工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

アームチェア Lam 06 完成間近

Lam06“アームチェア Lam 06”が午前中に完成して、まずオイルフィニッシュの第1段階だが夕刻外に出して自然光で撮影。(座はこの後皮張りに)
「Lam」とはLaminate頭文字そのまま。
座枠、および畳摺り(接地部分)の馬蹄型部分をLaminate(薄い[3〜4mm]単板を何枚も積層すること)加工にて曲面板成形するデザインだ。
ただしアーム部分はLaminateではなく、左右のアーム+後部笠木接続部をFinger Joint(フィンガージョイント)にて接合している。(座枠の前部+馬蹄型部分もラミネートフィンガージョイント)
Finger Jointとはいっても専用機械を用いたものではなく、四軸ホゾ取り盤という汎用機の縦軸面取りカッター部にセットしてfinger成形を行うものだ。
したがって決してfingerは長いものではなく、山、谷の高度差12mmほど。
しかしこれでも十分に接合強度が確保されると考えて良いだろう。
これを用いずに同デザインで接合したいとなれば雇い核(やといざね)にて行うなどの手法があるだろうが、その接合強度、加工、および接着作業の容易さにおいて残念ながらはるかにFinger Jointに劣るものでしかない。
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うちでは決してキャビネットの量産などしているわけではないが、しかし「ホゾ取り盤」を導入しているという理由はこうしたところにもある。
つまり椅子などにおいて多用される複雑なジョイント部を有するほぞ加工においては一般の「丸鋸傾斜盤」では作業性が劣り難易度も高くなるところだが、この「ホゾ取り盤」によれば、適切な治具を用いることでかなりの程度で高精度にほぞ加工が可能になる。また今回紹介のようなFinger Jointにも対応できるという汎用性もあるのだ。
こうした機械は中古のものを求めるならば数10万円ほどで導入できるものであり、加工システム、作業工程をより高度化したいとするならば大いに導入を検討されるべきものだろう。
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■ 過去関連記事(曲面を持つ板の木取り2題

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  • 加工自由度の低い木材に曲面を取り入れることはなかなか
    たいへんですね。
    でも、それによってデザインの巾がだいぶ広がることも事実
    です。
    私も熊本の鯛工房にお邪魔して曲げ木加工を教えていただき
    自分の工房でも試してみました。
    かなり太い材も曲げることができますが曲率が一定しなかったりスプリングバックが発生したりしました。曲げ木はウィンザーチェアのような柔軟性のあるというかファジーなデザインには向いていると思います。
    ラミネートも試してみたいです。前にご紹介したThomas MoserのContinuous Arm ChairのArmもラミネート構造ですが
    3次元に加工されています。3次元ですと型の製作などの問題で多品種少量生産の個人工房には向かないかもしれませね。
    でも私としては興味深いものがあります。
    artisanさんのように安定した製品を作り出すのはたいへんだろうなというのが実感です。

  • ラミネート構造は曲げ木に較べ、かなり高い精度で成形できるところに魅力があるように思います。
    3次元のラミネートということでは「天童木工」が群を抜いて高品質なものを制作していますね。
    個人の木工家では Sam Maloof のRocking ChairのRocker(橇部分)が印象的です。
    この椅子では馬蹄型というデザインイメージがまずありまして、これを叶えるための技法として最も適切なものがラミネートと云うことにです。
    制作のポイントは木取り(柾目)、型板(雄型、雌型)、およびボンドの品種、といったところでしょうか。
    これさえクリアできれば、歩留まりも 80〜90% ほどです。
    *記事中、記述間違いがありました。このコメントの場でお詫びしまして訂正させていただきました。

  • ご教授ありがとうございます。
    artisanさんが「職業としての家具作りについて(8)」の中で述べられている「彫塑的デザインを含むフォルム」としてSam Maloofの椅子が挙げられるのではないかと思いますがいかがでしょうか?
    私は実物は見たことがないのですが書籍等によれば削り出しの椅子と呼ばれるように流れるような曲面でありながらきっちりした稜線が残されているところなどは真似のできない所です。
    日本人の私としては構造のほとんどが木ねじやボルトで固定されているのには多少違和感がありますが。
    artisanさんの作品の中にもSam Maloofの影響を受けたと思われる物がありますが、いかがですか?

  • オット、自己暴露してしまったような コメントへの対応だったかな。
    >Sam Maloofの影響を受けたと思われる物がありますが、
    肯定も否定もいたしません(笑)
    >木ねじやボルトで固定されている
    確かにもっとホゾを多用することで、綺麗な納まりになるのに、という箇所は随所に見られますが、一方いくつかの仕口、納まりには取り入れたいと思うところもあります。

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