工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

さざえ堂というユニークな歴史的建造物

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日本の建築史へは、個人的にも、業務上からも関心が無いとは言いませんが、200年以上も昔に、こんなユニークで破天荒な仏堂が作られていたとは恥ずかしながら知りませんでした。

会津、飯森山の中腹に現在もなお屹立している栄螺堂(サザエ堂)です。
その外観は画像のように、まさにサザエの如くに螺旋構造をしたユニークで特異な形状。

《木の大学》を終え、帰路の途上で立ち寄って来ましたので、簡単ですが紹介させていただきます。

これが江戸後期、寛政8年(1796年)に建立されたというので、建築史的にも良く知られたものであるらしく、私のような素人にも刮目してしまう驚きの「正宗寺三匝堂」という仏堂です。
これは後段に書きますが、明治近代以降は廃寺となり飯森山を管理する飯盛本家に所属し、管理されているとのこと。

栄螺堂、実測図(小林文次 日大理学部教授による

栄螺堂、実測図(小林文次 日大理学部教授による

この栄螺堂(三匝堂)という建築様式は江戸中期、江戸本所の羅漢寺に建立(1780)されたのが始まりとされ、仏教の礼法の右繞三匝に基づき、右回りに三回匝る(めぐる)ことで参拝できるようにとの観音礼所巡礼という民間信仰に基づき、考案されたものということです(この栄螺堂を調査研究した小林文次教授の解説に依る)。
その後北関東〜東北地方にいくつかの栄螺堂が建立されているようで、この会津の「正宗寺三匝堂」はその中の1つということになります。

ただ、この会津の栄螺堂において特筆すべきことは、内部の螺旋階段が二重(上り下りが別)になっていて、そうした特異な、また卓抜した建築様式であったことなどが評価され、1995年に国の重要文化財に指定されています。

建立後200年ということであれば、当然にも木造建築ならではの劣化もあり、幾度もの修復工事が行われ、今日に至るわけですが、今も堅固な姿を留め、内部も公開され、アクアセスできます(有料)。

外壁、柱部分

外壁、柱部分

外壁の板は風化のためうづくりの様相で木理が浮き立ち、貫の枘は脱落しかけ、かろうじて金属ボルトでの修復により耐えているといった風です。
これはお堂そのものの荷重による緩みもあるでしょうし、貫を受けている柱の経年によるヤセも大きいからでしょう。

今後、さらに数10年、数100年と持ちこたえさせるには、可能であれば金属での補修ではなく、初期の様式を留め、木材での抜本的な修復を望みたいところですが、現実的には困難と言うべきかも知れません。

ただ、2011年3月11日の東日本大震災による強い揺れにも持ちこたえたということのようですので、しばらくは現状を留めてくれるものと思われます。
中央には6本の通しの芯柱があり、外部にもこれに対応して6本の柱があり、これを梁で渡し、構造的な強度を確保しているとのこと。

日本木造建築の秀逸さを見せてくれているわけですね。

堂内ですが、建築当時は、巡らされた回廊に沿い、三十三観音、百観音などが配置されていたようですが、現在はありません。
戊辰戦争後、一時期は白虎隊十九士の霊像が祀られていたようですが、現在は「皇朝二十四孝」の額というものが納められているだけです。

中学校の歴史の時間でも習ったことで、記憶にある人も多いと思いますが「廃仏毀釈」により、国内の多くの仏堂、寺などは破壊されるという日本の宗教文化における一大事があり、この仏堂も廃寺の憂き目に遭い、神道として再出発することになったようです。

明治維新政府による強権的な国家統制の革命は天皇制支配の貫徹と共にあったわけですが、宗教的帰依までを国家統制の支柱とされるにいたり、神仏習合の廃止、仏像の使用禁止など、仏教への弾圧は過酷を極めました。

戊辰戦争で賊軍・朝敵とされた会津藩であれば、なおのこと、その過酷さは想像に余りあります。

栄螺堂の公式Webサイトにおける当主の解説では、このあたりの経緯に関してはさらりと書かれているのみで、私もこれ以上語るものを持ちません。

なお、本栄螺堂については、服部さんのBlogに独自の解釈とともに詳しい解説があります。

■ 参照《会津さざえ堂公式Webサイト

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  • ライトのグッケンハイム美術館NYの回廊アイデアの元になったと聞いております。信州の鎌倉 別所にも二重螺旋回廊堂がありました。モダンデザインの源流は、伝統技術に本來しますね。レゴブロックで新しい雛形が出来そうですが。DNA 螺旋は生命原理ですから、まだ応用出来る未知の領域が潜みます。

    • >ライトのグッケンハイム美術館NYの回廊アイデアの元になった
      そうなのですか。
      ライトの代表作の1つとされてるユニークな造形の美術館でしたね。
      (落水荘などと較べるのは間違いですが、あまりにもユニーク)

      帝国ホテル建造の折に、会津でこの六角堂を拝観されたことも大いに考えられることです。

      >DNA 螺旋は生命原理
      遡れば、レオナルド・ダビンチのスケッチにも二重螺旋階段が観られるようですし、
      造形における永久のテーマであるのかもしれません。

      サム・マルーフの自邸にも螺旋階段があるようで、創作意欲を掻き立てられる何物かがあるようです。

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