工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

天然乾燥材からの木取り

天然乾燥

含水率はどうぉ


先週から新たな家具制作に取り掛かっているが、まずは木取りということで倉庫と工房をいったりきたり。
以前の倉庫は車で10分ほど走らせねばたどり着けなかったが、一昨年に引っ越ししてからはわずかに500mと短縮されたので、材料はついつい小分けでの搬送となってしまうのは困ったもの。

今回は良質な材が必要となり、4年近く前に桟積みした山を崩してのものとなった。
いかに長期に天然乾燥させているからと言って、乾燥が十分であるかどうかは分からない。

その置かれた地域の気象状況、屋根、あるいは桟の厚みなどを含む桟積みのクオリティー、等々、様々な要素が絡んでくるので、まずはいずれにしても含水率計で計測し、基準を満たしていることを確認した後に取り出すことになる。

さて如何に‥‥、今回は驚いた。
34mm板では、な、なんと10%を切るほどの部位もあったりと、乾燥状態は完璧だった。
平均すれば10〜12%といったところ。
60mmの厚板でも14%にまで落ちているではないか。
♪ 自然と顔もほころんでくるというもの。

2寸板の含水率は?

2寸板の含水率は?

天然乾燥というものは上述のようにその地域の地形、周囲の環境、気象状況などに左右されるが、静岡という太平洋岸に近接した地域ではあまり芳しくはないというのが一般的な了解。
数年間、木工修行で住み着いた信州・松本などでは大気が乾燥しているので天然乾燥は進みやすいが、湿潤な環境の静岡ではあまり具合がよろしくない。

然るにこの9〜14%というのは想像を超える乾燥度と言って良いね。

一般には天然乾燥はほどほどにして、その後の人工乾燥の工程に含水率調整を依拠するというのが基本だ。
しかしこの材種がブラックウォールナットとなると、安易に人工乾燥に掛けるわけにはいかない。
色褪せてしまうだろ。
可能な限りに、本来持っている魅惑的な色調をそのままに引き出してやるというのが、ボクらの仕事に対する考え方でありたい。

いつからか、“カネが全て”の時代様相を帯びるとともに、材料を数年間にわたって天然乾燥させる、すなわち“カネ”を寝かせることは罪であるかのごとくにその思考は変節していき、天然乾燥などは人工乾燥の釜に入れられる程度にプレ乾燥していれば十分とばかりに、天然乾燥期間の時間の経過は忌むものとされている。

まぁ、木工職人として適性を欠くのかどうか知らないが、いたって呑気な性格も幸いしているのか、自然の力にじっくりと任せるというのが何に付け良いようだ。

米国材の製品(米国内で製材乾燥され、輸入・流通している材木)では過乾燥気味の場合も少なくなく、内部がスカスカになっている場合も見掛けられるし、ひどい時にはクロスカット(横切り)していて、鋸を挟んでしまうと言う怖ろしいことさえある。

今回のじっくり自然乾燥させたブラックウォールナットは、その後荒木取りのリッピングでも実に含水率勾配も無く、したがってまた鋸を挟むとか、外側に反ってしまうと言うこともなくとても軽快に進捗してくれた。

色ももちろんすばらしいチョコレートブラウン色を醸してくれた。

土場

春光のふりそそぐ土場にて

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