工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

アリバイ証明

組み立て
仕事もしています。
一昨日は(慈)雨に見舞われたものの、今朝は澄み切った青空が拡がり、一段と寒さが強まった。
当地では初氷、初霜の報もあったらしい。
寒さはこたえるけれども木工作業にはすこぶる付きで快適な環境と言えるだろう。
そんなわけで今日はキャビネットの帆立を組むなど、乾燥した時期でしかできないことを一気に進める。
今日のタイトルは、あるお客様へのもの。
あまり仕事が進んでいないのではとの懸念を払拭いただくためのもの。
ご覧のように、ちゃんと進めています。ご安心を。
今は3つほどの種類を同時並行的に進めている。
個人の客層を対象とした制作活動となれば、どうしても1本ものが中心とならざるを得ず、そうした状況下、可能な限りにコストを押さえるために複数の制作活動を同時的に進める。
例え制作する種類が違ったとしても、キャビネットなどでは共通する部分は多いもの。そうした考え方の下であれば複数の加工を同時並行的にスムースに進めることは可能となる。
(機会があれば記事にしたいと思うが、多様な仕口を駆使しながらも、それぞれの仕様においてはごちゃ混ぜにせず、一貫した思考で設計することで作業性は高まり、加工プロセスでのミスも減らすことができる)
ところでボクが起業したのは1988年だが、この頃は所謂バブル経済へ向けて経済界は過剰なまでの熱気があり、それから数年はめちゃくちゃな忙しさだった。
こうした環境では同時並行的に進めるための業務管理、スキルというものが嫌が応にも培われた。
六本木のある高級レストランバーの仕事の時はキャビネットだけでも7種類。
テーブルなどを合わせれば11種類ほど。
しかもその中の1つ、バックカウンターなどは3間ほどの長さのもので、デコラティヴなデザインで、中央にはTV収納部分があり、アキュライドのフリッパードアで納めると言った、まさにバブリーで過剰なものだった。
依頼主もこの時ばかりは3名ほどの助っ人を送り込んでくれ、夜を徹しての仕事が続いたのだった。
まさにこの時期は経済原論で言うところのいわば“原始的蓄積”のような過程であったかもしれない。これは単に経済的基盤を作る時期であったことだけではなく、職能というものを形成させてくれたという意味でも、である。
懐古的に語るつもりは毛頭無いが、しかし、現在の技能であれ、仕事の進め方であれ、そうした過剰なまでの仕事量の中から培われたものであることは否定できない。
職人は様々な良質な仕事を、ボリュームにおいてもこなす中からしか、練達な職能を獲得することはできないということは1つの真理であろう。
がんばれ ! 若い職人。
未来を獲得するために、とにかく、良い仕事で、数をこなすこと。

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