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FIFA W杯 日本代表Best16が意味するもの

FIFA W杯南アフリカ大会、日本代表チーム、予選リーグを2位で通過し、決勝Tへ進出したもののその第1戦で敗退。
延長戦を含め0:0という大接戦を演じるも、PK戦で敗れる。(FIFA公式サイト
南アフリカ本大会へ向かうまでは予選リーグで1つの勝利をもぎ取ることすら困難と思われていただけに、この結果は「善戦むなしく‥‥」、という枕詞を付け「よくぞここまで勝ち抜いた !」と高く評価されるだろう。
FIFA W杯、南アフリカの大地に間違いなく一陣の風を吹き込んだことは誇りにすべき。
決勝T・第1戦、何よりもPK戦で敗れるというのはサッカーそのものの勝敗を決定づけるものでは、恐らくは無い。
駒野はこれまでの国際試合でのPK成功率は高く、監督もそれを評価しての3番目での起用だったはず。
これをゴールポスト枠に当てて外してしまったのは、ほとんど時の運としか言いようがない。
むしろ考えねばならないのは0:0という結果の方。
PK戦に持ち込む前に、がむしゃらなまでに得点をもぎとらねばならなかった。

サッカーボール1

日本代表チームにはゴールチャンスが無かったわけではない。


後半途中で交代させられた松井だが、彼は右サイドからの美しいクロスパスでチャンスを作り(40分、本田がその後シュート)、またゴールポストに弾かれたものの貪欲なシュート(21分)でチームを鼓舞してくれていたし、厳しいマークにも屈せず自身に課せられた期待を背負い、前へ前へと突き進んでいた本田への評価はデンマーク戦の戦果を貶めるものではなかったと思う。
しかし残念だが全体見通して、これではパラグアイの守りを突き破り、ゴールへと繋げられるだろうといった観測が立つほどの優位性は無かったな、というのがボクの実感。
ディフェンス陣は良くやったと思う。何と言っても0封だから。
川島はすばらしいGKだ。欧州クラブチームからオファーが掛かっても不思議ではないように思うほどに。
もちろん身体を張ってパラグアイFWの自由を奪ってくれた中澤、空中戦では決して負けてはいなかった田中マルクス闘莉王。
本大会通してここまで勝ち進んできた勝因の大きなものが彼らGKおよびDFたちの勇気と献身的戦いに他ならないだろう。
しかし、敗れてしまった。
やはり勝てなかったのは、戦略、戦術面において、あるいは総合的な力においてBest 8 の栄誉に浴するだけのものが日本代表チームには無かったということになる。
布陣は予選リーグと同じだった。
つまり予選リーグ第3戦の直接FK2本の成功体験を過大に評価し、ここに賭けてしまったのかも知れないが、同じシチュエーションが決勝Tでのパラグアイ戦に訪れなければ「勝ち」の法則からは見放されてしまう運命であったと言うことに過ぎない。
決勝Tは予選リーグ戦とは異なり、目の前のその1つの試合に勝たなければ次はない。
つまり布陣を含め、その戦略はもっともっとアグレッシブなものでなければ突破することなどできなかった。
パラグアイは日本のフリーキックを怖れ、当然にも自陣内、ペナルティーエリア近くでの反則を招くような強いボデーコンタクトは抑制したがため、遠藤、本田に与えられたFKは大きな角度と距離を持ったものでしかなかったという結果だった。
また選手交代でのリズムの転換は重要だが、この試合でのFW岡崎慎司、玉田圭司、MF中村憲剛の投入は遅きに過ぎた。
短期決戦においては成功体験も無視できないだろうから、最初からの投入は無謀としても、45分ハーフ後、一気に投入していれば、本田の疲れを考慮すれば、もっと効果的だったろう。
森本については朝日新聞のベタ記事では、自分を使わなかった監督批判とも取られかねないコメントが伝えられているが、FWをFWとして機能させねば勝てる試合ではなかったということだろう。
未知数の森本への期待はおかしいと言われるかも知れない。
しかしリスクを負わずして、今の日本チームにアートとしてのサッカーを展開できるはずもないというのがボクの理解だし、多くの専門家も指摘するところではないだろうか。
例えPKで勝ち進んでいたとしても、同じ布陣では次の試合では良い戦い方はできなかったと思う。
予選リーグが思いの外、良い結果が出たので、監督としてはその経験則に安住する道を選んだのかも知れないが、これでは日本のサッカーの未来へと繋がる成果とはならなかったのではと、森本とともに、あるいは自分を責めるしかない駒野の悲運とともに、ボクも哀しみの涙に沈むしかない。

サッカーボール1

今日の関空での凱旋を含め、多くの日本の人々は、歓呼の声で迎えている。ボクも同様にこれに並びたい。しかしそれだけでは次には繋がらないというのが厳しい国際サッカーの舞台だろう。
ボクは何も岡田監督を責めようと言うのではない。
彼もまた日本のサッカーの歴史、伝統、あるいは日本人の心性を背景とした采配と選手管理に長け、また同時にその限界をも知る人だろうから。
Best16という結果が全てを物語っているように思う。素晴らしい戦績であると同時に、それ以下でもそれ以上でも無かったということだろう。
このBest 16 から先の夢を手元にたぐり寄せるためには、経験豊かなサッカー人で、オシムのような思慮深く、哲学的な思考をも併せ持ち、また日本サッカーを良く知る名将を探しだし、就任してもらうところからリスタートだね。
4年という時間は短い。しかし本田川島長谷部森本内田らはまだまだ成長してくれるはずだ。
南アフリカでは演ずることができなかったファンタスティックでアートな新しいサッカーを磨き上げてくれないものだろうか。
新しい真の意味でのFWよ出でよ !
ぜひ、このFIFA W杯2010 南アフリカの大地に染みこんだ日本代表チームの汗と涙と歓喜の声を、次へと実らせてもらおう。
なお、FIFA W杯2010 南アフリカ大会はいよいよ準々決勝へと駒が進む。
ドイツvsアルゼンチン戦(07/03 23:00〜)、オランダvsブラジル戦(07/02 23:00〜)は実質、決勝戦のような組み合わせで目が離せない。


ところで、このところ連日のようにメディアを賑わせている大相撲について一言だけ言わせて欲しい。
紙幅が尽きたので(Blogではそんな言い訳はない?)また次回に回そう。
結論だけ先に明かせば、近代国家であったはずの日本にあって「大相撲」の存在は異界だということ。
あるいは大相撲において今さら暴力団とのハネムーンを知らなかったなどとは言わせないぜ、ということになるかな。
片腹痛いぜよ‥‥ TV画面の向こうの相撲評論家さん ‥‥。

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