電動工具について

が木工を始めた頃、木ネジの揉み込みは「ヤンキー」と称する半自動のドライバーで行っていました(先端チャックとハンドル間の軸にスパイラルに溝が切ってあり、ハンドルを上下動させることにより、先端に回転運動を与えるというもの)。
「ヤンキー」という半自動のドライバーを知っていますか家具材は概して堅い木が多いので大汗をかいての作業でした。

しかしその数年後には充電ドリルドライバー、さらに数年後には充電インパクトドライバーという優れた機構の電動工具が急速に普及し、木ねじ緊結作業はこれらに替わってきたのです。
あの《ヤンキー(米国から入ってきたから、このように称するの?)》は今では博物館行き?。
様々な力仕事、技能の多くが今では優れた電動工具が代替してくれるようになってきました。

とてもラクチン。しかしこれを謳歌するには対象とする素材を良く知り、電動工具の能力の優れたところと同時にその限界も知らねばなりませんね。

工具でやっていた昔は長年にわたる日々の修練とともに、自ずから知らず知らずのうちに身体が素材の特性を覚え、技能というものを体得してこれたのでしょうが、今の時代はこれらの多くが電動工具に代替され、熟練職人のごとくにこなすことが可能になってきました。
しかしこれは時として、素材の固有の特性を無視し、力任せにねじ伏せてしまいかねない問題も孕むものなのです。

職業訓練校出の弟子志願者に機械を使わせると、多くの子は丸鋸の選択に関心がないようなのですね。

縦挽きには縦挽きの、横挽きには横挽きの刃が付けられているのですが、動力で強引に切れてしまうので、選択の必要性を感じないようなのです。
しかしこれを手鋸でやろうとすれば選択を迫られるのは必至です。

それぞれ適切に使い分けなければ、良い切削はできませんし、また作業者には無駄な疲労をもたらしてしまいますね。

練によって初めてまともに使うことができる手工具と、誰でも経験を問わずそれなりに切れてしまう動力機械とでは、各々意識的に対象化しなければ本来の性能を発揮させることはできないものなのです。

言い換えれば、科学技術が飛躍的に発展した時代においても、そこに至る歴史と経験を踏まえることが肝要ということですね。手の延長線としての電動工具あくまでもそれぞれの手工具の延長線上に電動工具があるという位置づけがないと、逆に工具に職人が使われてしまうという“転倒”が起きかねないことを知るべきでしょう。

ハンドルーターによる送り寄せ蟻溝加工