工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

《Shaper Origin》の驚き

2017年が明けましたね。
本年もこのBlogの運用を通し、日々の活動を記したり、思考のプロセスを残したり、さらには木工関連の情報を共有したりと、これまで同様に活用していこうと思います。

どうぞ本年もヨロシクお付き合いください。
そして遠慮なくコメントを入れてください。

コメント投稿ですが、これまで過去に1度でも投稿したことがあれば、[submit]ボタンを押せば、そのままダイレクトに反映し、ただちに表示されます。

初めての場合は、管理者(私)による認証のプロセスを経てのものになりますが、Macから離れている時間帯は無理としても、数時間後、あるいは数日後には反映するはずです。

さて、本年初のエントリですので、少し明るい話題をと考えてみましたが、なかなか見いだせないというのが正直なところですが、ただ1つ、近未来(数ヶ月後という程度の)にリリースされそうなマシンがありますので、これを紹介させていただきましょう。

過去、本BlogではFestool社のDomino、およびハンドルーター(OF 1400EQ)など、いくつかのマシンを国内のこうしたインターネット世界では最初に紹介してきたわけですが、今回はどうなのでしょう。
今現在、国内の木工関連のサイトからの発信はなさそうですが、ご覧になった方はいらっしゃいますか?

しかし、米国の木工関連ツールの販売店サイトなどには昨年6月頃から関連記事が上がっていましたので、知っていらっしゃる方は少なく無いかも知れません。

私も忙しさの余り、あまり深く追求することなく推移し、どなたかが発信されるのを待っていたわけですが、発売まで時間切れになりそうなこの時期、やや中途半端な記事にならざるをえないという限定的な条件をお許し頂いた上で、触れて見たいと思います。

さっそく紹介しましょう。
《Shaper Origin》というマシンです。

私がテキストで下手な紹介をするよりは、その斬新で驚異的な機能を理解するには動画で確認するのが速いでしょう。


実は私もまだこの《Shaper Origin》についてはその全貌を理解しているわけではありません。

この動画から理解できる基本的な、あるいは言い方を変えればアバウトな性能についてなんとなく分かると言った程度のものです。

ただ、かつてこのようなCNCマシンをハンドルーターへのアタッチメントとして搭載してしまう、という実に斬新で驚異的な発想には、Dominoを最初に覧たときの驚きを越えるものがあったことは確かです。

いずれ本年9月頃と言われている市場リリース後、洪水のように情報が駆け巡ると思われますので、詳細についてはその後に検証できればと考えています。

まず、その基本性能の特徴をリストしてみます。

  1. コンパクトルーター(1/2”のストレートビットを装填)を活用したマシン
  2. AR能力を備えたコンピューターを搭載し、マップをデジタル的に読み取り、このラインに沿ったルーティング切削を行う能力を備えている
  3. したがって、倣い切削では必須の物理的なテンプレートは不要で、デジタルデータさえあれば保存でき、いくらでも複製可能。
  4. ルーターの深さ制御もコンピューターで自動制御されるので、高精度の設定が困難な物理的な設定作業からは解放される
  5. 5インチタッチディスプレーには、直感的なGUI(Graphical User Interface)を備えている
  6. USB、および Wi-Fi で外部からのデータ取得も可能

さて、2つめのAR能力云々ですが、動画を視てお分かりのように、手動操作でモニターに表示されるアバウトなルートを辿るわけですが、実際のハンドルーターのマップマッチングはデジタル制御されることで、寸分の違いも無く、高精度に切削されるようです。(その精度は1/100インチ=0.254mm)
つまり手動操作での運行はあくまでもマシンの動きを補助させる程度のものだということです。

このマシンの斬新な性能は大体お分かり頂けるものと思いますが、私たち木工屋にとってその活用方を考えた場合、たぶん無限に拡がる世界があるのではと思われます。

もちろん、これで解決されるところは限られたものでしかなく、しょせん木工はそれ以外の領域の方が圧倒的に多いわけですが、使い方によっては、いくつかの領域に於いて、頼もしい加工支援のツールになるだろうと思われます。

この《Shaper Origin》の開発プロジェクトには多くの研究者が関わっているようで、中でもGoogleの幹部研究員(Joe Hebenstreit氏)が深く関わっているとのことです(彼がこの《Shaper Origin》社のCEO)。
初期のプロトタイプのものはMIT(マサチューセッツ工科大学)で製作されたそうです。

なお市場投入は本年5月頃と言われていますが、現在米国内では予約注文を受け付けており、そうした資金が開発に投下されているようです。(この時期に予約すると、市場リリース後の価格より割安に設定されているようです)

如何でしょうか、新年早々にふさわしい、夢のある話しでは無いでしょうか。

Dominoの紹介の際は「こんなマシンくだらない」、などと言われもしましたが、今回も同様の反応があるかもしれませんね。

ただ、道具というものは、いかにそれを使いこなし、開発者の意図を汲み、あるいはそこからユーザーならではの新たな想像力で開発者の意図を越えた活用方を見出すというプロセスに、この世界の素晴らしさがあるのだろうと思います。

ペシミスティックに斜に構えるより、よりポジティブに向き合うと言うことの方が健全で楽しいものでは無いでしょうか。

鉋イラスト

■《Shaper Origin》公式サイト
■《Shaper Origin》YouTube チャンネル

※ 画像はShaper Origin社の公式サイトから拝借させていただきました。深謝

hr

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  • 初めまして。安曇野でオーダーキッチンを製作してる小野寺と申します。
    以前から休憩時間に興味深い記事を楽しく読ませて頂いています。
    家の工場にはNCは有りませんが、これは色々使い方次第で、面白い事が出来るかも知れません。
     何年か前に、スピーカーボックス大量に作っていましてその際は、型をルーターで製作し、それを元に小穴加工したり外形を加工したりで、しまいには、その型が使いすぎでだめになったりで、大変なおもいで製作してたことを考えると、大型NCを導入するよりわずかな資金で小ロット生産出来るのが、今風で良いです。
     また、曲線家具に突き板を貼る前のR下地を積層製作する際,ある程度正確に積み上げる事が出来中間作業が大幅に楽になりますね。
     興味深いマシンです。

    • 小野寺さん、初のコメントですね。ありがとうございます。

      勝手ながら、御社のWebサイトを拝見しましたが(URLの記述に少し難があったようですが、何とか辿れました)、このマシンは御社のような業務内容において活躍することが大いに期待できそうです。

      日本国内からの入手方法に関しては現段階では不明ですが、販売が開始されればアナウンスされるものと思います。

      ぜひ入手なさって、業務の合理化に繫げて頂ければと思います。
      入手後の小野寺さんの喜色満面の笑顔が想像できそうです。

      リリース後、さらに詳細な情報があれば、再度触れさせて頂くようになろうかと思いますが、小野寺さんも購入の暁には、ぜひご一報ください。

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