工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

《Delta 18-900L 》が最優秀に選定(FWW Tool Test)

fww#249 tool test

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これまでこのBlogでは、新たに市場にリリースされた電動工具の中、木工作業に関わりの深いジャンルにあって、革新的なものなどを中心に、いち早く紹介してきましたが、ここ数ヶ月ではでは〈Delta 18-900L 〉の紹介記事に、かなりの数のアクセスがあるようです。

先日発刊された『Fine Woodworking』(以下、FWWと略)誌 #249 の〔Tool Test〕にフロア型のドリルプレス(=ボール盤)が取り上げられ、このDelta 18-900Lが最優秀に輝いていました。

今回はこの記事を参照しつつ、あらためてこのマシンの優位点を中心とした特徴を再確認していきたいと思います。

ところでこのマシンに関心を抱いたのは4年ほど昔に遡りますが、先の記事でも書きましたように、このような木材加工に特化されたドリルプレスが存在し、同類のものが多様に展開されていると言うこを知ったのは、ガラパゴス日本の木工屋には驚かされるに十分な衝撃を受けたものです。

さらにその中にあって狙い定めたこの《Delta 18-900L》は、要求される仕様水準において、群を抜くものであったことで、工房移転を機に、購入手続きへと踏み切ったわけですが、そのマシンがFWW誌で最優秀に選定されるということは、ユーザーとしてはもちろんのこと、紹介の労を執らせてもらったBlog執筆者として、深い安堵を覚えるものがあったわけです。

もし、逆にバッドな評価であれば、穴にも入りたい気分で恥じ入るしか無かったでしょうけれど・・・

Delta 18-900Lの優位性

fww#249 tool test

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FWW誌では最優秀(Best Overall)として挙げられた理由を以下のように簡潔に記述しています。

  • スピンドル送り量:この6インチという驚くべき数値は10機種中、3機種もある(国内標準機Hitachi B13は80mm)。
  • 定盤が左右、前後に傾斜(このDeltaのみ)し、これらはテスト機種中、最速での設定可能
  • ゼロアジャスト、深さ規制の機構が秀逸
  • ヘッドに装着されたレーザーポインターは秀逸
  • パワーと精度が高い

これらを中心に、以下、簡単に記事内容を見てきます。

フロア型の良さとは

まず、フロア型の優位点が語られています。

先のBlog記事でも詳細に書いたところですが、なぜか国内にあっては、木工専用機そのものも皆無であるばかりか、一般的なドリルプレスにおいてもフロア型は見あたりません。

Delta 18-900L

Delta 18-900L定盤

米国市場においてはこのフロア型は豊富に展開されているわけですが、パワー、スピンドル送り量、懐の深さ等々における仕様では、フロア型のほとんどが、高い性能を有しているようです。
つまりフロア型というカテゴリーそのものは既にプロ仕様という概念で捉えられるということでしょう。

日本の標準的な機種であるHITACHIの13mmボール盤のスピンドル送り量が80mmに対し、フロア型の方は最低でも4インチ(≒100mm)あります。

またフロア型はヘッドサイズと同程度の占有面積しか持たないため、卓上型と較べ、工房スペースの節約可能性が高いことも挙げられています。

使用環境からすれば、長尺物への加工も多ければ、定盤高さ付近では長く広い空間が必要となりますが、足回りはスッキリとするのは明か。

パワーと精度

Delta 18-900Lのモーターははテスト機種中、3/4hpと、決してパワフルマシンではありませんが、RUNOUT、スピンドル精度、つまり主軸の振れは最小で、Test対象10機種中もっとも優れたマシンであるとのこと。

これはDELTAという伝統的な工具メーカーゆえの、機械加工精度の高さ、信頼性を背景とした、当然の結果であるかも知れませんね。

実際、太い口径のフォスナービットで、堅木に深めの穴を開けても、一切のビビリを生じることなく、シャープな開口ができます。
例えパワーがあったとしても、精度において問題があるようでは私たちの供用には適さないでしょう(これらは、ビットに対応し、最適な回転速度を選択することが前提になることは言うまでもありません)。

定盤が際立って優れている

Delta 18-900L  定盤

Delta 18-900L 定盤

フロア型の機種は豊富に展開されている米国市場にあっても、このDeltaのような、いわゆる木工専用機としての仕様で開発された定盤を持つ機種は、稀のようですし、ましてや左右の傾斜に加え、前方向への傾斜を可能にしたマシンは、Deltaのみのようです。

木工で使用する場合、他の多くが合板などで補助的な定盤を重ねなければ実用に供されないのに対し、508 × 356 mmというサイズを持つDelta機は、木工専用機としての広く、かつ機能的な仕様を満たしていると言えます。

その大きさ、あるいは左右の傾斜はもちろんですが、前方向に0-48度まで傾斜ができ、またその傾斜作業は、大きなノブボルト2個で、とてもイージー、スピーディーに設定できます。

決して複雑な機構を有するものでは無く、シンプルな機構でこれらは叶えられるわけですが、しかしこれまでどのメーカーからも無視されてきた機構です。

これは木工に従事するほとんどの人が注目する優位点では無いでしょうか。

また、FWW誌では定盤中央のインサートのブロックが「ボーナス」として付記されていました。
加工物へ貫通の開口をする場合、開口位置には常に木部が無いと、開口部の底にバリが生じてしまうわけですが、Delta機の定盤には、これを回避させるものとして、定盤中央部にブロックをインサートさせる機構(スクリューでのレベル調整なども付加)を有します。

私もさっそく合板で20枚ほどのブロックを造って備えることにしました。(レベル合わせも、同一の厚みであれば、交換時も楽ですからね)

補助的定盤は不要なため、この1枚の鉄製定盤で仕様を満たすには、必須の機構でもあるわけですが、それにしても嬉しくなってしまいますね。

速度変換の容易さ

現在では、米国市場のいくつかのマシンが電子制御での無段階変速機構を備えているようですが、Deltaは従来通りのベルトとプーリーでの変換機構が採用されています。

ただ、ここにおいてもこの変換作業に他機種が1〜3分の時間を要したのに対し、30秒でできたということで、ここでも最良の機構を備えているという評価です。

簡単に紹介しますと、2本のベルト交換時の弛緩機構が、レバー1本で実に軽快、イージーにできるためです。
他の機種では、電動機そのものの位置をレバーで緩める機構が一般的だろうと思われますが、Deltaはそうではなく、電動機と主軸を繫ぐベルトは2つに分かれ、それを繫ぐため、中央に1つのプーリーがあり、これを介し、回転を伝達させる機構となっていて、この中央のプーリー位置のテンションを緩めることで2本のベルトが緩み、容易に位置交換ができるという機構です。

深さ設定機構

これも先に紹介した機構ですが、ゼロアジャスト、深さ規制のボルトナットですが、クイックリリースを備えた機種が10機種中3種で、もちろんDelataもその1つです。

ただ、FWW誌の写真で紹介されている設定棒に刻まれた目盛りですが、Deltaにはありません。
操作ハンドル軸に深さ寸法が刻印されていますので、絶対的に必要というものではありませんが、あると便利でしょうね。Hitachiの機種にだってありますからね。

自身でヤスリ掛けして刻印しますかね。

レーザーポインター

FWW誌では必須のものじゃ無い、としつつも、Poter Cableとともに、このDeltaの機構を優れているとしています。
(Deltaのものなどは、レーザーポインター照射電源はメイン電源からの給電ですが、どうも、他の機種は乾電池駆動のものが多いようです)

また、ヘッド左右に固定されている安定性はもちろんですが、その設定の容易さも挙げられるでしょう。

価格の評価

それぞれの価格ですが、Deltaは10機種中、ミドルレンジといったところですね。
Deltaの倍近いものもありますが、これは電子制御付のマシンということでの高価格設定なのでしょう。

一方、今回のテストでBest Value に挙げられたマシンのPoter Cableの《PCB660DP》ですが、Deltaに比し、1/3ほどの価格です。
これでも4インチの送り量を持っていますし、深さ調整においてのクイック機構を有し、レーザーポインター、および速度変換機構も優れているようです。

購入価格を抑えたい方には魅力的なマシンとしてリストされるでしょう。

以上、FWW誌、Tool Testの記事を参照しつつDelta 18-900Lをあらためて検証してきましたが、いくつかの部門で他の追随を許さない実に優れたマシンであることが確認されたと思います。

米国市場においてはこれらのジャンルでの機種更新も比較的頻繁で、Deltaにキャッチアップしてくるメーカーもあるかもしれません。
一方、我らが日本のメーカーではDELTAに追随しようなどという気概はまず望み薄でしょうか。

そうであるならば、Delta社のものが国内でも容易に入手できるよう代理店展開を期待するというのが、当面する現実的な期待ということになるでしょうか。

hr

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