工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

製材後の天然乾燥は

割れ止め剤
昨日に続き、今日も半日ほど製材所でお仕事。
木口割れ止め剤の塗布作業と雨対策の屋根設置。
製材直後の材木はたっぷりと水分を抱え込んでいる。
木工制作の材料として供するためには、大気が含む水分と同程度(平衡含水率)になるまで乾燥させなくてはならない。
一般には含水率12〜15%ほどまでに落とさねば制作後に反張など様々な障害をもたらしてしまう。
天然乾燥の場合、通常1寸の厚みの板で1年、などと言われるが、うちではその倍の時間を1つの目安としている。
材種によっては、その後人工乾燥のプロセスを経た上で、制作へと回される。
天然乾燥でも、時間を掛ければかなりの程度まで落とすことが可能だが、ただこれだけではどうしても環境の状態に左右されやすい。
人工乾燥によって、含水率を一端かなりの程度まで落とし、その後、目的とする含水率にまで戻すことによって、環境の変化にあまり影響を受けることのない安定した状態を保持できる。これが木材乾燥における重要な概念の1つである。
つまり天然乾燥では目的とする含水率まで低減させることは至難であり、予備的段階、プレ段階としての天然乾燥という位置づけになる。
市場で流通している製品などでは、長期の天然乾燥は資金を寝かせるようなものであり、積極的な位置づけはされていない。
あくまでも人工乾燥の釜に入れるための必要条件を満たすためのものでしかない。


しかしこれはかなり無理な乾燥管理にならざるを得ず、歩留まりの問題を含め、人工乾燥によるデメリットの問題(内部割れ、落ち込みなど)いくつかのダメージをきたすことがあるので、注意されねばならない。
したがって人工乾燥の負荷を軽くするためにも、天然乾燥段階を積極的に位置づけるようにすべきだろう
ところで“材種によって”というのは、ウォールナットなどの濃色材の場合では、人工乾燥によって色調が損なわれてしまうのであまりやりたくない、ということを意味している。
さて天然乾燥であるが、いくつかの大切なことがある。
例えば土場の条件として、不等沈下しないとか、湿潤な場所を避けるとか、いろいろとある。
ここではあまり詳述しない。
今日は割れ止めについて少し詳しく。
材木はできるだけ歩留まりを良く使いたいもの。
木口割れによって、数cmから数10cmほどにまで切り落とさねばならないケースは多いもの。可能な限りに割れが拡がるのは防止しておきたい。
木口割れは何もしないと必ず起きる。今回もたった1日置いただけで、割れは進んでいた(今日は乾燥していたからね)。
この木口割れは、外側の桟棒にまで進むと見て間違いがない。
したがって桟棒は可能な限り、木口末端近くに位置させることも重要なことだ。
次に木口を樹脂で封印することが重要。
うちでは昔より、「ランバーメイト」という木口割れ止め専用のものを使用している。
一般には白ボンドを代用したり、ペンキなどで行う場合もあるようだが、この「ランバーメイト」への信頼は高いようだ。
今回世話になった製材所でも同じものを使っていた。
ランバーメイト
メーカーは旭化成。代理店はPIボンドの「大塚振興」
やり方は何も難しいことではない。
はけで塗るだけ。
しっかりと塗ろう。外側の桟棒のところまでしっかりと塗ろう。
一度万遍なく塗ったらば、数十分後には乾くので、その状態をチェックしながら木口割れが封印されていないところを重点的に、もう1度塗れば完璧だろう。
雨に当たりそうな板面があれば、そこにも塗ろう。
これを行った後に、トタン波板などで屋根を施せば良い。
なお、桟積みの方向だが、年間通した風向きを考え、木端方向に風が抜けるように設置しよう。

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  • こんばんは。
    抽斗の側板としてカツラを使っています。
    できれば白太まで使いたいのですが天然乾燥の段階で腐朽菌が
    入るのか黒ずんで汚くなることがあります。
    これを防ぐ方法は何かあるのでしょうか?
    室内で乾燥させるとか、天然乾燥は短くして人工乾燥するとか
    するのでしょうか?

  • acanthogobiusさん、今晩は。
    カツラは抽斗側板としてはとても良質な材種ですね。
    ボクも良く用いますよ。
    シナノキほどではありませんが、確かに腐朽菌で侵されることもあります。
    防止法として一般に考えられることとしましては、天然乾燥では雨に当てない(湿度85%以上で繁殖するとされる)、薬剤(クレオソートなど)を浸透させる、などですが、早い段階で人工乾燥を活用することは有効ですね。
    雨対策としては記事中の割れ止め剤も有効です。

  • 木材割れ防止剤について電話でお話できればと思います
    電話番号を知らせていただくか 電話いただければ幸いです
     当方048−737−6146
       携帯 090 6657 0545

  • 内田邦夫さま、コメントありがとうございます。
    >木材割れ防止剤について電話でお話できれば‥‥
    ということですが、どのようなことでしょうか。
    恐れ入りますが可能であれば、メール↓でご連絡ください。
    http://blog.koubou-yuh.com/?pid=1781
    また電話番号は、WebサイトのTopページに表記しています
    http://www.koubou-yuh.com/
    なお、記事中では木材割れ防止剤の商品名:ランバーメイトと明記していますので、所望であれば、ネット検索すればいくつもの販売サイトがヒットします。
    どうぞよろしくおねがいします。

  • 勉強になります!

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