工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

木工家のギルド的紐帯への憧憬

信州木工会
谷進一郎さんを初めとする信州木工会の面々が「工房探訪」ということではるばると訪ねてくれた。
前日から東海地域を訪ね歩いての来訪。
名古屋・宮本木工教室、蒲郡・井崎さんの工房、そして静岡へと。
ボクが松本在住の頃より活発に活動していた組織で、松本市内での展示会を通してその動向を注視していたが、その後事務局、メンバーの変遷などもあっただろうし、活動内容の変移もあったかもしれない。
事実、10名近い訪問者で知己の方は谷さんを除けば一人だけで、その組織構成員の大きさもあるのだろうけれど、ボクの「信州が第2の故郷」という思いも、近くはない彼我の距離と、時間の経過というものの容赦ない断絶というものを思い知らされるものであった。
しかしなお、国内広しといえど、信州木工会のようなギルド的組織というものはあまり無いのではないだろうか。
これは単にその地域に構成員が多いからというものでもなければ、産地形成の土壌があったからというものでもないだけに、よりその組織の意味するところは大きいものがあるように感じ、このエントリーのタイトルのように同じ木工家として憧憬を覚えるものになっている。
会の活動内容はそのWebサイトにいけば詳細に触れることもできるはずだが、単なる親睦団体というものではなく、技術交流、研究発表、合同展示会の開催、など木工文化の担い手として広く社会的に開かれた多彩な活動を展開している。
こうした組織というもののその多くは圧力団体であったり、行政からカネをせしめるものであったりと経済的思惑での繋がりという性格を色濃くにじませるものであるだろうが、この会はそうした卑俗的なものとはほど遠い、純朴というか、木工こそ我が人生 ! 、という者達の集まりなので、時代と共にその活動内容での変遷はあっただろうけれど、継続的に息の長い、かつ止むことのない活発な活動を継続しているという希有な組織なのではないだろうか。
さて、うちでの交流はさほどの時間的な配分もなかったので、信州の木工家たちの制作システムと、うちのスタイルの違いを重点的にお話しさせていただき、少しでも制作活動での示唆を与えられればと言う観点から進めさせていただいた。
時間的な制約もあり、やや一方的な解説になってしまった嫌いがあったが、この記事に触れていただいて疑問、ご意見などあればぜひ補足したいと思うのでメールなり、コメントなりでアクセスしていただければ大変ありがたい。
どうか今後も木工界の明日への道を展望する先駆けとして会の発展を祈念したいと思う。
なお、今回のコーディネート、世話役を担っていただいた谷進一郎さんにあらためてその労をねぎらいたいと思う。ありがとうございました。
信州木工会

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  • 長野の谷です。
    先日はお忙しいところ、時間をさいて歓待していただきありがとうございました。
    信州木工会の活動として、周辺県の木工房や木工関連施設などを見学する研修旅行を毎年秋に行ってきましたが、お陰様で今回も充実した成果をえることができました。
    過去の内容は、会のサイトでもご覧いただけます。
    見学した木工房は3者3様で、興味深いものでした。
    宮本工房は、建築家の設計による素晴しい空間に、ベーシックな木工機械とワークベンチが適格にレイアウトしてあって、木工家垂涎の環境でした。
    木工教室として成り立つのは、名古屋郊外という立地もあるでしょうが、こんな素敵な工房で、研究熱心で面倒見の良い宮本さんに、木工を教えてもらえる方は幸せです。
    順番待ち状態でも、なかなか空きができないのも頷けます。
    蒲郡の井崎さんとは、全国にまだ木工房の少ない30年も前からの付き合いで、つい先日まで東京で井崎さんも一緒に開催していた「木の家具展」も25年目となってしまいました。
    工房は木工小物を量産していた頃の名残で、工房とは呼べないような大きさで、初めて見た人達は、「工房塩津村」という工房の名前で想像していた姿とのギャップがあったようです。
    全国各地でで展覧会をされていますが、その仕事は木工家具に止まらず、木彫から絵画、建築と広がり、新しい広いギャラリーに展示されていました。
    タイムリーにも25日に発売される「季刊銀花」で特集されるので、井崎ワールドの一端をご覧いただけます。
    蒲郡では、引き続いて、井崎さんの工房スタッフや元スタッフ、近隣の木工家数名に宮本さんも加えて、宴会で交流を深めることができました。
    杉山さんの工房は、個人工房としては木工機械が充実していますが、ただ揃えるだけでなく、精度を高め、積極的に活用することで、時間を短縮し、適切に手仕事を加えることで、展覧会の来場者などに、これだけの仕事がしてあって、この価格と言われる、作品群を生み出しているのかと刮目いたしました。
    山に暮らして、スローライフといいながら、仕事もスローになって、無垢の手づくりというだけで、魅力の乏しい家具を高価にして、それが売れないと嘆く前に、もっとやることをやらないと、いけないと思わせられました。
    工房紹介の資料をまとめ、作業の実演までしていただき、加えて「薮蕎麦宮本」での繊細でいながら力強い新そばの昼食の手配や、静岡市の芹沢美術館まで道案内を兼ねた同道まで、すっかりお世話になり、感謝しております。
    計画段階では工房にはあまり長い時間お邪魔してはいけないと思い、時間配分をしましたが、結果的にはそれぞれもう少し時間が欲しかった気がします。
    今回の訪問が、今後の交流の切っ掛けになれば、良いと思いますので、よろしくお願いいたします。

  • 谷進一郎 さま、丁寧なコメント感謝します。
    訪れた工房、それぞれでの交流が良く伺えるものになっていますね。
    こうした木工家どおしの交流はとても有益ですので、今後も広く、深く、展開してください。
    うちの制作スタイル紹介では反省点も多々ありましたが、皆さんの熱心な眼差しに支えられ、何らかの示唆を与えられたとすればありがたいことです。

  • 紅葉・初雪 信州の温泉宿

    もう北アルプスは雪をかぶっています。紅葉に初雪・・これが信州の冬の始まりです。信州には、文豪や歴史上の人物が泊まった宿もあります。「あるぺんふらう 信州の宿」で信州の温泉宿をチェックしました。1000以上の宿を写真で選んで予約サイトも選べます。

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