工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

Wide Confort Bench

〈ワイドコンフォートベンチ〉、これはお客が付けてくれた名称。
なるほど、こだわりは、デザイン、仕様だけに留まらず、名称を含めてのことと知る。

昨日、無事に納入され、気に入ったとのメールが届いたばかり。

ご家族へのクリスマスプレゼントだと、喜んでくれたようだが、そのお褒めの言葉こそ、作り手へのありがたいプレゼントであることは言うまでも無い。

道産のミズナラを主材とし、アーム部分にウォールナットをあしらった。
2mを超えるかなり大ぶりのベンチでもあり、やや重硬に設計、木取りした。

主要部は1.7寸厚ほどだが、あまり重々しくするのは野暮ったいので、脚部木端をカマボコ状にするなど、柔らかに見せるように心がけた。

脚部、肘掛け(アーム)部、接合を天秤指しとすることで、堅牢性を視覚的も訴え、かつ意匠とした。

明かせば、元は、アーム部を小テーブル様にしたいとの顧客の要望から産まれた処理なのだが、これはこれで1つのデザイン仕様と解釈できなくも無いと思った。

背のスピンドルは、アロー(矢)を抽象化したデザインだが、ロクロ成形した奴を半割として納めた。
背あたりを丸棒状にするのは趣味ではないから(というより、背あたりが痛いでしょ)。
英国アンティークのものにも、同様の処理が見受けられるはず。

半割とは言っても、丸棒成形されたものを、ただ割くのではいけない。
あらかじめ割いた状態で木取り、これにホゾを付け、それからロクロ成形だ。

そいつを半割にするのが正攻法。
(な〜んて、知ったようなことを言っているが、知っていたとは言え、実際トライしたのは初めて)
存外、簡単に、完璧に首尾良くいった。
四半世紀も家具職人してて、こんなところで失態を演じるわけにもいかない。

この一連の制作工程で、もっとも難儀するのはどこかと言えば・・・
やはり無垢板の座刳りかもしれない。
座だけでも2m近い板を大きく繰り込むのは容易ではないことは、経験者なら首肯してくれること間違いない。

でも、今回は2つの治具を造り、ハンドルーターでかなりのところまで攻めたので、案外とスムースに事が運んだ。
これも家具職人であれば、加工プロセスをとことん考え抜き、喜々として挑んでいくことで、苦難も快楽へとアウフーベンさせることができるというもの。

また、とても素直で樹齢のいった板であったことが幸いしたのも1つの要因だ。
こんな板は、今では入手することすら困難になりつつある。

ところで、これだけの家具の搬送はたいへん気を揉む。
めったにやらないことだけれど、木枠を造り、これに納めて、業者に託した。

搬送中、傷つくこと無く届けられるか、ストレスを覚えるより、少し経費が掛かり、木枠加工を強いられるとは言っても、間違いなく届けられることを優先すべき事は当たり前。

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