工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

フィトンチッドに包まれて

森
ここしばらくはボクの身体には虫は寄ってこない(と思う)。
フィトンチッドって奴を身体に染みこませているからね。
フィトンチッドとは樹木の香気が周囲の微生物をやっつける物質とのこと。
wikiによればロシアの学者による発見と命名とのことだが、ロシア材で最も強い香気を発する樹木はいったい何だろう?
日本ではもちろん檜だ。
檜にはヒノキチオールという精油が含まれていて、これが香気を発する。
数日前から檜の古材で卓を制作している。今日も古材ならではの加工の困難を押してほぼ加工のめどを付けることができた。
築50年を越えるほどの建築解体材からの古材だが、香気は全く失われてはいないからオドロキだ。
ま、大工など針葉樹を相手に日々の糧を得ている職人であれば、何も驚くに値しないことだろうが、雑木相手の家具職人(雑木というへりくだった呼称が好きだね)となれば感慨一入(かんがいひとしお)ではあるのだ。
さらに檜を褒め称える。
檜は加工がとてもイージー。ボクの鉋掛けは一流と勝手に自負しているが、二流でも三流でも簡単に削ることが出来る、と思われるほどにサクサク削れてしまう。
ただ構造材の解体材であるため、大小の節がありこれが異様に硬いためにここで刃が痛むのがちょっとね。
鉋掛けだけで材面は光り輝く。松材もなかなかのものだが、檜のツヤに勝るものはないだろう。
余談だが、以前建具屋を父に持つ若者が家具作りをしたいと言い、鉋掛けもできますというので、うちで試しに雑木(楢だったかな?)を削ってもらったことがあった。
本人は首を傾げるばかり。全く良い削りができないのだった。
ここでは鉋掛けの技法について語るものではないが、実は雑木も檜も鉋掛けの基本に大きな差は無いと考えたい。
これは“削ろう会”などといった極めつけのレベルを問うものではなく、家具制作における職人レベルのことであるが。
また同様に、反り台であったり、南京鉋であったりと、いわゆる平鉋では無い“曲もの”(クセモノ)の鉋においても全く同じであると言って良い。
平鉋の技法があって、“曲もの”の鉋が今ひとつ、ということはあり得な〜い、のであって、それは実は平鉋の技法もその程度でしかない、という証左なのでは。
明日は吸い付き桟の加工になるが、問題が残ったまま。
解体材という制約のため、吸い付き桟に使う比較的大きなサイズでは柾目が取れないという問題。
何故か秋めいてきた頃になって、工房にはやたらと蚊が飛翔しまくり往生こいていたが、ここ数日なりを潜めている。ヒノキチオール効果大。
‥‥ボクの身体にはここ何年も虫が付かない。
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*削除部分は読者からのご指摘によるもの。詳しくは「ヒノキチオールについて」へ。

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