工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

ウォールナットの製材作業

製材
週末は原木の製材に忙しかった。
ウォールナットを3本ほどと、シナノキ(木偏に品)を少し。
今回は框ものなどに手当するために太い丸太が必要と言うわけでもなかったが、いずれも50〜65cmほどの太さのもの。
テーブル天板用も含め、18〜60mm間のいくつかのサイズのものに製材する。
なかなか良材が獲れた。
製材の途中、ちょっとしたトラブルがあった。
製材では決してめずらしいものではないのだが、突然切れ味が停まるという事態が起きた。帯ノコの刃が欠けたのだ。
(大昔こことは別の製材所でのこと、製材職人が作業途中、こちらを向いて必死の形相で自分の開けた口を指さすのだ、フム?。要するに刃が欠けたという符丁だね。最初はそんなこと知らなかったとは云え、大型の帯ノコがまき散らす大騒音の中ではこうした符丁がお似合いだ)
その個所(枝分かれの節の部分)を見ればどうも石を噛んでいたと考えられる痕跡があり、これを排除して鋸刃を交換して再度製材を始めたが、またまた同じところで切れ味が落ちる。これを何と3度繰り返し、結局節の内部に見つけることの出来ない石があるのだろうと判断し、その部分をチェーンソーではつり何とか乗り切った。
こうしたことは過去何度も経験している。
その原因のほとんどは石。
しかしウォールナットという樹種で特徴的な障害と云えば鉄砲の弾、ライフルの弾と思しき、鉛の玉が出てくるということがあるんだね。
これは銃の試し打ちにウォールナットの樹を的にした、ということが考えられるだろうし、またハンティングの時の流れ弾、ということもあるのだろう。
さて製材作業という工程は我々木工家にとってとても大切なものだ。これは単にマテリアルとしての素材を確保するというに留まらず、制作する作品の品質を大きく規定するものだからだが、数10年前ならさほど気合いを入れなくとも入手できたものも、昨今では相当の情報源と、資力を持たなければ難しくなってきているという市況があり、ますます重要なものになってきている。
そこのお若い木工家のあなた、コンピューターを新規更新する余裕があるなら材木屋に走ろう。
なお本来であれば製材も冬季のうちにやっておきたいところだ。梅雨から暑い季節に向かうこの時期は決して好ましいものではない。(乾燥スケジュールから考え望ましくない)
しかし次の冬を待っていては良材が入手できるかどうかも分からないので仕方がないだろう。
今週はこの製材後の搬送を待って桟積み作業だ。あまり若くもない身体を酷使しての大仕事になるが、良い仕事をするための必須の作業なのでがんばらねば。

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  • シナノキの使いみちを教えてください。

  • シナノキの用途ですか。
    昔は樹皮から強靱な繊維を取りシナフ(シナ布)という布に用いられていましたし(現在もか細く工芸品として使われているはず)、後は経木、マッチ軸など。圧倒的に多いのがシナ合板でしょうね。
    うちではカツラ、ホウノキ、桐材と並んで抽斗の側板、あるいは棚板などに用います。白く美しく、軽く、よく滑る、といった適性があります。気乾比重は0.5位?
    変色菌に冒されやすいということがありますので、乾燥環境は要注意です。

  • 古い話題を持ち出してしまってすみません。
    ウォールナットの製材方法はどのように決めているのでしょうか?
    もちろん、使う場所によって変えるということも考えられますがウォールナットを柾目に挽いてもおもしろくないような気がします。
    所謂、丸挽き(ダラ挽き)以外にも用途に応じて挽き方を
    変えているのでしょうか?
    簡単に文章で表せる問題でもないかもしれませんが、どのような挽き方をされているのかだけでも教えていただけませんか。

  • acanthogobiusさま Walnutの製材方法ですか?
    さほど特殊なやり方を取るということもありませんし。
    >柾目に挽いてもおもしろくない
    というものでもありません。
    突き板屋などでも板目(ロータリーも含め)、柾目、追い柾、など様々です。
    壁面などに納めるならば、板目ではややうるさくなるし、柾目ですととても品が良くなる、というように美観上大きく影響しますね、
    柾目の突き板を取る場合、太い原木から柾目に2枚、あるいは4枚、部厚く木取り、スライサーで突いていきます。
    比較的素直な丸太でしたら、柾目ですので、矧ぎ部分も判然としませんので、幅3尺として、3〜9枚などの枚数で構成します。
    ボクはWalnutの良質な材木を突き板屋に持ち込んで上記のように突いてもらい、これでランバーコアに練ったり、6mm合板を作ったりすることもあります。
    家具に於いても帆立、扉鏡板などには板目を持ってきて、柱、棚口、扉枠など反りを極力抑えたいところは柾目、などといった使い分けをするのはごく一般的な手法。
    扉枠の柾目取りの場合、ボクは板目の厚板から見込み側に割いて木取るということは良く取る手法です。
    因みに今回は1本を全てミカン割りにして柾目を取りました。

  • つき板合板まで作るんですね。
    ウォールナットの場合柾目ではその独特な色の濃淡が現れにくいような気がしたものですから。
    それと楢などに比べれば板目でもそれほど狂いを気にしなくてもよさそうな感じなので。
    近いうちに60センチ位のウォールナットを1本買ってみようと思っています。
    さしあたり作る物が決まっていないのでどのように製材するか迷っています。
    丸挽きしておいて柾目はartisanさんが上記で言われている
    ような取り方をするのが無難な所でしょうか?
    乾燥も人工乾燥するか迷っています。
    1本でオールマイティが難しいのは分かっているのですが
    私としてはその辺が限界です。

  • 60cmのWalnutですか、すばらしいですね。
    用途が決まっていないのでしたら、厚めに挽いておかれるのが基本でしょうか。
    乾燥後、框ものへの木取りでしたら、厚み方向に割いていけば良いでしょうし、必要とあらば再製材して半割りすることも可能です。
    乾燥の考え方ですが、なかなか難しいです。
    基本的には天然乾燥をしっかりさせた後に人工乾燥に入れるというのが良いです。
    天然乾燥だけでは含水率がなかなか下がり切りませんし。人工乾燥をしっかりやっておくことで乾燥後、天然乾燥のものと較べ含水率が戻りにくくなる、というメリットがあることも確かです。
    ただWalnutのように色が命、という樹種では人工乾燥は注意が必要です。多くの乾燥システムは強制的な加熱、調湿での手法ですので色褪せを覚悟せねばなりません。時間的余裕、および場所的余裕があれば天然乾燥のみで終えるということも選択肢の1つです。
    なお、この場合含水率計でのチェックは必須になります。(装備していなければ、取引のある材木屋に借りるなどしましょう)
    成果をまた教えてください。

  • ありがとうございました。

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