工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

個展を終えて (追記あり)

【生活をアートしよう ─ 杉山裕次郎 木工家具展 】が昨日18日、終了しました。
5日から2週間にわたる長丁場でしたが、多くの成果とともに終えることができ、ご観覧いただいた皆さまに心から感謝を申し述べさせて頂きます。
名古屋ではこうした個展は初めての経験だったということもありますが、与えられた準備期間等の問題など必ずしも十分な態勢が取れなかったことから、期待に沿えない部分もあったかもしれませんが、私、杉山の木工家具制作の現状の一端をお示しできたのではと総括しています。
会期中は多くの来場者に恵まれ、展示作品を熱心にご覧いただき、また展示品への高い評価を含め、積極的にお声を掛けて頂くなど、それまでの他会場とも異なる熱い視線を感じ取ることができたのもうれしいことでした。
また、歴史と文化に彩られた名古屋ならではの特徴的なこととして、木工というジャンルにおける暖かくも厳しい数寄者との深い交流ができたことも、予想外の収穫であったことを付言しておきます。
無論こうした方々からは温かい励ましに留まるわけもなく、独自の鑑識眼からの忌憚のない批評と、モノ作りにおける厳しさという側面からの知見を披露いただくなど、名古屋松坂屋美術という会場ならではのものであったことでしょう。
こうした場面では大いに刺激を受け、学び、また発憤させられるものでもあったのです。

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また今回の個展は「木工家ウィーク2010・NAGOYA」に協賛させていただいたわけですが、そのことが今回の来場者を特徴付けるものとなったのは言うまでもありません。
15日、16日の週末は「講演会」などの企画があったからでしょう。大勢の来場者がありました。青年たちの一群です。
そうした人たちにはこちらから積極的に声を掛け、どちらの生徒なのか、聞きたいことがあれば何でも気軽に聞いて欲しい、などと話をしたのでしたが、まだ就学間もない5月というこの時期では、共通言語も成立しがたいものがあり、深い交流は無理であったかも知れませんね。
一方、キャリアの職人、木工家という方々とは、デザイン、仕口、納まり、材種など、出展作を間に挟み、様々な話ができたことも良かったと考えています。
遠方からわざわざ来られた方も多いようで、杉山の“人となり”と作品を見比べつつ、納得、いやその落差を楽しんでくれたものと思います。
ネットから発するキャラクターの色合いと、その実態とのギャップは如何であったでしょう。
また「講演会」には会場立ち会いで出席できなかったものの、その後のパーティーでは酒を酌み交わし、大いに語り合ったこともあり、その中の少なくない数の関係者が翌16日〜18日に来場され、彼らとはかなり深いところでの話もできました。
中にはうざったく感じた人もいるやもしれませんが、木工へと専心することへの勇気をもらえた、とポツッと感想を漏らす人もあり、交流の意味というものをあらためて感じさせられたのでした。
私たちキャリアの木工職人にとっては、これからの青年にいかに木工家具の可能性と未来への希望を託すことができるかが重要なこととなります。
今後もこうした個展を含めた活動の展開を進めることで、悩める青年らに木工家具の世界の豊かさと希望を伝えていくことができればと考えています。
またこられの多くの方から本Blogの読者であることを明かされ、「もう絶対二枚ホゾでやっています‥‥」などとの声も聞かされるなど、その影響力を感受させられるものであったのですが、これは裏を返せば、それだけに責任も重いということであり、より強い自覚を持って臨まねばと思っています。
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さて、私の個展がこうした盛況のうちに終えられたことも、「木工家ウィーク2010・NAGOYA」の様々な企画との協賛によるものと考えられますので、企画運営者の方々には深く感謝するものです。
今後、こうした成果、あるいは手厳しい批評を深く受け止め、日々の木工の活動をより充実させていきたいと考えていますので、どうぞこれからも忌憚のない批評と、また許されるなら暖かい励ましを頂戴できればありがたく思います。
本当にありがとうございました。
なお、幾人かの人からは別注を承りましたが、さっそく設計見積をしまして、お届けする予定ですので、それまでしばらくお待ち願いたいと思います。
〈追記〉 (2010.05.20)
申し遅れましたが、展示しました家具の一部は、同会場にそのまま常設となりました。
メイプルホールキャビネット、座布団椅子セット、ディスプレーフロアスタンド、ハイスツール、ジュエリーBox、などです。
どうぞ今後も名古屋松坂屋美術での杉山の作品をよろしくお願いします。
個展会場

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  • お疲れ様でした。
    また、全体として成功裡に終わられたようで、おめでとうございます。
    最終日にお邪魔しまして、お客様のお相手、および搬出の
    打ち合わせなどお忙しいところ、ご親切に応対していただき
    感謝しております。
    私としても滞在2時間の名古屋行ではありましたが、念願が
    ひとつ叶った思いでおります。

  • acanthogobiusさん、会期最終日、諸般の事情からもはや来られないのだろうと考えていたところへ、残すところわずか数時間という時に現れましたね。
    職場から取るものも取り敢えずやってきた、といった出で立ちでした。
    仰るように、接客と、撤収作業準備と、慌ただしい中での接遇と言うことで、十分な応対ができませんでしたこと、済まなく思います。
    しかし、Blogを介してのコミュニケーションも、その対象をリアルなイメージとして捉え直して頂くことで、より客観性を帯びたものとして展開できるように思いますので、ありがたく思います。
    強行軍、お疲れさまでした。

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