工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

プレス機の効用

座卓・脚たまには業務関連の記事を。
画像は座卓の脚部を組んでいる、の図。
畳摺り、吸い付き桟を成形した2枚の脚に接合するため、プレス機に掛けている。
画角からは外れているが、左側には同じ脚部が対置されていて、この2対の脚部に均等に圧力が掛かる。ギシギシッときしむ音を立てながら沈み込んでいき、締め付け終わると自動的に停止する。
先月初旬に撮影したものだが、拭漆仕上げのため、未だ塗師屋の工房に預けられたままの状態。
完成、納入した暁には作品写真としてエントリしてみたい。
とはいっても、既に同じものが「工房 悠」サイトにある奴だがね。(こちら
このプレス機は起業5年後にかなりの資金を投じて購入したものだったが、通常はただの物置と化しているかわいそうな奴。
でも、このような3寸角の厚みいっぱいにホゾを打ち込むにはこのプレス機が必須。
ハタガネ、クランプなどで接合、締め付けをしようとすれば、ある程度ホゾの嵌め合いを配慮した加工で叶えられるかも知れない。
しかし厚板通しの嵌め合いというものは、通常の嵌め合いのタイトさで加工、接合させるのは、かなりのリスクを覚悟しなければならない。


どういうことか。
この接合部位はいわゆるホゾと、相欠きの仕口となっているのだが、
厚板という条件は、つまりそれだけ経年使用による収縮が大きいということを意味し、相欠き部に必ずや隙間が現れてしまう。
通常の嵌め合いではこれが避けられず、これを考慮したかなりタイトな嵌め合いでの加工が求められ、その結果当然にも強力な締め付け圧力が必要となってくるというわけだね。
これは強力なプレス機に依るしかない。
うちの工房を訪ねてきた人は言う。お宅はフラッシュをやってるの?と。
プレス機を見ての疑念だが、ははは、と応えることにしている。
ところでこのプレス機、既製のものではなく代替できるもの、あるいは自作することはできないものか。
誰でも考えられる手法では、ありふれた鋼材で骨組みを組み、ここに1インチ以上の太さの角ネジ(本格的には2インチほど)に、大きなハンドルを付ければそれなりのパワーのものができるだろうね。
あるいはまた、工場の建築構造が堅牢であれば、天井の梁などに鋼材の片側をを支えてもらうことで締め付け力を確保することも可能だろう。
この木工の組み立てにおける緊結は様々なケースで必要となるプロセスだが、框組みなど大量に生産する工場などではエアーコンプレッサーを用いた専用のプレス機を作っているところもあるし、またこの際、均等にかつフレシキブルに圧締するために消防用の丈夫なホースを介した圧締治具を作っているところもある。
このように既製のプレス機ではなくとも、アイディア次第で様々な手法を考え出すというのも楽しいことではあるね。

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