工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

鰻はお好きですか(うなぎの「石橋」)

この時季、梅雨明け10日、どこも猛暑だろうけれど、大阪もメチャ暑。
そこで暑気払いは鰻の蒲焼きだ。
普段の外食で鰻などは、なかなかボクの不如意な懐では口に入らない。
しかし食べるからには美味いところでいきたいもの。
静岡市内には「うなぎ 石橋」という店がある。
昔から外食での鰻の蒲焼きはここでだけ。
浜松、吉田と養殖業は全国的にも知られた地域なので、良い鰻屋がたくさんあってもおかしくはないのだが、残念ながら意外とそうでもないのだ。
さて「石橋」の鰻。
初めてここの暖簾をくぐると、皆さん驚かれると思う。
まず焼き方であるが、白焼き、蒸す、などという工程はなし。その場でさばき、いきなり本焼きだ。
カウンター越しにその一部始終が覗き見られるのでウソではない。大きなたらいからつまみ出した鰻を専用の釘で頭を打ち付け、見事な包丁さばきで見る見る開かれる。
その後は串に刺し、隣の赤々と燃えたぎった備長炭のコンロの上でで何度も何度もひっくりかえされ、途中からは秘伝のたれに漬け込まれ焼き上げる。
そのためなのか表面はしっかりと香ばしく焼かれ、中はふくよかにほどよく柔らかく熱が通っている。やや甘めなのかなと思われるたれも鰻本来の味を損なうことなくバランスが取れている。
さらにここではお頭付きの1本焼きだ。織部のお皿から明らかにはみだしてしまうので、尾っぽの方は折り畳まれてしまっている。
さらに特徴的なのは、松本民芸のテーブル、椅子に腰掛ければ、黙っていてもしばらくすると曲げわっぱごはんと肝吸い椀、お香が運ばれてきて、数分後にははみ出し鰻が運ばれてくる。
そうなのだ、メニューは単品、この1本焼きしか無い。他にはアルコール、骨の唐揚げがある程度。潔いじゃないの。あれこれ言うな、黙って待ってろ、ってなもんだ。
ぜひ静岡に立ち寄る機会があったらティスティングしてもらいたい。

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名栗(ナグリ)を君は知っているか。

ナグリ2
今日も展示会場に近隣で木工関連の業務をしてる方々にお越し頂いた。制約のある会員対象とする展示会であったので、ほとんど知人にも広報していなかったけれど、陣中見舞いに来ていただける。ありがたい話だ。
その一人、以前もこのブログで紹介させていただいた芦屋のギャラリー「J・クオリア」のオーナーがWeb世界では著名なKAKUさんなどと連れ添い来ていただき、大阪市内のとある木の仕事のところへと誘って頂いた。
Top写真はそのひとこま。
ご存じのようにこの材は栗にナグリ(名栗)加工をしたもので、ちょっと見かけないノミ状のものがあるが、これがナグリ加工を施すための道具だ。
「ナグリ」についてはいきなりア・プリオリに紹介するのは問題があるが、簡単に言えば、日本建築様式での化粧部位、床柱、濡れ縁などに不定型な削り痕を残し、独特のリズムを持ったテクスチャーを日本独特の美意識で尊ぶもののことを指す。
現在ではお茶室の床柱、濡れ縁、風雅な床の間、あるいはユニークな材料使いを好む店舗内装など、に用いられる。

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生きにくい時代の木工家という生業

木工家具の展示会での即売では、家具というものが持つ特有の属性(調度品、日本の貧困な住宅事情から置きたくとも置けない事情といったことなどの)に制約され、求める人との新たな「出会い」というものが重要な要素になる。
世には木工コレクターという人たちも希少ながら居る。
以前名古屋での展示会場でボクの作品を見初めてくれた初老の男性がいた。曰く、著名な木工家の名前を挙げながら「君のこの家具は私がコレクションしているものと較べ値段も桁が一つ少ないようなものだが、ちょっとおもしろいから買っといてやるわ・・・」などと。
詳しくお話しさせてもらうと、木工のコレクションのために大きな蔵のような建物があるとのこと。
他にも、とある古刹の住職の庫裡に案内され木工、陶器などのコレクションに驚かされたこともあった。
このようなありがたい客層があることも一方の真実だが、しかし一般には、調度品として事足りていれば例え気に入ったものがあったとしても購買衝動は抑えられてしまう。
そのためには、常に新たな顧客との出会いというものが求められるという宿命にあるのが木工家だ。
展示会の実施、それへ向けた広報、購買意欲を持った客層の綿密な管理と情報提供。
この時代、そうした様々な販売戦略も作家自身が積極的にやらなければならないというめんどうな時代のようだ。作家も制作だけやっていれば良いものではなく、まさに総合力が問われるという恐ろしい時代に生きているようなのだ。
ご覧のようにWebサイトの管理運営、Blogの管理運営もままならぬボクなどにはその荷は大変重たく、足取りもフットワーク軽く、とはいかないのが実態。
今日もまた大阪在住の木工家とその生き方の困難性を分かち合い、明日への希望を見いだそうと意見交換したのだった。

大阪 梅田での個展と、男の配膳

東海地方も梅雨明けというニュース。降雨量も少なく経緯しているので渇水が心配だ。
今日は大阪梅田までのトラック搬送。真夏の太陽が降り注ぐ高速道を一路、西へ西へ。
3連休の最後の休日。途中豊田JCT中心にかなりの混雑。この道路は愛知万博へのアクセス道路のためなのであるからだけど、会期終了すればトヨタ製造拠点と積出港を結ぶ道路となるようだ。
木工家具展示会への搬送態勢は、いわばその度に引っ越ししているようなもの。
重量物もあったりするので、梱包、搬送はなかなかやっかいな問題。大きな個展で自車のキャパシティーを越えたりすれば運送手配することになるが、自車に積み込むことのできるキャパシティーだと、いつも自身が運ぶことにしている。
そのほうが安心なので、完全梱包態勢でなくとも凌げる。
傷の心配もなく軽く簡便にコンパクトに持ち運ぶことのできる染織業などであれば良かったのに、などといまさら悔いても仕方ない。
昨夜までの準備態勢も大変だった。ここ数日は半徹夜状態で、制作、書類の準備、関係先との調整等々での大童。
明日からの展示会ではこれまでの疲れを癒す日々に費やしたいと思うが、なかなかそうもいかず慣れない異郷でのホテル暮らしと接客。普段の制作の日々とは全く異なったリズム、環境での非日常が続く。
今回の梅田阪急での展示会は、阪急百貨店の「クリスタルサロン」会員対象のものなので、招待状を提示しないと入場できない。もし読者で観覧希望があれば事前にメールでもいただければ対応させていただきたいと思う。

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Google maps

Googleは昨日14日から、先に紹介したGooge Mapsの活用法として地図情報検索「Googleローカル」と地域情報検索サービス「Googleマップ」を提供し始めた。
これまでは衛星写真での詳細地図の提供のみであったが、ゼンリンの地図データとの提携で米本国なみのサービス内容に近づきつつあるようだ。
今後さらに機能強化が図られていくようだ。
九州南部が梅雨明けとのことだが、「当地も実は梅雨が明けていた模様△○…」などと事後確認の梅雨明け宣言が出そうな週間予報。(台風5号のコース如何か)
車で八百屋前の街道を抜けようとしたら、何やら「おいで、おいで」するものあり。誘われて買い求め今年初体験。スイカです。
夏は枝豆にビール、そしてスイカですな

午睡の快楽

タイトルはいかにも昼行灯のごとき日常を暴露するようだが、全く逆の話し。
展示会を直前に控えて、目の回る忙しさ。
ここ10日ほど睡眠時間を削っての制作活動。残り数日老体にむち打っての奮闘が要求される。
午睡というのは、つまり昼食後の食休みのスタイルのことで、右腹を下にしてわずか10分ほどうたたねすることで、疲れた身体にもわずかに精気が戻り、午後の仕事に入れるということ。
普段昼食後には新聞のチェック、書類整理、ネットサーフィンなどで費やすが、オーバーワークが続くとその気は失せる。ひたすら疲れを癒すことに専念する。
父は現在のボクの年齢で死去しているが、それから考えてみればこれからの人生はもうけもの、というどこか冷めた意識も無くはなく、あまり無理せずに「余禄」を過ごしたいものだとも思うが、残念ながら仕事の現状を考えるとそうもいかない。
性格もあろうがあくせく、じたばた、「達観」などとは縁遠い日常には変わりはない。
この年になっても残念ながら業務に余裕など無いが、しかし長じて若い頃に較べれば仕事の勘所は良くなってきてるし、修練というものを重ねてきた実感も多少はある。
技能の上達と体力は反比例するのが常なのだろうが、何とか抗ってもうしばらくは「身体がね〜…」などと弱気になることのなきよう意欲を持ち続けよう。
先日、ある家具屋にお邪魔したとき、生年が一回り上のボクの親方の話題になり、現在もなお元気に地域では筆頭の稼ぎ頭の職人だとのことで、感心ひとしきりだった。このところさっぱり無沙汰しちゃってるので、展示会など終えたら酒でもぶら下げてあいさつに伺おう。

ひまわり畑

ひまわり
工房近くの高速道路ICに続く街道筋に咲くひまわり。
排気ガスに負けずにけなげに咲き誇っている。
ひまわり畑とは言ってもとても小規模。これでも油脂を絞るのだろうか。
むしろ街道筋の美観に寄与している感じだ。
梅雨時とはいえ今日は真夏の太陽が顔を出し、見る見る寒暖計の数値があがる。
真夏の太陽にもっともふさわしい花ですな。
ひまわりの花の向きは太陽の動きに合わせ向きを変える、といわれるが「向日葵」という名称からしてその意そのもの。しかしどうだろうか、やはり東南方向に固定しているようだ。
(撮影は今日、午後1時。やや太陽が西に傾きつつあり、逆光になっている)
映画「ひまわり」(1970 伊映画 ヴィットリオ・デ・シーカ)のタイトルバックには哀愁に満ちたサウンドトラックをバックに果てることのないひまわり畑が延々と続いていたっけ。いつになく抑制的な演技で哀しみを誘ったソフィア・ローレンも美しかったが、やはり印象的だったのがタイトルバックの映像だった。

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モエレ沼公園とイサム・ノグチ

モエレ公園
札幌市で建設が進められていたモエレ沼公園の全施設が完成したようだ。
1988年に同所を訪れたイサム・ノグチにより基本設計がなされたものだが(同年に死去。享年84才)、このほど最後の施設中央噴水「海の噴水」の通水式が7月1日に執り行われグランドオープンを迎えた。
かの彫刻家イサム・ノグチの基本設計によるもので、ずっと気になってはいたのだが「とうとう完成したのか…」という感慨を覚える。
いわば公園全体を一つの彫刻に見立てた彼の最大の作品といえるだろう。
写真のガラスのピラミッド「HIDAMARI」は園の中央施設
ぜひ早く訪ねてこの眼で見たい。モエレの山への長〜い階段を上がり頂上から全景を見てみたい。
8月末まで同市「札幌芸術の森美術館」にて「イサム・ノグチ展」も開催されているようだ。
この夏はサッポロで、ジンギスカンだ〜、いや、イサム・ノグチで決まりだ。
仕事ほったらかして行きたい。
■ イサム・ノグチ (Wiki
■ モエレ沼公園園長の山本氏が語る構想当時のイサム・ノグチ(参照
■ イサム・ノグチ庭園美術館(牟礼町)(参照

ルーターマシーンについて(その3)

本稿初回時に掲載した写真の刃物について触れてなかった。
いずれもストレート刃だが、それぞれ径が異なるものだが、共通することは替え刃であるということ。
数十年前まではこうしたルータービットもSKH(高速度鋼)が主流だったが、今ではそのほとんどは超鋼合金(UHなどと表示されることもある)、カーバイドチップだ。もっと昔は炭素工具鋼が使われていただろう。
職人によっては「ハイス(高速度鋼の通称)の方が良い、自分で研磨できるし、良く切れる」などと言う。そのような性格の差異があることは確か。
ちょっと余談だが、かなり以前から機械刃物のほとんど全てを超鋼に替えてる。
手押し鉋盤、自動一面鉋盤などは、まだまだ一般には高速度鋼が多く使われていると思われるが、使い勝手としては圧倒的に超鋼の方が刃持ちが良い。刃こぼれしにくい。
価格は倍以上するし、研磨コストも同様に高い。しかしそれ以上の価値を認めることが出来る。

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ラーメン1食の関係性

今日、当地ははうだるような暑さだった。
街に所用で出掛けたついでに床屋に寄ってさっぱりしてきた。
「真夏バージョンでお願いしま〜す」とバーバーチェアに腰掛けた。
チョウ短くカット。
今日のところもそうだが、昨年から低料金の店舗に通うようになった。1,900円。
それまでは居住地域の個人の床屋だった。10年以上の付き合い。料金3,900円。
あることをきっかけとして替えちゃった。
ここで記述するようなたいした理由でもないのだが、サービスが悪くなってきていたということ。
そもそも予約制で事前に電話を入れて時間を決めるので、いつもその時間に行けばすぐ始めてくれた。しかしある時、その時間にいってもずいぶんと待たされ、それについては何らの説明もない。これが2度続いた。
この店舗オープン仕立ての頃はとてもサービスも良く、内容も充実していた。これが徐々に慣れてきたのか、1つ、また1つと簡略化されるようになってきていた。
ここが潮時かと10数年の付き合いをばっさりとやめた。

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