする。
最後の小原二郎さんの講演は、ま、アーカイブだ。
著書で読んでいるので、車の中で暇に任せて聞こうか、というところ。

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  • artisanさんらしい
    “こだわり”の逸品ですねぇ

  • kokoniさん、いえいえ、お恥ずかしい内容での紹介です。
    廉価版ではない、ピチピチ鮮度のアルバムを紹介できるようでなければいけませんね。

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