工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

低床のカップボード & オーディオボード(その2)

この2連のキャビネット、取り立てて珍しいものでもありませんが、あえて紹介させていただくとすれば、開き扉の奥にある、抽斗収納の方式あたりでしょうか。

和箪笥の衣装盆なども、観音開きの扉の奥に収納されるところから、このお盆の収納には扉の厚み分をふかすため、別途、帆立を内部に建て込むことになります。

今回の場合も、基本、同様の構造が求められるところですが、和箪笥のように、衣装盆の側板の幅分を欠き取り、この溝を衣装盆の側板全体が摺動するという方式では無く、吊り桟方式で納める構造にしています。

これは木部の経年変化による摺動への障害を軽減させるため。
本体と、トレーの接触部分を機能性を満たしつつも、極小とすることで、木部の変形から摺動への影響を断ち切るための考え方ということです。

具体的には、解説画像のようなものです。
以下、説明します。

  1. ふかし構造のため、扉の厚み+α の〈内部帆立柱〉を側板(帆立)に活けます(メチボソの大入れ)
  2. スリ桟制作:この〈内部帆立柱〉の厚みに適合させたスリ桟を作ります。
    1. スリ桟には、スリ残本体の他、煽り止め、および、反対側には側板本体に活けるためのアリ桟を設けます。
    2. 煽り止めですが、スリ残の上下両側に設けることはせず、片側だけにします。
    3. 本体側板へはアリ桟で咬ましますが、最先端のスリ桟部位を〈内部帆立柱〉に乗せ、ここを木ネジにて固定させ、位置を確定させます。この固定は、トレー収納時の奥行きを規定づけるものですので、本数分、統一した位置設定がキモ
    4. スリ残の材種はカバ材の四方柾材を用います。カバ材は散孔材、かつ硬質で、耐摩耗性、耐久性などの条件から最適。

煽り止めは片側だけとしましたが、これはトレーの摺動における摩擦を軽減させるための考え方です。
片側さえあれば、煽り止めの効果は満たされ、余分な摩擦を軽減させることに繫がります。

また、このアリ桟方式ですが、側板(帆立)の反りを防止させる機能性を併せ持つことも付言しておきましょう。
(アリってのは、万能性を持つ仕口で、アッパレですよね)


なお、こうした複数本のスリ残の位置設定は慎重に行わねばなりませんが、直定規で幅を決め、曲尺毛引き、硬質鉛筆、白書(シラガキ)などで精確に墨付けするということになりますが、
より精度を高め、かつ複数枚に同一の墨付けを追求することが可能な、幅を決める板を丸鋸盤で正確無比に作っておくことがお薦めです。

また、今回のようなアリ䙁の場合はハンドルーターで彫り込むことになりますが、この場合の位置決めはルーターベースの外径から算出されますが、この外径を勘案した専用の板をあらかじめ作ることで、より精確な加工が可能となります。
またこの場合、墨付けなどは無用となります。

またこうした位置制御板を用いたハンドルーター加工ですが、プレ加工として、ハンドルーター切削工程での負荷を軽減させるため、あらかじめ丸鋸盤などで、溝を穿っていくプレカットは大変有用です。
この場合も、墨付け云々より、丸鋸盤のフェンス位置こそが大切で、複数本でも同一の幅で、かつ平行性を保持した溝加工が可能となるということです。

因みに、スリ残には摺動性をより高めるため、あらかじめ蠟を塗っておくとか、塗装システムのある工房であれば、ウレタンを一拭き塗っておくと良いですね。

私は〈手作り、なんちゃら〉などと言った呼称はいたしませんが、こうした加工における正確無比な位置決めというものは、上述の通り、丸鋸盤でのジグ作成などの工業生産的な思考を追求することがとても大切な考え方になってきます。

画像の他の加工の、補助的な解説

無垢板の帆立と天板の接合について

無垢板の帆立と天板の接合ですが、うちではいろいろな手法を用いています。
天秤差しによる接合がもっとも一般的ですが、今回は、双方を留めでカットし、ここにLamelloの
Zeta P2 という2枚の部材双方を引き寄せつつ固定させる雇い核を用いています。
このZeta P2で用いる雇い核、クラメックスは鉄より強度があるとされる、グラスファイバー樹脂を用いており、堅牢度への信頼は高いものがあります。

地板について

帆立、天板が無垢材ですので、地板も同様に無垢材を用い、完全にボンドも用いて接着させます。
仕口ですが、前後は2枚ホゾで加工し、中央部は角ノミ盤でのアプローチは困難でもあり、Festool、ドミノを用います。

前後も含め、全てドミノにしても良いと言う考え方もあるかも知れませんが、位置設定の精度、堅牢度などから、角ノミでアプローチできる範囲では、伝統的なホゾ加工が優位性を持つことは言うまでもありません。

なお、2分の大入れも用いています。
これは他でも無く、地板の平滑性を担保させるための簡便で有力な手法になります。
余分な説明になりますが、木の繊維配列の特性から、繊維方向と直交する側に小孔を穿ちますが、この方向の経年による歪み、変形は、基本無視できるからです。

また、この小孔加工はオスメスともに丸鋸盤で容易に加工できますしね。

以上、カップボード & オーディオボードの紹介でした。

hr

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  • F1 を越えるクオリティー もう見る機会はないでしょう。寝かせはどのくらいですか。
    制作時の小口の画像がありますか ?

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