木工機械設備と工具について
木工とは木を切ったり、削ったり、穴を穿ったり、といった加工工程の積み重ねです。
大昔は人力で行っていたものが、産業革命を経て、動力を利用する木工機械が様々開発されてきました。
正倉院の遺物に見られる精緻な木工作品もほとんどが手工具によるものと推察されますが、しかし恐らくはその時代の最高の性能と、合理性を有するハイテクな工具を用いて制作されたに違いないでしょう。
いつの時代にあっても、手工具にしろ電動工具、機械にしろ、目的とする加工工程に最もふさわしい道具の選択をすることが肝要です。
高い精度と、高い生産力を求めるならば、適切な木工機械を使用するという選択になることは自明です。その結果その時代の最もハイテクな設備を選択することになったとしても。
つまりはいつの時代でも、生み出されるものはその時代背景に規定されるということでしょう。
生産性を高めるという命題こそが大衆消費社会における価値基準であるからです。
しかし工房 悠は木を単なる工業生産物の素材として扱うものではなく、それぞれ固有の表情を持つ有機物として位置づけているので、機械、工具の考えかた、使い方も自ずから異なってきます。
同じ機械でも量産家具現場のように生産性を追求するためだけの使われ方と、手の延長線上としての手工具、さらにこれに動力を介し精度と生産性を獲得した機械を使いこなそうとする考え方では自ずからアプローチが異なります。
手工具において発揮される精緻さも、機械においてもこれをとことん使いこなすことにより同様に可能になるのです。
同じひとつの機械でもこれを使う職人の熟練度、加工目的、求める精度により生み出されるクォリティーは様々なのです。
機械、電動工具のメンテナンス、修理について
機械のメンテナンスは従って機械屋さんが定期的に点検してくれたりという環境にあります。
しかし機械屋は機械屋です。木工のことに関しては必ずしも詳しいものでも無いわけです。
したがって木工機械の日常のメンテナンスはもちろんのこと、できる限り修理などもユーザー自身の手で行いたいものです。
冒頭記述しましたように、やはり機械、工具も手工具の延長線上にあるという認識があれば、己の手先として機械工具のご機嫌も解ろうというものですね。
良いクラフトマンは機械、工具設備の面においてもゼネラルマネージャーでもありたいものですね。