ディテール、その1:引き出し
ディテール、その2:扉背部
ディテール、その4:ハシバミ 加工途上
主要な部位にクラロウォールナットという稀少材を用いた李朝棚です。
日本国内でもクラロウォールナットを用いた家具を見掛けるようになってきました。
ただ李朝棚というアジアンスタイルの家具に、材種としては実に特異な雅味を有するクラロウォールナットを用いると言う、大胆でやや無謀な試みに挑むのは、たぶん工房 悠、杉山くらいのものかもしれません。
私はこれまでも好んでこうした取り合わせを行ってきましたが、これが成功しているかどうかはご覧になる人、使い手にゆだねられるということになります。
ただ言えることは、それまでこの材種を知らない顧客にも高く評価され、喜んでお求めいただいているという事実があるということです。
この意匠は、既にupされている〈クラロウォールナットの李朝棚〉と同様ですが、ややスケールダウンしたものになります。
間口が2.5尺強、高さは6尺ほど。
むしろこの程度の方が、住宅の調度品としては向いているのかも知れません。
元々は展覧会に展示した同種の飾り棚に強い関心を持たれた方があり、部屋に置くにはやや大きすぎるので、サイズダウンして作って欲しい、との依頼からのものでした。
柱もプロトタイプのもの同様に、二層の構成をより視覚的に表すため、上部を細く絞り込んでいます。
また、この柱ですが、一般的な構造ではなく、45度捻る(ひねる)ことで造形的な妙味が醸されています。
扉はフラットな構成ですが、柱を45度捻ることで、見付全体の印影が豊かになります。
このことで仕事は数倍難易度が増しますが、そこは作者の心意気というものです。
今回、Claroを用いたのは正面の扉2枚と引き出し、そして左右の帆立の羽目板です。
いずれもClaroの特質を表していて雅味があります。
扉はClaroの根上の部分で多くの瘤杢(Burl杢)、あるいは縮み杢(カーリー杢)が醸していますし、引き出しは、よりClaroらしい特有の杢をブックマッチで構成しています。
帆立の羽目板は見事な縮み杢が出ています。1.5尺近い、幅の広い一枚板です。
顧客の要望で、扉を含め、全てを無垢材でとのことでしたが、扉をどのような構造にするのかが大きなポイントになります。
無垢材ということを前提に考えた場合、無垢材の特質である、反る、曲がる、伸びる、縮む、といった物理的なネガティブな要素を排除するため、框組で構成し、ここに一枚板を嵌め込むというのが一般的です。
この框方式では扉1枚に付き4本の框部材が必要となり、この縦横の部材が意匠を大きく規定付けることになります。
しかし、私はこの扉部分はあくまでもフラットな構成とし、良質な材だけで見せたかったため、框組の方法を取らず、ある別の方法を選択しました。
「ハシバミ」という手法です。
画像の〈ディテール〉にある通り、扉の材の両木口に別の材を嵌め込んでしまい、反りを防ぐというものです。
ただ接着剤で接合するのではなく、扉材の木口に溝を開け、ここにクサビ状にハシバミを咬ませるわけです。
しかもハシバミというのは一般には表部分にもこのハシバミが表れてしまうものなのですが、これではせっかくの意匠が台無し。
そこでハシバミはあくまでも裏側だけで処理するという方法を取ります。
これにより、扉材の反張を抑えつつ、扉としての機能が維持され、Claroの美しさをそのままシンプルに押し出すことができます。
なお、材の伸縮についても考慮されねばなりませんが、板材を徹底して乾燥管理しつつ制作しています。
引き出しの引き手は、ローズウッドの工房 悠オリジナルのハンドメイドです。
丁番は目立たなくしたいという考えから、ヒンジを用いています。
寸法 | 760w 450d 1,200h |
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材種 | ブラックウォールナット、クラロウォールナット |
仕上げ | オイルフィニッシュ |
価格 |