工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

座刳りは楽しからずや(続)

今日は終日冷たい雨だった。
師走もはや半ばを過ぎようとしており、数軒の納品を抱えててんやわんやの状況であるが、せめてお天道様でも味方に付けて進めたいもの。
明日は回復してくれるようだ。
おっと、一昨日の続きであった。
〈承前〉
さてところで、こうした不定型な曲面を切削するにあたり、その曲率精度、平面精度をチェックするのに最適なものは何だと思われるだろうか。
手のひらなのだね、これが。
人に限らずであろうが、手の触覚というものは格別の能力があるようで、削った個所に手のひらを当てると、たちどころにその精度を計測してくれる。
少しでも凹み、出っ張りがあればそこを峻別し、技量の無さを教えてくれる。
少し前後するが、座刳りのプロセスを考えたとき、その手法は様々だろうと思うし、ボク自身いくつかの手法を使い分けすることが多い。
これは加工枚数であったり、仕上げの手法であったりで異なってくるが、一般には次のような手法が考えられるる。

  • 手のみ、手鉋のみで行う
  • NCルーターなどで3次元切削を行う
  • 治具を用い、一般のピンルーター(ルーターマシーン)で行う
  • アングルグラインダ、あるいはハンドルーターを用い、3次元切削機能を持たせた治具で行う
  • カッター、あるいは丸鋸などを用い、3次元切削機能を持たせた治具で行う

概ねこういったところだろうか。
それぞれに特性があるので、目的とする座繰りのプロフィール、個々の作業環境に合わせて選択することになる。
なお、一番目を除けば機械、工具を用いてのものとなり、またその結果も様々であるが、いずれにしてもその後仕上げ段階の前に、手鉋での補正が必要となる。
そうではなく、サンディングマシーンで補正しつつ、仕上げるという手法もあり得るが、このサンディングマシーンでは適正に成形しつつ仕上げるのは困難ではないだろうか。
やはり本稿の冒頭に叙述してきたように、手鉋での補正、仕上げが精度的にも、生産性からも望ましいと考えたい。
サンディングマシーンでの仕上げと手鉋での仕上げの差異は、ここであらためて語らずとも、他のところでもかなりの言葉を費やして解説してきたので繰り返しになるだけだ。
要するに、サンディングマシーンでは切削研磨の制御がとても困難だということである。手鉋の台に代わるものが何もないのであるから、プレ段階でそれなりに成型した切削面は、規制から解き放たれてめちゃくちゃな形状に陥ってしまうだけだろう。
あらためて定義するまでもなく、サンディングとはあくまでも素地調整としての機能に限定すべきと言う理由はそこにある。
具体的には、したがってその番手は#240あたりからスタートさせるのが望ましいが、プレ段階での切削品質によっては#180あたりからになろうか。
座刳りに関してはひとまずこれまでとしよう。

《関連すると思われる記事》

                   
    
  • 前の写真の座板は比較的厚みが薄いですね。
    どのくらいの厚みでしょうか?
    参考までに教えてください。

  • 座の厚みですか?
    1.1寸の材から取ったもので、仕上がりは27mmです。
    これは「くるみ」でして、軽量も1つのポイントとして設計しています。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed.