以前より個展などをご覧いただいてきた画家のご婦人からの依頼による制作でした。
長期療養中であったご主人を亡くされ、間もなくのお話しでした。
ご子息、娘さんとともに来訪され、ご相談させていただきましたが、サンプル展示の仏壇をご覧いただき、お住まいのマンションにちょうどフィッティングしそうだと気に入っていただき、他、材種、細かな仕様などを摺り合わせし、スムースに契約にいたり、制作に掛かったものです。
【希望されたイメージ】
ということでした。
工房 悠のスタイルでもある端正な作りを基本とし、仏壇としての基本的な機能を満たすものとして、ディテールの設計をさせていただきました。
【構成】
上下2段のキャビネット様の構成です。
〈上台〉
板差しの構成です。幅広い帆立も無論、矧ぎの無い1枚板。
膳引き(引き出すことのできるトレー)を含み、須弥壇などの3段構成。
この仏壇は全てソリッド(無垢材)を用いていますが、膳引きのみは厚突きのチェリーをフェイスに、ランバーコアで錬っています(駆動部分であるため、反りの防止は必須)。
背部は本柾のブラックウォールナットを配し、その中央に縮みのタモを逆三角形に納めています。
その境界は黒檀でアクセントを付けています。
この2種を鏡板として、框枠組みに納める構成です。
内部照明
2wのLEDランプ(電球色)を上部幕板裏側に取り付けて、扉の開閉と連動させ、ON、OFFさせます。
当初、依頼者からは乾電池での駆動を求められ、そのように設計したのですが、
扉を開けておくことが多く、電池の消耗が気になり、AC電源に変えて欲しいとの改修依頼へと。
元々、乾電池仕様でもUSB 5.5v供給での駆動であったことで、AC100v → USB 5.5v 供給アダプタを介在させることで問題無く、スムースに改修。
乾電池などは背部、下桟を彫り込み、内部からは隠し、外部からもフラットに納まる設計(画像参照)
仏壇の内部照明は以前より心がけていましたが、最近の市場ではUSB規格の周辺機器が充実し、容易に調達可能となり、たいへん助かっています。
Mgキャッチ
扉のキャッチは、框最上部にマグネットを半埋込み。
対応する幕板側は、木部内部を彫り込み、ここにマグネットを埋込み、隠しています。
マグネットはいずれもネオジム。(木部内部に隠すにはネオジムの強力な磁力が無いと無理です)
〈下台〉
框組です。
広い鏡板は、矧ぎの無い1枚板
上部に2杯の抽斗を配置し、その下は棚3段(上下可変)
抽斗ツマミは周囲を彫り込み、前板からあまり迫り出さないようにしています。
全体の奥行きを確保したいがための配慮です。
【素材】
用いた材はアメリカンブラックチェリー。
これは7年ほど前に原木から製材したものです。
下台の框に用いた、50mm厚のものから、薄い鏡板まで、1本の材から穫られたものであるため、木取りにおける不自然さからは免れ、色調整せずとも、統一感があります。
扉の鏡板(羽目板)は柾目ですが、これも幅広の材を厚く製材したことによる成果の1つです。
木取りはいずれも矧ぎ無しの1枚板のみを用いていますが、他の家具とは異なり、こうした聖なる祈りのための仏壇は、木取りの段階から最上のものを使っていきたいものです。
寸法 | 500w 380d 1,540h |
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材種 | アメリカン ブラックチェリー |
仕上げ | オイルフィニッシュ |
価格 |