工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

引き出しセンターガイド

今年の梅雨は陽性と言うべきか、今日も昨日と同じように強い雨からスタートし、午後にはカラッと上がってくれた。
湿度計とにらめっこしつつ、午後からチェストを組み上げる。
框構造による間口4尺弱、奥行き2尺の比較的大きなサイズのものだが、スムースに運んでくれた。
下の画像は内部を示すものだが、駆体内部、中央の棒について少し説明する。
これはセンターガイドと呼ぶものだが、要するに引き出しの摺動を助けるものだね。
日本のタンス構造では、こういうものは無い。
対して洋家具の構造には比較的多く見かけることがあると思う。
国内メーカーでも、横浜クラシックなどの系譜では取り入れられていると思う。
海外のメーカーの多くは専用の金属製のものが多いと思われるが、木製でも簡単に制作できるし、むしろ金属製よりも耐久性は高いのではとさえ思うね。
ボクはいつも使う手法というのではなく、3尺(≒900mm)を越えるような間口の場合に用いる。
つまり間口が広くなると奥行きとの寸法バランスからして、嵌め込み、出し入れに不具合が出やすいもの。
確かにそのような場合においても、制作精度を高め、引き出しもタイトに仕込めば、不具合が出るようなことなない。
しかし諸般の制作環境、ユーザビリティー(使い勝手)から考えるとき、センターガイドを取り入れるという思考はあって良いだろうね。
いくつか制作上のポイントを‥‥

  • センターガイドはあくまでも“絶対的に”センターの位置に取り付けること
  • 棒は堅く堅牢な樹種(今回はミズメ)で、柾目木取り
  • 引き出し底の下に取り付ける受桟(センターラン)との嵌め合いはきつからず、ゆるからず
  • 駆体と左右の側板の仕込みは、やや逃げ加減に(0.1〜0.15mm程度?)

精度良く加工し、仕込みを上手にやれば、3尺越える間口のものでも、2つの抽手の片方だけでスムースに出し入れできるほどに効果をもたらすだろう。(センターガイドを用いない方法ではありえないだろうね)
明日も晴れてくれるとうれしいね。
センターガイド

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  • センターガイドにも興味がありますが、私としては
    框組のチェストの全体の構造の成立の、させ方に、より
    興味があります。
    各、作家さんの好みなり、こだわりがあるのだと思います。
    際限がなくなりそうなので、写真から想像するだけに
    留めておきます。

  • >框組のチェストの全体の構造
    ですか。
    ボク自身にもいくつかのパターンがあり、ケースバイケースで選択していますね。
    (こだわり、なんてものではなく、ごくありふれた当たり前のものです)
    画像のものは、新築住宅の壁に納めてしまう(見付しか見えない)もので、側板のデザインはさしたる意味はない。
    したがってあまり見るべきところはないです。
    柱、横桟の関係は面チリ
    柱が分厚くなっていて、横桟との寸法差があるので、やや互平的な構成です。(スリ桟の構造、納め方が少し異なり、段欠きして柱にホゾ差しです)
    棚口に見える出っ張りは前板のストッパー。
    これも数種のストッパー手法のうちの1つですが、センターガイド構造で上げ底(向板が上がる)であることに対応させるための選択。
    あ、それと今回のありふれたものを出してしまっているところから考えても、
    ボクは“作家”などと呼ばれるのは片腹痛いので、ちょっと‥‥、
    “家具職人”の方がが嬉しいかな (^^)/

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