ノーベル文学賞・クラスナホルカイ / タル・ベーラ監督(2/2)
映画『サタンタンゴ』

クラスナホルカイ氏に授与されることとなった、2025年ノーベル文学賞。
スウェーデン アカデミーによる授賞理由は「終末的な恐怖のただ中にあって、芸術の力を再確認させる、説得力と先見性のある作品群」との評価でした。
このクラスナホルカイ氏の『サタンタンゴ』は処女作にして代表作とされ、ハンガリー現代史の壮大な叙事詩的な作品です。
日本国内でもかねてから翻訳出版企画が進んでおり、2026年夏頃の刊行予定とのこと。

小説・『サタンタンゴ』は今から40年前の1985年に発表された作品。
タル・ベーラ監督はこの『サタンタンゴ』の映画化を構想し、クラスナホルカイ氏との共同作業に入っていくのですが、その長大さからの資金面、さらにはハンガリー政権にとりあまりにもセンシティヴな内容であることなどから、『サタンタンゴ』の映画化はいったん断念し、先に『ダムネーション/天罰』(脚本:クラスナホルカイ)の共同制作が優先されたとのことです。
その後、4年の歳月を掛け完成させ、構想からすれば7年後になる 1994年に公開されました。
この時期と言うのは、ベルリンの壁が崩壊し、ペレストロイカを経、ソ連解体へと繫がる歴史的な結節点で、このドラスチックな体制転換はハンガリーにも及び、混沌とする中にも自由な空気が横溢し、それまでのあらゆる文化的創造への監視も弱くなり、やっと『サタンタンゴ』の本格的制作へと入ることが可能になったものと理解すべき、7年だったのではと思います。
その後、タル・ベーラが制作する長編映画の全てにクラスナホルカイ・ラースロー氏は共同脚本家として参加。
まさにパートナー的紐帯で強く結ばれた二人と言って良いでしょう。
日本国内での上映は、作品の4Kデジタルレストア版が公開された、今から6年前の2019年になります。
残念ながら当県内での上映はありませんでしたし、その7時間余という長尺さから劇場での鑑賞を諦めていたのでしたが、一昨年の暮れの頃だったか、Amazon Prime Video にリストされることになり、この時に視聴の機会を得たということになります。
深夜、1.5hほどで数日に分け、スコッチ片手に暦が替わる時間帯まで 27″iMacで楽しんだものです。
(劇場での上映では12の章を3つに分け、2度の休憩を挟み、一気上映されたようです。)
さて、最初はその映画手法に馴染めず、集中できずにいたものが、2時間を越えたあたりからどっぷりと魅入られ、目は輝き、嵌まってしまったのでした。
映画手法として特徴的なのが7時間18分という超長尺ながら、わずか150カットという圧倒的な少なさに示されるように、とにかく1つのカット割りが長い。3分や5分は当たり前、
(以下、一部ネタバレも含みますが、この映画のあらまし、私が受けた感想を記します。)
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木工家具のデザイナー & 職人のartisanです。
