工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

クラロ単板をシコシコと

CLARO単板つくり


梅雨明けの猛暑の中、クラロウォールナットの厚板(plankだね 苦笑)を抱えて、知人の木工房へ出向く。

うちの機械設備では手に余る400巾の単板を作るためである。
バンドソーでの挽き割り作業なのだが、うちのはわずかに305mmが限界というヘタレなもので、これを超える幅割きをしなければならない時、ハンパな機械を導入してしまったことを毎度悔いる。

片やこちらのものは比較的最近導入したというバンドソーなのだそうだが、鉄車で製材専門という感じの頑固な機械で400mmまで挽ける。
導入後の使用頻度は低く、刃も研磨されていないというので少し心配させたが、まずまず所期の目的は達したというところ。

先取りを手伝いながら心配そうに見ていた工房主も安心したようで、ヨカッタヨカッタ。

1分(≒ 3mm)に仕上げるものなのだが、1.7分(≒ 5.2mm)ほどの厚みに挽く。
帰宅後詳しくチェックすると、やはり少し鋸が踊っていたようで、いったん全て片面のムラを取ることにした(手鉋シコシコの画像がその作業)。

切れが芳しく無かったこともあるのだろうが、やはり一般のバンドソーではこの程度の精度が限界か。

ところで、J・クレノフの制作現場を良く知る人に言わせると、彼はバンドソーをとても器用に使いこなすそうだ。
著書『The Impractical Cabinetmaker』の中でも《“Real”Veneer》という項をもうけて詳しく解説もされているのは、クレノフを良く知る人には既知のことだろう。

彼のキャビネットメイキングは、この単板作りからスタートすると言って間違いないところ。

ボクの今回の単板作りは、キャビネット本体用ではなく、扉の化粧板になる。
扉でも框の構成であればその羽目板は無垢で構わないが、今回はプレーンな板での構成なので、ベニアリングでやるっきゃない。

5分のランバーコアを芯とし、両面に1分厚のウォールナット(CLARO)を練り付ける。
木端処理などを含め加工工程が多くなり、決して容易なことでは無いが、しかしこれもまた楽しいもの。

なお余談だが、ムラ取り作業中の画像、鉋が置かれている板について。
右端の木理、色調が大きく変化しているのが分かるだろうか。
これは接ぎ木の痕跡だ。
‥‥〈木に竹を接ぐ〉をやったわけじゃない。
左が台木で右端が接ぎ木した方なんだね。
CLAROウォールナットの出自を明示的に表すものとなっている。

台木、接ぎ木、それぞれの細胞がミックスされ(ブラックウォールナットにヨーロピアンウォールナットが接がれることが多いという)、一般のブラックウォールナットでは醸すことのない、固有の木理、色調、表情、物理的特性をが産み出されるというわけなんだね。

‥‥閑話休題
知人工房での作業後は刃物の打ち合わせのため機械屋に立ち寄る。
機械屋の作業所では桑原の手押鉋盤の梱包中。キレイにお化粧も施されている。
これから遠方に搬送するとのこと。
聞けば知り合いの工房が搬送先とのことで、ヨロシク伝えて欲しいと伝言。

打ち合わせを終え、在庫が少なくなってきているビールを求めて量販店に立ち寄ると、震災後、目的の銘柄(サントリー モルツ)は製造休止が続いているとのことで入手できず。
メーカーWebサイトでは7月上旬出荷再開とあるが、来週以降になりそうだ。(参照:asaho.com

なぜ「モルツ」かと言うと、とうもろこし・米・コーンスターチ・大麦等の副原料を一切使用せず、麦芽100%で製造されたビールということで、深い味わいがあるからだね。
ビールの本場、ドイツでは麦芽100%以外のものはビールとは認められないそうだ。

酒は純米酒、ビールは麦芽100%でいきたいものだね。

国内で麦芽100%のものというとプレミアム(「プライムタイム」、「ブラウマイスター」、「ハートランドビール」)ものを除けば、このモルツの姉妹品、ザ・プレミア・モルツとヱビスビールぐらいかな。

モルツを製造休止にし、他方ザ・プレミア・モルツの製造拡大というのは、実質的な値上げ戦略のようで気に入らないぜ。-.-#

《関連すると思われる記事》

                   
    
  •  隠れていたのにバレバレの納品先でした(降参!)。
     これくらいのウオールナットだとバンド・ソーの切れやテンションなどかなり無理しないと大鋸目のブレは無くなりませんね、これは上出来だと思います、薄く挽き割った後でもしゃんとしている具合は爽快ですね、ブロックでの(この辺の言葉遣いに躊躇するようになってしまいました苦笑)状態も良かったのでしょうね。
     手鉋で大鋸目を払う作業は僕は大好きです。荒鉋の調子を見ながら削って行くのは楽しいですね。

     追記:ビールはビールですよねぇ、発泡酒やドライ・ビールは個人的に好きになれません(非純米酒も同じく)。 最近の方はモルトビールをあまり好まないので、僕の所に廻ってくることが多く、あり難いです。
     うちは基本、ヱビスの小瓶をケース買いです。

    • たいすけさん、良い買い物をされたようでご同慶であります。
      この機械屋さん、社長Jrがネットでの顧客獲得に注力しているようで、遠方との取引が増加の一途。業界低迷している中にあって、ユニークな成功事例かも。
      地元での信頼も高いものがありますので、どうぞご贔屓に。

      >これは上出来 ‥‥ 薄く挽き割った後でもしゃんとしている

      そうですか、わずかに2分弱の厚みでしゃんとしている、というのは、作業者に似て、素直だからでしょうか(爆)
      恐らくは、ひとえに乾燥状態の安定性(水分傾斜がほとんど無い)によるものと考えられますね。

      手鉋での調整ですが、ほどほどにムラが取れれば良いのであって、機械(自動一面鉋盤)が導入される以前の、全てが手鉋の時代に比べれば、めんどうくさい、やってらんない、などという嘆きは言うまいと思いますね。
      たいすけさんのように“大好き”とまでは言えませんが、それなりに楽しくやりたいものです。

  • これだけ薄く挽いて、あまり反っていないように見えるのは
    驚きですね。
    バンドソーの話の中に「やはり一般のバンドソーでは」とありますが
    このような挽き割りに適したようなバンドソーが存在する、ということですか?

    ところで、本題と関係ありませんが、クラロの上に置かれた鉋ですが
    屑溜の刃と反対側に飛び出しているように見える物は刃口埋めの
    一部ですか?

    • acanthogobiusさん、400mm巾で安定した挽き割りができるのはありがたいものです。
      >挽き割りに適したようなバンドソー
      これは刃の切削能力もさることながら、むしろ送材の安定性によります。
      acanthogobiusさんも、原木製材に立ち会ったこともおありかと思いますが、
      機械に対して(=刃に対して)完璧に安定した送材ができる機構があれば、高精度で美しい切削肌が獲得できますが、
      “一般のバンドソー”は作業者が手で押さえて送材するという手法となりますので、どうしても安定した送材は難しいものです。

      (製材機はレール上を走る車両に加工材が完全に固定されて送材され、
      小型の製材機でも、大きなゴムタイヤ状のもの、あるいはキャタピラ状のもので自動送材される機構となっています)

      鉋の刃口の出っ張りですが、あれは想像通り、刃口埋めです。
      私の場合、寸六、寸八の平台をはじめ、ほとんど全ての手鉋が口埋めされていますが、
      寸六、寸八のような大きなものは、ネジ止め方式の可動となっていて、長期にわたり使えるようにしています(緩みやすいという欠点もありますが)

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