工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

新工房 建具について(4)

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住まい、ショールームにあらたに設えられた建具2種、3枚の紹介です。

  1. 玄関ホール ━ リビング を間仕切る引き違い戸
  2. ショールーム ━ トイレ廊下を間仕切る一本引き戸

玄関ホール ━ リビング:引き違い戸

玄関ホール ━ リビング 引き違い戸

玄関ホール ━ リビング 引き違い戸

  • サイズ:965w 2,500h 40d
  • 材種:タモ柾
  • 嵌板:ポリカーボネイト 6mm
  • 金具:アルミV型レール、専用車輪

ご覧のように、天井高さまで届く、大きな引き違い戸です。

2,500mmの建具となりますと、木材も10尺(約3m)の材が必要とされ、木取りも困難ですし、機械加工もちょっと難儀します。

この新しい工房の建造中、大工の棟梁が急遽、機械加工が必要となり、工房まで来てもらったものですが(棟梁の作業場は富士宮)、開口一番、「狭いなぁ、?○💢■怒💥」などと嘆かれてしまったのでしたが、さもありなん、建築と家具とでは、端からモジュールサイズが違うのです。

この以前の狭い工房ですと、振り回すにも困難で、苦労したことででしょうが、新しい工房では、そうした作業空間の阻害要因からも解放され、順調に進めることができました。

ただ、背高ノッポというのは、框そのものは見付で3.5寸ほどの柾目ですので、安定的に姿形を留めてくれますが、5本の細い束(15mm × 17mm)は、柾目木取りしたとしましても、どうしても屈曲してしまいますので、少し難儀でしたね。


仕口は面腰。角面を取っただけですので、蛇口でも良かったのですが、途中、1本の貫がありますので(貫×束 の交差部位の納まり)、えぇい、面倒だ、面腰にしてやれ、っとばかりに、面腰にしたのでした。

が、内側からの押さえブチを兼ねた束の、上下の横框への納まりが面腰ではあまり美しくなく(結合部位が目立つ)、ここを隠せる蛇口の方が良かったのかな、などと反省するところも無くは無いです。

玄関ホール ━ リビング 引き違い戸 ディテール

玄関ホール ━ リビング 引き違い戸 ディテール

框同士の枘は二連、二段ですね(この程度の建具では常識ですね)。
ただ針葉樹では無く、タモですので、枘の貫通はありません。無用でしょう。
ただし、枘長は45mm。(束は20mm)

なお、長い束のブレは、ポリカーボネイトをサンドイッチさせていますので、ここに上下5個所、2φの細い造作用ビスで、割り付け、固定させています。
ポリカーボネイトという樹脂だからこそできることで、ガラスではこうはいきません。

因みに、この貫の位置のことですが、皆さん、意匠的にどう評価されますでしょうか。
かなり低い個所に1本。

実は、この貫は意匠上よりも前に、止むを得ない理由からなのです。
ポリカーボネイトは一般には3×6尺サイズで市場に流通しています。
もちろん、3×8尺、4×6尺、2m×2m、というものもあるのですが、3×6 のものと較べれば
需要層の違いから、とても高価になってしまいます。

したがって3×6を選択するということになり、その位置が、この貫となって規定づけられてしまった、という、嗤うに嗤えない話でしかかないわけです。
しかし、意匠的には、何やら意味ありげで、良いじゃありませんか(独善的かな? 笑)。

あらためて、この建具を建て込んでみた感想ですが、やはり背が高いのは良いです。
空間を広く感じさせますし、例えチープな空間であっても、立派に見せてくれますからね・・・。
建具が持つ、建築意匠における重要性をあらためて感じさせてくれました。

ショールーム ━ トイレ廊下:一本引き戸

ショールーム ━ トイレ廊下:一本引き

ショールーム ━ トイレ廊下:一本引き

ショールームのOPEN時は、まだこの建具はありませんでした。
ショールームからトイレにはそのまま抜けられるレイアウトになっていました。

とりあえずは、プライベート空間とは仕切られていましたので、由としてきたわけです。

しかし、これでようやく、まともなショールームになりましたかね。

  • サイズ:1,4205w 2,100h 40d
  • 材種:タモ柾
  • 嵌板:ブラックウォールナット 12mm板目、ポリカーボネイト 6mm
  • 金具:アルミ吊り込みレール、専用車輪

意匠的には、ショールームの腰板がウォールナットですので、同じ高さの位置まで、同じウォールナットを羽目板として納め、残り上部にはポリカーボネイトを嵌め、ここに束5本を割り付け、端正な感じに納めました。

ハンドルは、専用の金具に、ケヤキで八角棒を造り、納めています。


仕口ですが、框は上のものと同様です。
ただ面処理が異なります。

ショールーム ━ トイレ廊下:一本引き戸 ディテール

ショールーム ━ トイレ廊下:一本引き戸 ディテール

下は1分の角面ですが、ポリカーボネイトが納まる部分は、決面(しゃくりめん)を施し、さらにこの決面の内側に2mmの角面を施してあります。
つまり貫と上の横框を繫ぐ束の位置には面腰の仕口がきているというわけですね。
一見、ややこしいですが、上下の意匠を峻別させるための面処理ということです。

ただこの2種の意匠を隔てる貫の框への納まりは、一般的な面腰なのですが、たぶん、丁寧にやろうとするならば、それぞれの面の量に合わせた、異形の納まりにするべきなのかも知れません。

上は10mmの決面、下は2mmの角面、これを繫ぐ貫の上下は、それぞれに対応させた面の量にするというもの。

確かに加工は1つ難易度が高まりますが、意匠的なものとしてはどうなのでしょうね。

さて、下の腰板様の羽目板ですが、当然にも(?)割り付けは上の束の位置に合わせてあります。
こういうところは手抜きしてはいけませんね。
そんなところ、誰も観てはくれないさ、所与の材料に合わせてやろう、などと言い始めますと、とたんに野暮なものになってしまいます。
こうしたちょっとした配慮で、建具の価値は大きく決定づけられるように思います。

hr

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