工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

北欧からの一陣の風

一昨日、“木工家具界の貴公子”の異名を持つ ? 須藤生さんをはじめ、カール・マルムステン、およびカペラ・ゴーデンの卒業生4名の訪問を受ける。うち一人はテキスタイル作家。
北欧における木工房、木工所はとてもクリーンなすばらしい環境で整備されていることは彼の地をよく知る先輩らから聞き及んでいたので、うちのような汚い工房を案内するのは赤面するばかりなのだが、いまさら腰を引いてもかわゆくもないので、すっぴんでご覧いただく。
ま、反面教師になれば良いだろう、といった風だね。
須藤さんは彼のBlog[ストックホルムの空を見上げて]で詳しく取り上げられているのでご存じの方が多いと思うが、帰国後着々と工房設立へと歩みだしている。
導入されつつある木工機械のラインナップを見れば、多くの人はそれらを垂涎の眼で眺めているのかも知れない。
確かに先に国内で開催された国際技能五輪の競技使用機種に採用されるなど、世界標準機と言っても過言でないようなFELDER社のものを基軸として整備されているようだしね。
そこで少し余談になるが、これだけは言っておきたい。
彼は決して富裕な資産家の子弟でも何でもない。
高価な木工機械導入を含むスタイリッシュな展開は彼自身がこれまで培ってきた資質、力量がもたらした結果以外の何物でも無いだろう。
あえて誤解を恐れず言えば、そうしたところへと必要な資金は集まるというのが、世の習いなのだから。



さて汚い工房への訪問の意図は、日本の木工房がどのような制作スタイルを持ち、どのような機械設備の環境を持っているのかという興味からのものだろう。
基本的なところでは彼の地と大きく異なることは無いと思われるが、そのアプローチの差異、制作スタイルの差異から来る機械設備の考え方は自ずから異なってくるだろう。
ボク自身も若い頃、複数の木工所を就職実地体験し、また多くの工房を拝見させて頂き、そこで多くの示唆を受け、今の制作スタイルおよび機械導入の現在がある。
やはりモノ作りという世界においては先人のスタイルを盗み、その現場を参照し、その上で自身のスタイルを模索するということが有用でないわけがない。
ま、ボクのところでは1つでも2つでも何かを掴んで頂くことができるならば由としよう。(反面教師を含めてだが ‥笑)
うちの機械のラインナップの他の工房との違いを挙げれば、ピンルーター(ルーターマシーン)、シェイパー(高速面取盤)、4軸ホゾ取盤、ストロークサンダー、桑原の600mmプレナー、2mの自動プレスなどだが、個人工房としては積極的に機械導入を進める、一方の典型と言えるスタイルかも知れない。
ただ勘違いしてもらっては困るが、うちにはフラッシュ構造に関わる設備は皆無。
全てはFine Woodworking、無垢の家具制作に寄与させる機械ばかりだからね。
また須藤さんはすでに導入しているようだが、Festool社の「Domino」、ハンドルーター「OF1400」も推奨電動工具として紹介させていただく。
彼のFestool社の企業理念への思いと、ボクのそれとはほぼ一致するようだったが、同行してきた木工家Eさんもこれらには強い関心を見せていた。

工房見学の後は、5月の静岡と言うことで広大なお茶畑、牧ノ原丘陵をドライブしつつ、「お茶の郷」で小堀遠州設計による茶室に座る。
同行したノルウェーの女性木工家Emmeliにぜひ茶室の室礼と抹茶を楽しんで頂きたいという思いからだが、ありがたくも茶室の計らいで着物を着せてもらっての茶室経験は良い思い出になったことと思う(画像は観光客向けの部屋でのもの。この後、長四畳の本格的草庵風茶室へと案内され、詳しい説明を受ける)。
お手前の道具も、『綺麗寂び』(小堀遠州による新しい美質の定義)というものか、ほんのり赤みがかった三島の水差し、渋い志戸呂焼のお茶碗などで呈茶され、慌ただしいスケジュールの中でほっと一息できる空間を楽しむことができた。
その後は庭園を散策した後、隣町の機械屋を探訪。
須藤さんは既に基本となる機械の設置を終えつつあるようだが、周辺の機械へは関心も高いようで、この機械屋との良い関係が作ることができれば良いだろう。
今回、ボクも個展を終了しその後片付けの段階ということでもあり、4人とのエキスカーションを楽しませてもらったが、これからの若い木工家、テキスタイル作家との交流は溌剌とした彼らの思考スタイル、豊かなる未来をまぶしく感じつつ、再会を約束して別れの途についていった。
ところで‥‥、げに恐ろしや、この小柄のノルウェーのレディー、エミリーだが、数日前に富士登山を敢行し(頂上登坂)、担いでいったスキーを履き、テレマークスキーで下山したのだという。
二の腕がたくましい、笑顔を絶やさない、金髪碧眼のキュートな女性だった。
貼り付けた写真、コンデジ撮影によるもので良くないな。
いずれ須藤さんのBlogでEOS 5D + EF24-70mm F2.8L USMによる撮影でビシッと見せてくれることだろう。
茶室

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