工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

“安物買いの銭失い”になる前に(ネットショッピング詐欺)

2018年、本年も変わらずにお付き合いいただきたいと思います。

突然ですが、皆さんは業務上の資材や工具の調達などで詐欺に遭ったことはありませんか。

詐欺という犯罪は、窃盗などと較べれば高度で知的なな犯罪態様ですので、これに引っ掛かるというのは被害者がドジだったということで自分を責めるということにもなり、失った金品の価値よりむしろこの精神的なダメージの方が大きいということでもあります。

私も人後に落ちず?お人好しではあるのですが、買い物ではこれまで詐欺に遭うことはありませんでした。こう見えても結構慎重ですから・・・苦笑。

今日はそんな慎重さから詐欺の被害を免れたお話し、海外メーカーの高額電動工具購入の際の詐欺サイトへの警鐘です。

Lamello《Zeta P2》が欲しいなぁ、でもめっちゃ高いし・・・

まず、事の経緯から・・・。
昨年秋、ボリュームのあるキャビネットの仕事を請け、あまり余裕の無い納期の問題もあり、合理的な加工が要求される状況下、これを補うべくスイス・Lamello社の《Zeta P2》の導入を考え、購入の検討に入ったのです。

Lamello社の商品については海外電動工具の販売で良く知られるT社をはじめ、いくつかの国内販売店での取り扱いがあります。
これらは「談合」ではあるまいに、価格設定は完全な横並びのようで選択肢が限られています。

Festool社やDewalt社のマシン導入と同様に、米国の販売店からの購入を有力な選択肢にすべきところですが、調べてみますと、このLamello社のマシンに関してはusa Amazonも含め、国内販売店との価格差はさほどではなく、この選択の優位性は無いと判断。[1]

そこでネットサーフィンで探し回ると、出てくるわけですよ。国内取扱店の標準的価格設定の〈35%OFF〉という販売サイトが、しかもいくつも・・・(Top画像はその事例)。

本体だけでも、80,000円も割安とは・・・、胸は高鳴り、この販売店を前提に、関連資材も同一の販売店からとピックアップし、バスケットに投入。

ただ、この店舗のオンライン上ではある肝心のオプションがリストされておらず、そこで取り寄せも含め対応してもらえないかを確認するため、この販売会社に電話しました。

ところが、このオンラインショップのWebサイトは表記された会社とは無関係な悪意のある人物による改竄であることが判明したというわけです。

冷静にサイトを読み込む

そこで、確かにサイトを詳しく調べれば、いくつかの疑念がもたげてくるわけです。

それらは詐欺商法と確定させるに十分な複数の項目が確認され、冷や汗搔きつつ撤退することになったという次第。

まぁ、冷静に考えれば、この機種の欧米での価格を調べ、その差額が逆転している(本ページ最下段、[脚注]参照)ことで、あり得ない安価な設定であることなどはたちどころに判明するわけですが、そもそもこの商品ページを詳しく眺めれば詐欺サイトであることはいくつもの項目で推察できます。

それらの項目とは以下のようなものです。

  1. 一般的な販売価格に対し、異様な安価が設定されている
    (今回の場合、35%引き:これはメーカー希望価格の35%引き、と言うのでは無く、実勢価格の35%引き)
  2. 支払いのメニューには代引きのような後払いは無く、そのほとんどは銀行振り込みの前払いが条件
    (クレジット決済の有無は様々のようで、一律的なものは無い)
  3. 販売ポリシー等の記述の中に、日本語として明らかに間違った文字列がある
    (★安全のために秘密にする,E-MAIL里告知する。)などと言ったように(下画像)
  4. 販売サイトのURLの文字列が販売店ドメインとは明らかに異質、異様な表記になっている
  5. 問い合わせ先のメルアドのドメインも同様に、販売店と一致しない
  6. 問い合わせ先は住所はあるものの電話の表記が無い。メルアドだけしかない
    本来ネットショッピングでは法律上、以下のような項目が表示義務となっている
    ・会社名
    ・所在地
    ・電話番号
    ・責任者(代表者)の氏名
  7. 販売店の住所を地図サイトで検索しても、然るべく会社のような建物では無い場合がほとんど
    あるいは住所そのものが高速道路の直下とか、あり得ない表記もあります
  8. 対象となる商品が、商品ページのカテゴリーにリストされている取り扱い商品とジャンルが大きく異なる
  9. Webのソースを覗くと、段落ごとに簡体字が見いだせる場合がある
    下画像

これらのうち、複数の項目に適合するようであれば、たぶん詐欺サイトの疑いは濃厚と考えても良いでしょう。

webサイトのソース

webサイトのソース

ショッピングサイトの「支払い方法」記述

ショッピングサイトの「支払い方法」記述内容(部分)

詐欺の手口

察するに、その詐欺の手法は以下のようになるでしょうか。

  1. 詐欺当事者は、然るべく銀行口座を用意
  2. ユーザーが求める海外人気商品で、高額なものを探し、その商品のページ、さらにユーザーアクセスにおける必須のページ、例えば「問い合わせ」ページなども作成し、ユーザーに疑念を持たさない整合性を図ると共に、お買い物サイトとしてのシステムを構築
  3. 改竄すべき対象のWebサイトを探す
    様々な商品を扱い、その電動工具の取り扱いがあっても決して不思議では無いラインナップのところなど。
    セキュリィテーに脆弱なサイト、例えばURLに[https]ではなく[http]を使っているとか。
  4. このWebサイトを乗っ取り、詐欺の商品ページをこっそりと潜り込ませる
  5. これをGoogle検索エンジンに優先的に拾ってもらうべく、SEO対策を施す
  6. 検索でヒットさせ、「おぉ、この会社は他社より35%も安い、よし、ここにしよう!」とばかりに購入ボタンを押せば、購入商品の内容とともに、振り込み先銀行への前払いの告知のページに誘う
  7. 指定された口座に振り込むものの、待てど暮らせど商品は届かずじまい
  8. やがては、この商品サイトは抹消され、サイトにアクセスするも「404 not found」のページが虚しく表れるだけ

詐欺に掛からないためには

以下、こうした詐欺サイトに引っ掛からないためのくつかの留意事項を上げてみましょう。

  • 社会的に広く認知された信頼のおける店舗で買い求める
    【法律で表示義務がある項目】が正しく表記されているか
    ただAmazon、楽天など大手のネットショップであれば、一定の審査もあるでしょうから安心できるわけですが、必ずしもそうとばかりは言えず、詐欺店舗があるそうです。
  • 対象とする商品が、その店舗の商品のカテゴリーに合致するものであるかどうか
    Lamelloのような特殊な電動工具であるにもかかわらず、商品のラインアップが生活雑貨であったり、コスメ商品であったりと、いかにも不釣り合いところもたくさんあります。
    URLが《http://www.#####.co.jp/&&&&&》のような構成になっている場合、ドメインの直下の《http://www.#####.co.jp/》だけで確認しますと、対象の商品とは全く異質な正規の企業サイトがヒットすることも多く、この会社のwebサイトを改竄した疑いが濃厚と言えるでしょう。
  • 支払いのポリシー:クレジット決済の有無、代引きの有無の確認
    つまり銀行振り込みなど前払いしか無いような販売方式は疑うに十分
  • 販売価格が異様に安い場合も怪しいと視た方が良い
  • Web構築での一定の知識があれば、サイトのソースを覗き、改竄の有無を検証する
  • URLが[https]から始まるものであれば、とりあえず信頼がおけると考えて良いでしょう
  • そして、最終判断として、販売店に直接電話する

    もしその販売サイトに連絡先が無い場合、会社名で検索を掛け、ヒットすればその会社は存在するので、電話で確認することができますし、もし検索に掛からなければ、幽霊会社の可能性が大(このケースが多いようです)

私もそうでしたが、高額な買い物の場合、一般的な価格より安価な販売店がヒットすれば、ただそれだけで気分は高揚し、周囲への冷静な判断力が鈍る傾向がありますので、よくよく注意せねばいけません。


【詐欺防止のために寄与する参照サイト】
改竄されたオンラインショップの会社の注意を促すページの事例
消費者庁・悪質な海外ウェブサイト一覧

詐欺サイトと思われるサイトのURLを公開しようとも考えましたが、日々刻々変化していますので、ここでは記しません。
上述のチェック項目に留意すれば、さほど難しくも無く判別が付きますので、その必要性も無いでしょう。

「安物買いの銭失い」にならぬよう、賢い消費者でいたいものですね。

《関連すると思われる記事》


❖ 脚注
  1. ドイツamazon:EUR 1,550≒21万円、米国amazon: $1,695.00≒184,000円 []
                   
    
  • 工具は高いですから、数万円も違えば飛びついてしまいますよね。
    話の趣旨とは異なるのですが、お持ちのドミノではダメなのでしょうか?

    • moriさん、お初のコメントでしょうか。ようこそ、ですっ。

      以前、このBlogでも取り上げた記憶がありますが、このLamello Zeta という機種はDominoが市場に出回った数年後にリリースされています。
      ドイツと国境を挟むスイスの電動工具メーカーであるわけですが、ZetaはこのDominoの開発に刺激されての進化とも言えるように思います。

      具体的には、それぞれの解説ページを参照すればお分かり頂けますが、本質的にかなり違いがあります。
      ダボを埋けるための電動工具というところでは共通しますが、Dominoとは異なり、T字型のスロットを開口するところに大きな特徴があり、ロックされることでノックダウンに活用できるというものです。

      また、面白いことに、その後Festool社はDomino用に建築現場にも広く使えるような締め込み可能な金属製のチップを開発していますが、これもLamello Zetaに刺激を受けての開発とも言えなくも無いものですね。

      相互に切磋琢磨しながらの進化は目を見張るものがあります。
      moriさんも、お一つ如何ですか?

  • 私はAmazonで見事に引っかかりました。広く流通している毛玉取りでしたので、格安も不自然に思わず、不注意でした。でも、Amazonに速やかに全額補償いただきましたので助かりました。

    • Marronさん、Amazonの商品で詐欺とは??
      一体何を信じて良いやら・・・、

      マーケットプレイスからの出品だったのでしょうか。
      この場合、Amazonの保証が付くようですね。
      いずれにしても、出品者の評価などで信頼性を確認するなど、自己防衛に励むしかありませんね。

  • 不勉強ながら、返信いただいた後、lamelloの動画をyoutubeで見てみました。
    半月のチップがヌルリと穴に入っていく様に驚き、
    もはや木工の訓練なんてものは不要になる時代がそこまで来てるのではないかと思いました^^;

    • Dominoが開発された時には、その特異な駆動に大変驚き感嘆の声を上げたものですが、Zeta P2にもそれに近い感動がありましたね。
      高精度な接合が簡便かつ、確実に行われるという衝撃。
      moriさんの仰るような、伝統的な木工技法が不要になるということにはならないでしょうが、ある領域においては、大いに貢献するでしょうね。
      私見では、家具制作より、建築現場などでの効用が高いのではと思っています。

  • 私も、YouTubeで拝見しました。要するに、工具というより治具の延長なのですね。仰る通り、建築現場で家具工事ではなく大工工事で施工できる幅が広がるものだと感じました。

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