工房2階に設けられたショールームへのドアです。
間口が4尺強ありますので、親子ドアになりました。
いわゆるガラス戸の風情ですが、嵌められているのはポリカーボネートという透明な樹脂のパネルです。
スモークというタイプのものですので、内部が半透明に透けて見えます。
少し具体的に見ていきましょう。
間口1,260mm、高さ2,100mmという枠を分割し、間口850mm、410mmの親子ドア。
いわゆる框組のドアです。
材はタモ。
嵌めたスモークのポリカーボネートは10t のものを使いました。
中空の構造になりますが、少しは断熱も期待できるでしょうか。
ガラスは透明度の高さ、平滑性の高さ、などから建具ではもっとも広く用いられてきていますが、近年、このポリカーボネートもかなり普及してきているようです。
価格的にはガラスよりやや高価であるかもしれませんが、軽量、多様な内部構成、色調、そして外部圧力にも耐えられる堅牢性など高い評価を与えることができるようです。
構成ですが、框とは言いましても、上下の横桟は、いわゆるナチュラルエッジ。
今回、ドア材として、かなりの材積を使いましたので、これも購入したタモ材です。
ただ、上下の桟は、幅も必要ですので、手持ちのヤチダモ(内地国産材)を使いました。
縮み杢が綺麗に出ています。
この手持ちの材は丸太原木で購入したものですので、皮付きのまま製材、乾燥され、在庫管理されていたもの。
そこであえて、このナチュラルエッジ(皮付き=耳付き)を意匠的に取り込んだというわけです。
既製のメーカー品にはあり得ない、自作ならではの意匠というわけです。
こうした意匠への評価は分かれるでしょうが、個人経営の家具屋であれば、許容されても良いでしょう。
なお、左右、親子のドアですが、横框の材は1枚の材を通して用いていますので、より自然に納まっています。
上がり框ですが、フロアとの段差が20cmもありまして、少し目立っていますが、これはミズメの柾です。
ミズメは今では稀少材に分類されるほどにめずらしいものになっていますが、松本民藝家具との関わりもあった家具職人としては、1つのアイコンのようなものでもあるわけです。
仕口は蛇口(馬乗り)で、ナチュラルエッジの部位も含め、ぐるりと角面を回しています。
建具の技法としてはごく当たり前の仕口になりますが、日本の古来からの伝統技法は、その技術的合理性とあいまって、意匠的にも美しく納まっています。
ハンドルはソメイヨシノの枝で造りました。
皮をそのまま残し、枝振りを活かし、ハンドルとしました。
ドア、ハンドル部にこうした自然素材を取り込むのは、見て楽しく、触って嬉しいものです。
少年、少女の頃、母親の制止を振り切り庭の桜の木に登り、普段には見ることのできない新しい視野の拡がりを目にしたときの喜び、そして樹上から降りてくる時の樹皮から伝わってくる感覚は、これが樹というものなんだという記憶として刻印されてきたはずです。
大人にもなれば、そうした原体験からははるか遠くで生きていくわけですので、たまには触れるのも悪くないでしょう。
寸法 | 1,260w(親:850)40d 2,100h |
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材種 | タモ、ポリカーボネート、ソメイヨシノ枝 |
仕上げ | オイルフィニッシュ |
価格 |