工房 悠はクラフトマンシップの工房です

日本では古来より木工という文化が連綿として生活の中に息づいてきていますが、私たち木工職人はこの継承者でもあります。

今、新自由主義とグローバル化の世界潮流の波に洗われ、こうした伝統的な産業、文化というものが衰退の一途を辿っていることは残念なことです。↗

私は今あらためて木工というものに向き合い、私たちの現代の生活空間に有用であるばかりか、美しく快適な暮らしに寄与するものでありたいと考え、日々カンナ屑まみれになりながら活動しています。

アーツ & クラフツ様式

工房 悠は木工家具を制作する小さな家具工房です。
デザイン・設計から、原木調達、制作、販売まで一貫した木工を行うクラフトマン シップの工房です。

伝統工芸としての木工をそのままに展開するのではなく、大量生産の産業構造の下で失われてきたものづくりのスピリチュアルな要素を現代に蘇らせ、高い精神性を持った高品質の木工家具を提案しています。
アーツ & クラフツ様式に基づいた、手仕事としての木工の復権がここにあります。

英国から欧州全域、さらには日本にまで、19c末から20c初頭に現れたこのArts & Crafts運動ですが、機械生産で失われてきつつあったモノ作りの手法、精神を復権させ、時代環境に合わせながら、あるいは進取の精神で時代を先取りした、高品質で美しいものを提供しようというものでした。

工房 悠はこの考え方を継承し、本当の価値、上質な生活空間を作り上げるために、木の質感を大切に生かし、シンプルでモダンな家具のデザイン、制作を心がけています。

現代社会生活でのストレスに疲弊する人には潤いを、また美を追究する人にはファインアートとしての木工家具を提供いたします。

様々な木工に取り組んでいます

制作対象は、木工家具全般(キャビネット、テーブル、椅子、など)ですが、木工小物、照明器具、などトータルに展開しています。

また個人住宅にとどまらず公共施設、店舗、オフィスなどの家具、什器制作なども承っています。

量産家具とは異なる、オリジナルな特注家具制作を行っていますので、顧客の居住環境、家族構成、あるいは嗜好に合わせ、さらにはご希望の機能を付加させたりと、自由な展開が可能です。↗

William Morris(1834 - 1896)

Arts & Crafts 関連愛読書

手鉋でのシェイピング切削

手業の多用(天秤指の加工)

制作手法について

上述のように、デザイン・設計から、原木調達、制作、販売まで一貫した木工を展開していますが、分業形態が当たり前の現代のモノづくり現場とは、その様相は大きく異なります。

しかしモノづくりの基本は、この一貫生産にあると思いますし、木工というジャンルであればこそ、そうした牧歌的な制作スタイル、作風も可能ですので、脇目もふらず頑なに取り組んでいるというところです。

日本においては世界に誇る木工加工技術の優れた体系が遺されています。
工房 悠は先人からこれらを貪欲に学び、復権させ、優れた木工家具を提供したいと考えています。
さらにそこに留まらず、高機能な近代的な電動機械も積極的に導入し、高精度、高品質な制作を可能とする環境を整えています。

テクニカル的な領域での事例を上げますと、

仕口(木工における基本的な接合の仕様)はもっぱら「枘(ほぞ)組」です(ダボは使いません)
組手も「天秤差し」に代表される、手仕事を多様しています。

ここではこれ以上の詳述は避けますが、木工という自然素材を対象とするための独特の困難さを、先人たちが弛まずに築き上げてきた技法を習得し、修練を重ねることで解決させ、現代の木工というものを日々考え、実践しています。

完成品事例(古刹・庫裡)

仕上げ塗装について

エコロジカルな塗料、漆と植物油

工房 悠の木工家具の仕上げ塗装では広く一般に用いられている合成樹脂塗料は使いません。漆、植物油などのエコロジカルで安全無害な自然有機素材、天然塗料を用いています。
現在、住宅、家具の塗装の主流は、ラッカー、ウレタン塗装に代表される合成樹脂塗料を用いた塗装です。

この合成樹脂塗料は近代の工業化社会のなかでの生産性、堅牢性、などを追求してくてきた結果としての技術革新の成果の一端でした。

しかしこれは環境、人体の健康に様々な弊害をもたらせてきていることが既に明らかになってきています。(シックハウス症候群、アレルギーなど)
人は、健康で安全な生活を送る権利を有しています。
しかし現状は有害物質だらけの住宅建材に囲まれ、また施工業者も作業工程での皮膚接触、消化吸入のリスクにさらされていますし、さらに大気の汚染はオゾン層の破壊の原因にもなっています。↗

従って、家具の材料、製作工程にもエコロジカルで安全な方法を取りたいものです。
工房 悠が行うオイルフィニッシュ、拭漆はいずれも自然有機素材、天然塗料ですので安心してお使いいただけます。(取り扱いの方法につうては、こちらをご覧ください)

素材の美しさを引き出す塗装

漆と植物油は健康的塗料というだけではなく、素材の本来の美しさを引き出す性能からみてもこれらは最良の塗料です。

合成樹脂塗料は素地の善し悪しにかかわらず、塗装プロセスで色調の調整、塗面の平滑調整ができ、そこそこの仕上げをすることができますが、本来の素材の美しさを引き出すものとは残念ながら言えません。

拭 漆

拭漆という手法は生漆(きうるし)を10数回塗っては拭き取り、塗っては拭き取りを繰り返すことにより、堅牢な塗面になるばかりか、素材のもつ本来の木味を引き出してくれますし、他の塗料では出せない独特のつやと輝きをもたらせてくれます。(従って日本の白木に見られる木目のきれいな材種にはとても向いています)

ともすると「漆」というだけで、何か高級品、日常使いにはちょっと、取り扱いが難しそう、といった感があるやも知れませんが、心配には及びません。↗

漆塗りは耐水性は強く、程々の熱にも強く、耐薬品性も合成樹脂にひけを取りません。

合成樹脂の塗装は完成、納品されたときが最高の状態で、そこから劣化がはじまるのに対し、漆塗りはむしろ逆に経年変化で風合いが増してきます。最初は黒ぼったい風合いが一年も経過すると透明感が増し、素材の木目はすっきりと現れてきます。

拭漆(ミズナラのテーブル)

オイルフィニッシュ

植物油を用いるオイルフィニッシュという手法は、合成樹脂塗料とは異なり塗膜はつきません。

塗膜で素地を保護するのではなく、生地に深く含浸させ、中から固めるという手法です。

塗面はいわゆる濡れ色となり、落ち着いた深い味わいを醸し出してくれます。
確かに使用環境では、耐熱性に劣るとか、濡れた熱いお茶碗を置くと輪ジミができやすいといった欠点があるのは事実ですが、良い素材を用い、良い仕上げをした木工家具にはこれにまさる仕上げ方法はないと、確信を持って言えます。↗

特にブラックウォールナット、あるいはローズウッドといった濃色材にはたいへん好都合で、材色が冴えわたり、木目が明瞭になりますので、素材の美しさを生かした仕上げになります。

お使いになる方がその家具の使用環境を考え、特徴を理解していただき、必要に応じメンテナンスをしていただけるとするならば、この手法をお薦めします。

オイルフィニッシュ(ウォールナット+メイプル)


サスティナブルなものづくりを

塗装工程のみならず、生産過程全般においての問題ですが、工房 悠は持続可能な社会の再構築に寄与するという↗
スタンスからも生産工程では化成素材を排除し、環境適応型の生産現場として常に意識を高く持ち続けたいと考えています。