工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

宮迫千鶴さんのあまりの早い死去を悼む

今朝の朝刊で宮迫千鶴さんの訃報に接する。
ボクとは1つ違いの同年代の女性。
画家、社会評論家、エッセイスト、様々な肩書きを持つすてきな女性だった。
宮迫さんの生前の横顔、画業などはいずれ各紙論評が出揃うと思われるので、それを待ちたいと思うが、一時期親しく接してきた者のひとりとして感じたところを少しだけ触れてみる。
彼女の存在を知ったのは80年代半ばに話題になった『超少女へ』というエッセー集だったと記憶している。
したがって画家・宮迫、というよりも女性論などの領域の団塊世代の女性言論者という認識であったが、その後、パートナーの画家・谷川晃一さんと1週交替で、朝日新聞社から発刊されていた週刊誌『朝日ジャーナル』の表紙の絵を担当していたことがあり(数年間だったか、1年間だったか忘れた)、人と動物のアイコンのような谷川さんの絵とは異なる世界だったが、その底抜けに明るい画風のポップで現代的なハピーな世界が描かれていて、発行日が楽しみであった。
その後、仕事の関係から一時期親しく接遇させていただくこともあった。(下の画像はその頃のもの)
おふたりはいつもにこやかに寄り添いボクたちの前に現れた。谷川さんはキリッとしたジャケット姿、宮迫さんは渋めの色のロングスカートにシンプルなブラウスに色鮮やかで複雑な柄のショールを羽織り、大柄な身体を包んで、決して華美ではないがいつも美しく装っていた。
お二人のそのウィットに富んだ会話は周りの者たちを楽しげにさせてくれたし、突然ボクの手を握ってはOリングテストなどと言って、体調を気遣ってもくれる世話好きな人でもあった。
そして何よりも批評精神が豊で、様々な領域における問題への辛辣な批評はボクの心情とも共鳴するところも多く、楽しく歓談できたことが良い思い出として今も鮮明に頭をよぎる。
以前、このBlogにおいて触れたことのある陶芸家・小川幸彦さんと谷川晃一さんは同世代のアーティストとして交流も深く、小川さんの天恵窯において谷川さんがテラコッタを焼くということもあったり、また伊豆高原の林に囲まれたアトリエに訪ね際の迎えに出ていただいたおだやかな笑顔は、お二人の暮らしぶりの安寧と充実を見せてくれているようだった。
こうしたアーティストとの交流の傍にいさせていただいたことも美質への感性を養うに何某かの意味もあったのだろうと今になって思う。
よく知られるように「伊豆高原アートフェスティバル」の企画は、実質的にはご両人によるものだが、これは1アーティストとしての領域を越えて、一地域の社会的成員としての使命に促されてのものであっただろうし、若い頃からの芸術批評、社会批評の活動に培われた実践者としての横顔を見ることができる。
これは誰かに代替させて成しうるようなものではなく、やはり谷川+宮迫コンビならではの企画力と実践力であればこそだったろう。
しかしあまりにも早い死去。これからの画業、社会批評などの活躍が望まれていただけに、とても残念でならない。
心からの哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。
遺された谷川さんもさぞお力落としのことだろうと察して余りある。どんな言葉を掛ければよいのかも判らない。
合掌。
*画像
打ち込まれた日付を見ると16年もの月日が経つようなのだが、中伊豆の陶芸家宅で催された花見の会でのスナップ。
左から谷川さん、一人置いてartisan(なぜかスーツなど着ていたんだな)、宮迫さん。
よく呑み、良く話し、春の宴はいつ果てるでもなく続いた。
スナップ

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  • 先妻が不治の病で倒れ、入院する前より平民の世界で言う不倫をし、その影響で先妻の息子が軽いチェック症になったことをご存知か。芸術家は一般的なモラルが無くても立派なのか。社会的な良識が無い人間が社会批評してどうなるのか。
    亡くなった方を批判しませんが、行ったモラル欠如の行為は消えることはありません。愚直な平民としては、同じ人間であることが恥ずかしいです。血のつながりがある平民より。

  • コメント、ありがとうございます。ご遺族に関わりのある方とお見受けします。
    詳しくは存じ上げませんが、お二人の関係については世上言われている範囲内で知っているつもりです。
    そうしたことへの批判も関係者であればなおのこと当然であることは理解いたします。
    一方お二人が築き上げてきた芸術、文芸における公的な業績への評価というものは別途されるべきものと考えています。
    個の内面における葛藤と苦しみを知る立場にありませんのでこれ以上のコメントはできませんが、関係者にそうした苦しみと批判があることだけはしかと受け止めたいと思います。

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