工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

フレデリック・バック展、7月2日から開催

『Crack』,『木を植えた男』のフレデリック・バック(Frederic Back [Frédéric Back] 1924年 仏・ザールブリュッケン生、モントリオール在住)展が明日から「東京都現代美術館」ではじまる。

観に行きた〜い。絶対いきた〜い(まるで子どもがぐずるような訴求だね)

本人はこれを機に来日するんだろうか?御年87歳では無茶な要求か。

まずは公式WebサイトからFrederic Back氏のメッセージを引用させていただこう。

 スタジオジブリ、日本テレビ、東京都現代美術館は、このたび光栄にも、絵を描くことに対する私の70年にわたる情熱を皆さまにご覧いただく機会をお与えくださいました。これらの絵は、動物、人々、自然、地上の私たちの生命(いのち)に伴奏するあらゆる素晴らしきものを、愛情をもって学び取った成果なのです。

 私は、平和と調和を推し進めること、すなわち、この世界を支配しているさまざまな法則に気づくよう人々に促すために、力の限り努力して参りました。

 この展覧会は、絵やアニメーション映画が、人々の眼や心などの扉をどこまで開くことができ、善い行動をどこまで鼓舞できるのか。そして、皆さまが夢見ることをどこまで実現することができるのかを示そうとするものです。
 私は皆さまが、これらのスケッチを通じての旅を気に入ってくださるよう切に願っています。これらのスケッチは、アカデミー賞や広島国際アニメーションフェスティバルでグランプリを受賞したいくつかの映画の成功の源泉だったのですから。
 一人の人生の軌跡であるこの絵画展に、創意の精神を、奔放さを、そして寛容さを示してくださったスタジオジブリに感謝の意を表します。
 皆さまの発見と楽しみ、そして熱意とに捧げられたこの展覧にようこそ!

フレデリック・バック

      企画要綱
▼名称:フレデリック・バック展/L’Homme qui Plantait des Arbres
▼会場:東京都現代美術館 企画展示室1F・3F
▼期間:2011.07.02〜2011.10.02
▼公式サイト:http://www.ntv.co.jp/fredericback/
▼企画制作協力:スタジオジブリ/三鷹の森ジブリ美術館


Frederic Back氏については、一昨年、このBlogでも詳しく紹介している(こちら)ので、繰り返しは避けたいと思うが、今回どのような展示内容で企画されるのかは興味深いところ。

もちろんFrederic Back氏の業績はアニメ作品に集約されると言っても過言ではないと思われ、それらのセル画、原画なども展示されるだろうし、あるいは公式Webサイトにもあるようにアニメの絵コンテなども観られるかも知れない。
しかしそうしたアニメ作品だけではない、絵画、イラスト、さらには様々な活動(自然保護、動物保護、先住民文化の紹介 etc)にわたるまで、トータルなFrederic Back像が展覧されるはず。

なお、ボクのBlogでは彼のアニメ手法、世界観などに言及しているわけだが、実はそんなややこしいことに触れずとも、その映像世界に深く入り込むだけで十分だと思う。
他には何もいらない。

小さなお子さんがいらしゃる家族であれば、ぜひDVDでいくつかのアニメ作品に触れるのが最良の接近方法だろう。
日本のTVアニメでは感得できない、手描きのセル画ならではの独特の表現、背景に暗喩される彼の世界観が音楽と映像だけの世界で展開されることに驚くだろう。

ボク自身が最初はそうだった。
『木を植えた男』がオスカーに輝いた頃、NHK TVで数本放映され、ここでの鑑賞が初体験。
先験的なものは何もなく、その独特のアニメ描写世界に衝撃を受け、ただただ無言で惹き込まれてしまったというのが正直なところ。

なお、本展企画において尽力されたスタジオジブリの高畑 勲監督からのメッセージにも触れて欲しい(こちら

3.11以後の日本社会との関わりにおいてFrederic Back展を捉える観点からのメッセージだが、人間社会への深い愛、家族と共同体の大切さ、そして『木を植えた男』に描き出される、名も無き一人の男の弛まない一歩一歩の活動が壮大な森の復活として結果するという人間というものの可能性、希望、尊厳、そして現代文明への鋭い批評性というものは、監督の語るとおりだ。

実はこの中で、宮崎駿氏とともにロスで「Crac ! 」を観て以来、大きな影響を受けたとあり、合点がいく思いがした。
根拠はないものの、先のBlogでも言及したように先輩デザイナーとの話しの中でもそのような関係性を強く示唆されたことがあり、今回本人からの告白でわかった。

日本社会でももっと広くFrederic Backが受け入れるられることを望みたい。
この会期に併せ、主要作品の劇場上映もあるようだ(こちら

希望を見失いがちな3.11以降のこどもたちだが、ぜひ良い機会なのでごらんいただきたい。

同展覧会、東京会場の後、巡回する予定もあるようだが、未定とのこと(主催者サイドに確認)
いずれ公式Webサイトで告知されるはず。

未定、というところに含意があるように思える。
要するに東京会場の客の入りを眺めているのだろう(フレデリック・バックの知名度の低さ)
読者の方で関心のある方は、ぜひ周囲に広めていただきたいと願う。
Blogなどをお持ちの方は記事にするなど、応援のほど、よろしく。

YouTubeを1本。初期の小品「Taratata」
「Crac ! 」(1981)を5年遡る、1976年の作品。
あえて解説は付さないのが良いと思うが少しだけ‥‥。
1つの街頭パレードを描くものだが、前後半、空気が変わる。
飼い犬を伴う少年の視点でファンタジックの中にも近現代へのシニカルな批評性がちりばめられている。
原発プラントも出てきたりと3.11以後の今でも何やら示唆的ではあるが、要するに普遍的な問題意識だね。したがって35年も経っている作品だが旧さを感じさせない。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=w5fZesoD38c[/youtube]

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