新築住宅への調度品制作の構想を抱え、若いカップルがショールームに来訪され、いくつかの家具制作依頼を受けた中の1つでした。
この「工房 悠」Webサイトには掲載していませんが、以前、同じようなデザインの椅子を制作しており、自宅で使っているものをご覧いただいたところ、他のいくつかの異なるデザインの中でもそちらを気に入っていただき、今回、それをさらにブラッシュアップさせ、制作した椅子です。
意匠の基本的部分はそのまま残しつつ、ワイドのボリュームアップと、前後脚部の造形をよりシンプルなものとして描き直しました。
椅子としての基本的な機能を押さえつつ、過剰な装飾を排しつ、エレガントな美しさを追求。
また座板と脚部の結合の仕口も、より強度を増すよう改変。
材は真樺。一部、笠木などにミズメも混在。
笠木は105mmの厚みのものが必要で、ミズメの赤身で105角のものが潤沢に在庫していたことから、これを用いました。
座板は540mm幅もありますが、矧ぎの無い1枚板で構成しています。
真樺という材種そのものが大変品薄になっている中にあって、これはなかなか贅沢な木取りです。
バックの意匠は、元々のものを大きく変えるものでは無いのですが、幅広にしたこともあり、それに合わせ微調整。
この3枚の背当たり、機能上重要なのはその下部の貫です。
この部位は第3腰椎を支えることになり座り心地に大きく影響してきます。
この貫部分で座位の姿勢における要である腰椎上部を支えてやることで、長時間の使用においても、身体に余分なストレスを与えること無く、寛ぐことができるものです。
若い頃にデザインしたものは、その発想に高く評価されるものがあったとしても、木工固有の納まりであるとか、構造的な強度というものは、未熟なところも少なくありません。
こうしたところに熟練を経た眼と腕で照準を合わせれば、よりブラッシュアップしたものとして再生させることができます。
寸法 | 570w 520d 880h |
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材種 | 真樺(一部 ミズメ) |
仕上げ | オイルフィニッシュ |
価格 |