工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

輸入木材の過乾燥にはほとほと‥‥

板の反張
日本は温帯に属し海に囲まれた島国。
モンスーンの影響を受け四季折々の気候が豊かな風土を形成しているが、湿潤な時季が長いのもその特徴の1つだ。
したがって米国などとは大気中の湿度は大きく異なる。
さて家具の素材、材木はしっかり乾燥させなければ使うことができない。
木は自然有機物なので、内部に封じ込まれている水分は時間の経過とともに、周囲の大気の湿度と平衡するまで抜けていく。
これは外形的には痩せていくという物理的変化をもたらすために、甚だ具合が悪い。
反る、暴れる、壊れる。
これを避けるため、製材後に桟積みという方法で自然の風に晒し、材木中の水分を抜いていく。
こうした数年の天然乾燥の後に、必要に応じてさらに人工乾燥を施す。
乾燥度は含水率という数値で表されるが日本では一般に12%〜15%ぐらいまで落として、やっと加工に入ることができる。
全く気の長い話だ。
ところで過度に乾燥したものも困る。
先に購入した米材のブラックウォールナットの乾燥材だが、あまりの過乾燥で参ってしまった。
普通に削っていけば問題はさしあたって出てこない。
例えば今回の 5/4″ の板は27mm程まで削って平滑な板として加工に供するが、取り立てて問題はない。
しかし場合によってはこの5 /4″ の板を半分の厚みに割く場合がある。
裏板の鏡板、地板などとして使い回したりする。
適切な乾燥度であれば、バンドソーで半分の厚みに割いてもさほどの反張も起きず、適度な厚みの板が獲れる。
しかし今回はバンドソーで切削し終わる瞬間、バシッと大きな音を立て、ノコとフェンスを挟んでしまった。
含水率の平衡度が取れていなくて内部の応力が一気に解き放たれてしまったことによるものだ。
かつても数度このような経験があったが、あまり気持ちよいものではない。
さてこ反張した板はどうするのか。
あきらめて小割りにして使うしかないのか。
いやそんなことはない。戻せばいいのだ。
どうして戻すかと言えば、かつてもどこかで書き記したことがあるが(こちら)板に熱を加え、急激な力を加えることで、かなりの程度に戻すことができる。
今回も試みたが、残念ながらあまりの反張の強さに叶わなかった。
昔からの木工所には「焼き盤」と言って、プレス機構の定盤の下に窯が付いていて、これに薪をくべながら熱を供給しつつ、反張を戻す、という方法が取られる。
しかしうちにはそんなしゃれたものは無い。
仕方なく幅方向中央部を割き、再接合することで所定の寸法にしたのだった。
含水率ところでこの板、含水率計で測定したら、何と10%台の部位もあるほどひどいものだった。これでは如何に冬季とはいえ、割くことは厳禁であったわけだ。
しかしこのウォールナット、米材ではあるが、中国から買い付けたものということ。
米国 → 中国での製材、乾燥 → 清水港 → 工房 悠と辿ってきたものだから、本来中国大陸向けのものだろうと思われるが、中国大陸というのはそんなに乾燥しているのかな?広い国土だからね。
なお余談だが、プレナーで目的の厚みまで削っていく場合、一方向のみばかり削ってはいけない。両方を均等に削っていくことが肝要。
片方ばかり削ることで、その材の厚み方向では間違いなく水分傾斜が出るだろうから、後に暴れることになるだろう。(この基本を意外と知らずに、一方向のみを削っている人も多い)

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