工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

外作業は楽しからずや(鉋は使っていますか?)

削りa
今朝は柔らかい冬の日射しが降り注ぎ、工房の外で仕事をしてしまった。
少し離れたところにある倉庫からトラックで運び込んだ材料を削っているのだが、さすがにこんな外で削る作業をするなんてことは初めてのこと。
3mを越えるような長尺ものを木取る場合、このように外に丸鋸を持ち出して切り分けるなどということはあるが、鉋仕事を外でとは、我ながら笑えてくる。
先のエントリ「冬の光」で触れたことだが、冬の工房内は光が弱く細胞レベルでの切削状況の判断が難しいということもあるが、何のことはない、この材料あまりに重量がありすぎ、中に運び込むのがめんどくさいのでトラック脇で削り始めちゃったという単純な理由。
でも今日は風もなくとても穏やかで外作業は快適。
厚いGジャンはたちまち邪魔になり、ネルの作業シャツも脱ぎ捨て、最後は二の腕をモロ出しTシャツ1枚。
削っている板はCLAROウォールナットの大きな一枚板。
2mを越える長さと、1mを越える幅を持ち、厚みも75mm.。


実は県内のある木工所には1mほどまでは削ってもらえるプレナー屋がある。3尺ほどの一枚板はよく世話になっている。(バーチカルプレナーではなく一般の丸胴のプレナーだよ)
しかし今回は1mを越えてしまい具合が悪い。
1mにわずか10cmほど余る部分が数カ所。そこは目をつぶってはつっちゃえば〜、という悪魔の囁きも聞こえてきたが、グッと堪えた。
両面、平面出しから、平滑仕上げまで手作業だ。
このとんでもないボリュームの板と格闘しながらの削りを忌み嫌うのか、喜々として挑むのかでその職人の木工への関わり方のある種のアイデンティファイが試されるものかもしれないな。
ボクにしたって1m以内の幅のものであれば、片面のムラ取りだけやり終えてプレナー屋に持ち込み、簡単かつ完全に平面出しをやってもらうことを優先させるのは言うまでもない。
また1mを越えるものであったとして、悪魔の囁きにうなずき促されるままにその越える部分をあらかじめ切り落としてやってしまえばそれでも良いだろう。
しかし部分的にわずかに10cm越えるものであっても、あえてそのまま残して手作業を選ぶというのは、単なる損得勘定で計ることを越えた別の何物かの方を高く評価するという、有限な自然素材を相手にする生業ならではの職業的倫理観とでも言うものであろうか。
決してこれはストイックな思考というものでもなく、そうした考え方を正当に理解していただける顧客と結びつくのであれば、何ら自虐的なものでないことも明らかだし、あるいは過度に誇るべきものでもなく極めて当然で合理的な考え方と言うことさえできるだろう。(いやむしろこっちの方が健康的ではないか)
ある木工所では、1.2mほどの幅のものを削ることのできる超大型ムラ取り機、およびプレナーを所有している。ボクの知る限り数カ所はあるだろう。
(その1つの営業車には「手作り家具の○○」と誇らしく書き込まれている)
ボクのように手鉋などで削る必要性もないのだね。
いやいや、こうした大きな板を削るのに手鉋を使う必要が無いというのではない。
そこではほとんどの仕上げ作業に手鉋が登場することは無いのだ。
この大型ムラ取り機を導入するまでは幅広の大きな甲板削りの際にかろうじて手鉋が必要とされ、そのスキルも大切にされていたのだろうが、導入後は無用のものとなり果てている、ということだろう。
これを木工の進化形態と読むか、はたまた‥‥。
Top画像はムラ取り作業(平面出し削り。途上)
Below画像は片面ムラ取りで出てしまったおが屑(ごめんなさい、こんなに削っちゃって)
削り2

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