工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

CLARO センターテーブル

claroテーブル1
断続的な家具の紹介になっているが、暫くはテーブルのジャンルで進めていこうと考えている。
これはいわゆるセンターテーブルと一般に呼称される、リビングルームに置かれる低い卓である。
住宅のリビングルームにも様々なスタイル、形態があるだろうが、家人の憩いの場であり、また客人を招いたときに接客する場でもあるだろう。
また昨今の住宅の部屋割りの考え方を見れば、畳敷きのいわゆる和室というものが消えつつあるなか、このセンターテーブルへの依存を強めているということもあるだろう。
普及クラスのマンションなどはほとんどそうしたものであるらしい。
そうであればなおのこと、このセンターテーブルというものは客をもてなす場での主役級の家具という位置づけがされてくるだろう。
つまり家主のデザインの趣味・嗜好、品格、といったことを明示的に指し示すものとなってくるということだね。
さて、この《CLARO センターテーブル》、冠に“CLARO”と記されているように、甲板の材種、形状にその特性が大きく表されている。
この“CLARO”(クラロウォールナット)という樹種に関しては、工房 悠のWebサイトにも詳しく解説してあり、ここで繰り返すことはしないが、かつて4本ほどの原木を入手し、様々に使ってきたが、このテーブルの甲板に用いた原木は、その長さが短かった(約1.7m)ものの、太さは優に1.4mを超えるという特異な形状をしていたということと、やはりクラロウォールナットならではの杢が良く醸され、恐らくはこの材種の特性、優位性というものを十全に保有したものであったという点で、とても素晴らしいものであった。
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CLARO
さて甲板の個性、品質だけがこの卓の特徴というわけではない。
脚部についても少し紹介しておきたい。
構成は以下のよう。
甲板と脚部を接合する送り寄蟻桟はカーリーメイプルのロクロ成形によるロクロ脚で畳ズリに接合される。
左右のこの脚部を3本の束で構成された上下の貫で固める。
簡明で、かつ堅牢度の高い構造だ(保守管理のしやすいノックダウンの構成でもある)。
ディテールとしては、畳ズリ、および貫の断面は台形にし、またその上部をなだらかな円弧状にするなど、それそれのフォルムを柔らかい意匠としつつ、全体的にはあまり重くなく、軽やかでモダンなスタイルをめざす。
また4本のロクロ脚も四方転びにすることで、より構成上の妙味を引き出す。
カーリーメイプルの白をアクセントカラーとして取り込み、カーリーの味わいとともにモダンなイメージへと寄与させている。
甲板のナチュラルエッジ(皮付き)、およびかなり異様な形状をしていることで、脚部のデザインも困難をきたすが、この甲板の強い個性を受けるにふさわしい脚部のデザインと仕上げをねらってみた積もりだが、如何だろう。
なお、下の画像のように、顧客の要望で甲板をタイトにカットしたものも参考に上げておこう。
なおこちらのロクロ脚にはブラックウォールナットを用いている( I 邸)
claroテーブル3

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  • 普及クラスのマンションではこのテーブルはちょっと無理ですね。
    馬子に衣装になってしまいます(笑)
    断面が台形、良く考えると加工が難しそうです。

  • acanthogobiusさん、ちょっと背伸びして‥‥、お願いしましょう。
    〈馬子に(も)衣装〉とは、外面を飾れば立派に見える、
    ということわざですので、それもよろしかろうと‥‥
    断面が台形、とは言いましても、ホゾなどの加工終了後に成形(角度切削)しますので、どなたでも。
    あえて難しさをあげれば、部品が転んでいると、基準に対して延びが出ますので、その計算に注意が必要といった辺りでしょうか。
    柔軟な頭脳が求められるということですね。
    つまり‥‥、そうしたリスクを“楽しむ”ぐらいの余裕で臨むことで、高品質なものができるのではないでしょうか。
    あるいはまた、CLAROはとても高価な材種ですが、あえてこうしたものを使うことで仕事の水準を高める(方向へと自己を追い込む)、ということにもなるのでは。
    (私のような凡夫が良いものを造るには、凡庸なことをしていてはダメ。
    時には高価な材木を買い、高度な仕口にチャレンジするぐらいでないとね)
    acanthogobiusさんが、相応の資金を投下して良質なワークベンチを制作しようというのも、志しの高さゆえでしょう。

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