ブラックウォールナットの仏壇です。
内部、背板には縮み杢の楓(カエデ)が大きくあしらわれ、引き出しはバーズアイメープルを用いる事で、仏壇一般に視られる辛気くささを排し、モダンでシンプルな美しさを追求しました。
依頼された顧客は、器や被服を中心に、モダンなクラフトを扱うギャラリーのオーナーでしたが、それだけに審美眼の豊かな方であるため、デザイン設計から加工、仕上げ、そして納品に至るまで、緊張を強いられる制作過程でした。
お父様を偲び、祀るものでしたが、気に入っていただき、感謝の言葉を戴いたとき、やっと安堵したものです。
構成ですが、台座と支輪に帆立(側板)を立て、頂部の幕板(幕板内部にはネオジムマグネットを封入し、キャッチとして効かせています)、抽斗の棚口、そして棚板(須弥壇)を配しています。
背板は框で枠を組み、杢のカエデを逆三角形に挟んだ板を嵌めています。
扉は4分割構成の折戸です。いずれも無垢材であるために、反張を抑えるためのハシバミを施しておきました。
いわゆる、仏壇屋が作る張り物(合板、MDFなど)を用いたものではなく、全て無垢材であることは当然としましても、ブラックウォールナットの縮み杢部分を贅沢に用い、これを全体的に統一感を持たせるような木取りがされていることが最大の特徴と言えるでしょう。
扉中央の黒い材は紫檀です。
扉の召し合わせ(拝み、などとも称されます)であると共に、見込み(サイド)の一部を彫り込み、手掛けとしました。
上述のように、扉の固定は支輪下の幕板に納めたマグネットが受けます。
幕板の内部を彫り込んで埋めたのですが、いかにネオジムとは言え、その強度はやや弱かったのが反省点です。
全体としては、バランスも良く、気品高いものになりましたので、良かったと思います。
仏壇は、うちのような家具工房としては、それほど多くの作品事例があるわけではありませんが、個人を祀り、偲ぶ大切な品として、精一杯に心を傾けて作らせていただきます。
寸法 | 540w 425d 900h |
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材種 | ブラックウォールナット、バーズアイメープル、紫檀、楓 |
仕上げ | オイルフィニッシュ |
価格 |