工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ソファ「悠」の場合

ソファ2
インターバルが空いてしまったが個展出品の家具の紹介。
今回はソファ「悠」2P。
ウォールナットの良材をふんだんに用い、贅を尽くしたソファ。
贅とは、この場合、材質の良さもさることながら、仕事においても高品質なものを目指した。
デザイン、構成はアーツ&クラフツ様式を基にしたものであることは見ての通り。
ただディテールにおいて、かなり工房 悠のエッセンスを盛り込んだつもり。
重厚な木取りの前脚をハの字型にふんばらせ、ここに幕板を貫通クサビ止め(後ろ脚も同様)。
この脚部に接合されるアーム部位はそれぞれに組み手で納まる。
脚部前後を結ぶ幕板は不定型な円弧を描き、傾斜して納まる。
ソファ1デザインの考え方も様々であるが、ボクたち木工家においては、やはり家具という造形物を構造的必然性から要請されるものとしての意匠というものが、まず前提となる。
つまり、それぞれに意味のあるフォルムであり、ディテールとなってくる。
嫌みのない、あるいは外連味のない、納まりの良いデザインである。
技法的には難易度においてさほど見るべきところがあるわけではないが、それぞれ傾斜した脚部への納まりであり、丁寧で高精度な加工も求められる。
そうしたややナーバスな加工も、こうして仕上がって見れば十分すぎるほどに報われるというものだ。
それとやはりソファにおいて肝心なのは張り。
総合的にも木部よりも、むしろ張りにおいて、その座り心地は決定づけられる。
木工家というもの、木部で終わりとは行かず、最後の張り加工まで全面的に介入して、望むべくクッション、座り心地を追求しなければならないね。

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  •  いつも有益な情報を公開くださっていることに感謝している愛読者の一人です。このたび木工家としてのクッションへの関わりが記述されていて、微力ではございますが、私自身少しでも有益な情報を公開できないものかと、はじめてコメントさせていただきました。
     私はクッションから家具の世界に入り、クッションの特性を活かすために木工を始めた経緯があります。ご紹介のソファは、ハイバックで理想的な座位がとれて長時間座っていても疲労感が非常に少なく感じられるのが画像から伝わってきます。次の動作のしやすさも含め身体の構造を考慮された基本構造であることが伺われる、非常にまじめな取り組みのソファだと尊敬しております。側地は生地なので中芯のクッション性を阻害しないよう配慮されていると思われます。以上は画像からの情報で予測できますが、実際クッション性の感触は座ったり触ったりしないと分からないですね。これが、クッション、張りの難しさというか、面白さだと思います。つくり手はそのクッション性、張り具合まで全面的に介入し、座り心地を追及することにつきます。昔マットレスを開発していたサラリーマン時代に、ある有名自動車メーカの技術者と意見交換する機会があり、マットレスのクッションに関する寝心地評価に関して聞かれたことがありました。クション特性の数値的な基準や評価方法はありましたが、そのようなものは当然門外不出であるのでコメントせず、ただ、手で押したり触ったりと手でジェスチャーしながら説明したら、その技術者は「やはりハンドパワーですね」となぜか納得していました。要するに、数値化してもそれはひとつの安全性を確保する目安であって、心地に関しては主観的要素が主体で限界あるということだと思います。これは、量産の話で、あらゆる評価をして妥当性確認をして要求仕様を満たすようにします。オーダー家具の世界はお客様の心地の好みを反映することが可能な世界と考えています。そういう意味で、今回のブログを読ませていただき、身の引き締まる思いでおります。
     ついつい長くなりましたことをお許し願いたいと存じます。

  • akira-designさん、ようこそ、ご訪問とコメント、感謝でありまする。
    ソファに関しましてはキャリアのデザイナーであり、また近年、木部加工にも深く関わられていらっしゃるご様子。
    丁寧で、しかもご自身のスキルと経験に基づいたコメントで、深く読ませていただきました。
    仰るように、クッション性という世界の品質には数値化できるものと、そうでないもの、あるいは主観的な要素、個々の体型による座り心地の差異、さらには経年変化の問題、等々、いくつもの要素が複雑に絡んでくるものです。
    私もクッション、張りの領域では経験も浅く、張り職人との2人3脚での品質追求となりますが、akira-designさんのサイトからも学習の場を得て、より良いソファの開発を心掛けたいですね。
    >クッションの特性を活かすために木工を始めた経緯
    深い含意がありそうですね。
    これからもアドバイス、コメントを望みますのでどうぞよろしくお願いしますね。
    ありがとうございました。

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