工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

機械、電動工具をその性能、品質から考える(MFK 700 Trim Router)【番外】

はじめに

本編については、編集上、あるいは記述内容からも、改編した方が良いところはいくらでも指摘できそうですが、今はそうした余裕も無く、ひとまず終えたいと思っています。
そうした立場ではありますが、読者でここだけは指摘しておきたい、あるいは判読不能などといったところがあれば遠慮無くご指摘ください。誠実に対処したいと考えています。

さて、今回の論考では国内電動工具メーカーを俎上にし、欧州の電動工具メーカーとの比較対照から問題点を浮かび上がらせるという手法を取ってきましたが、具体的にはFestool社のものが対象になることが多く、また総合的にも同社は秀逸なものを市場に送り出しているメーカーとして評価してきました。

ただ、このFestool社の電動工具で困惑させられてしまったものがあります。
何事も例外というものはあるようです。

おっと、この物言いは、あまり正しくは無いかも知れません。
私の単なる勘違いの要素もあるからなのですが・・・。
私が導入したFestool社の電動工具の中で、ただひとつ、死蔵した状態のものがあり、今日は「番外編」としてその機種を取り上げます。

MFK 700 Trim Router

辛いところですが、明かしましょう。
FESTOOL社の〈MFK 700 Trim Router〉です。
このトリマーを導入したのは、2011年のことだったでしょうか。

Festool / MFK 700 Trim Router

Festool / MFK 700 Trim Router

トリマーとは言っても決して安価な部類では無く、国内の類種の数倍もするものでしたが、がんばって購入し、セットアップし、テストまでしたものの、その後ほとんど使用の機会は訪れません(アタッチメントの1つは有効活用しているのですが、それについては後述します)

「勘違い」と言いましたが、マシンの本質的な問題と言うより、私の狙いが外れていた、ということに過ぎないとも言えるわけですので、その点から書き起こしましょう。

まさにトリムルーター

これはまさにトリムルーターなのです。
簡単に言えば、フラッシュ構造での木端面に練り付けた単板の目違いを払うために特化したようなマシンなのです。

そのための特異な形状を持ったベースと、ここに有機的、機能的にジョイントされる本体を考えれば、これほどすばらしいマシンは無いかも知れません。

このマシンは、上述のように目違いを払う(トリミング)機能において秀逸な機構を有するものです。
完全な面合わせをする場合、回転するビットは当然にもベース面に接触してしまうことになるわけですが、これを回避させるため、回転軸はベース面と1.5°の傾斜角を有して固定される構造になっています。
もちろん、0°にも設定は可能です。

国内電動工具メーカーのトリマーのアタッチメントにも、同様のものを見掛けることがありますが、その精度や、使い勝手、拡張性などは、全く次元の異なる秀逸さを見せてくれています。

このあたりはさすがにFESTOOLなんだと首肯するしか無いというワケです。

またエッジガイドなど、トリムルーターに求められるアタッチメントのほとんどを標準装備し、それらの機械的装着精度はパーフェクトであり、かつシステマチックなプロダクト的完成度、洗練された美しさがあり、他社の類種を圧倒するものがあります。

国内電動工具メーカーの類種とは次元の異なるマシンであることは認めざるを得ません。

構造上の欠陥と使いにくさ

しかし、残念ですが私たちが一般に求めるトリマーの働きからすれば、必ずしも使いやすいマシンでは無いのですね、残念なことに。
最大の欠陥は(あえて欠陥と言ってしまいますが)ベースがアルミダイキャストで覆われているため、作業中の様子が全く視認できないという問題があるのです。

多くの場合、ここは透明プラスチックで作られることが当たり前ですし、最近ではこれに加えてLED照明が付加されるわけですが、残念ながらそうした現代の標準的な仕様からはほど遠いマシンです。

やはりこの機種はあくまでも、フラッシュ構造におけるトリムルーターとして位置づけて、やっとFESTOOLらしさが発揮できるマシンと言えるでしょう。

コンパクトルーターというジャンル

個人的な話になりますが、導入と、死蔵への経緯をお話しします。
Festool社のいくつかの電動工具を導入し、その素晴らしさにノックアウトされ、いずれも快適に使っていた状況下、トリマーはBoschの「PMR 500」を主として使っていたものの、使用できるビットが6mm、1/4”、という制約から、8mmビットが装着できる機種を探し求めていたわけです。

6mmと8mm、わずかに2mmの差異でしかありませんので、怪訝に思われる方もいるかもしれません。
また市場には8mmビットの展開はとても少ないという実態もあります。

しかし、私のようなヘビーユーザー、プロショップではこの2mmの差は無視できないのです。
2mmでも大きい方が、はるかに作業性は良いのです。
単純計算では、その面積比は 1:1.8 ですからね。

〈切削力〉とひと言で言っても分かりにくいかも知れませんが、刃物のサイズの違いは切削量の差となって表れることはもちろんのこと、切削負荷への耐性(安定した切削運行が可能)も高く、また切削精度も高まり、切削肌も美しい結果(バリが少なく、逆目にも強い)となって表れるということは、意外と理解されていないかもしれませんね。

もちろん、その点ではミドルタイプ、ヘビーデューティータイプのハンドルーターの方が、こうした性能が高くなるのは言うまでもありません。
しかしコンパクトな形状で、手軽に使えるものも必要であるわけです。

これは西洋人との体格差からくる、日本人固有の要求かも知れませんが、このクラスのコンパクトルーターの働きの領域は多いのです。


こうして8mmビットの装填可能なコンパクトルーターを探し始めたわけですが、システム的な拡張性のあるものを探した結果、当然と言うべきか〈MFK 700 Trim Router〉が筆頭に上がり、高価格であることへは目をつぶり、エイヤッとばかり購入手続きに入ったわけです。

そして太平洋を隔ててやってきたマシンには、上述したような魅力あふれるものであることを確認させられつつも、やはり使い勝手の悪さから困惑させられてしまっていたというわけです。




間もなく、そこへ入ってきたのがDewalt〈DWP611〉の情報。

こちらは〈MFK 700 Trim Router〉の半値以下という気安さも手伝い、さっそく導入したわけですが、その使い勝手の良さ、8mmビット装着も大きな特典として、今度は自分の判断の正しさを確認するという経緯だったわけです。

私も少しは学習できたということですね。

汎用性のあるMFK 700〈Edge guide〉

ところで、Festool/MFK 700に標準装備されているエッジガイドですが、ここで取り上げたDewalt〈DWP611〉にジャストフィットするのです。
このことに気づいたのは、導入における私の勘違いの、ほんの一部でも払拭するものとして、救いとなったことは告白しておきましょう。

DWP611・エッジガイド・MFK 700

DWP611・エッジガイド・MFK 700

これは本編で縷々記述してきた、いわゆるユニバーサルな仕様として設計されたものかは不明ですが、結果としてはそのように位置づけても必ずしも牽強付会とは言えないでしょう。

Dewalt〈DWP611〉への惚れ込みもあったことから、専用のエッジガイドの導入をも考えたのはもちろんですが、Festoolトリムルーター標準装備のエッジガイドはそれを代替して余るほどの高精度なものであり、ありがたく使用しています。

因みにFestoolのエッジガイドは画像緑色の部分が0.1mmステップでのエッジ位置調整、Fine Adjustment 機構部となっているのに対し、Dewaltは別売として〈DW6913 Router Edge Guide〉
など)というものがあり、ほぼ同様の機構を有しているようです。

Vacuum Adaptorについても、双方共に備えています。

商品選択の難しさ

商品の選択は難しいです。
やはり開発者の狙いを読み取り、その機種の特徴を良く知った上で、かつ類種との照合、差異を検証しつつ、またネット情報に分け入り、確信を持った上で発注すべきですね。

導入へのハードルとして、海外からの購入における難しさもありますが、今は様々なルート、手法も可能になってきていますので、後は、いかに賢い買い方をするかの違いです。

先般、米国Amazonから100kgを越える大型機械にあたるDrill Pressを購入した時は、amazonでの購入手続きは自身で行い、運送業者(100kg〜という制約から、大手のヤマト、日通は高額になります)に依託し、首尾良く、比較的安価に個人輸入することができたわけですが、業者によっても、その運送システム、入管手続き、経費などは様々ですので、よく調べ上げることが必要です。

決まったら、エイヤッと飛躍するということですね。

なお、海外からの商品を導入するにあたっての詳細な情報はここでは触れません。
私も過去様々な手法を使ってきていますが、メーカーにより、あるいは販売店により、個人輸入の方法は様々ですし、機種によっては輸入における障壁もあったりと、様々な要素が複雑に絡みますので、これが最良という方法はありません。

個別具体的に検討するほかありませんね。
幸いにも、Web上にはこうした情報があふれてますので、それらを参照してください。

hr

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  • 私は結構重宝していますが、やはり刃先が見えないのは不安になりますよね。加工スタートや、終了点が見えないのでデリケートな加工をする時は、気を抜けません。

    • Ikuruさん、CM在学中より、Festool製品を深く知り、こよなく愛する人でしたね。
      今回は、少し辛口の評価になってしまった感じですが、これは本文記載の通り、用途の違いということで理解していただくのが良いでしょうね。私自身の戒めを含め、ですが。苦笑

      最近のFestool社開発では「エッジバンディング」という、フラッシュ作業でのすごいのが出てきていますが、やはり欧州では、良質な木工において、ベニアリングが重視されている背景を理解しなければ、そうしたFestool社の開発姿勢は分かりにくいかも知れず、
      〈MFK700〉もそのような文脈で捉えるべきだろうと考えていますよ。

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