工房通信 悠悠: 木工家具職人の現場から

コートスタンド Woodpecker(その2)

新年が明け、寒の入りを迎え……、

寒中お見舞い申しあげます

5日が二十四節気の〈小寒〉、20日が〈大寒〉となりますが、暦の上では一年で最も寒い時季ということに。
実際、寒いですよ。ブルルッ

温暖と言われる静岡の惚けた人間だからなのか、アンダーウェアから作業着まで真冬モード。
夜なんか、湯たんぽですもん。

・・・寒さのグチはともかく、新年、初のBlog更新です。
2026年も どうぞご贔屓に !!!!

この正月休み
工房 悠の本業のwebサイトのメンテナンスに費やされ、Blog更新を怠ってしまっていました。
遅ればせながら、宿題だった〈コートスタンド 〉の続きを。

コートスタンド

さてさて、このコートスタンドは前回触れた通り、3本マストの接合、およびWoodpecker の結合部の[納まり]がキモになります。

ここでは、この部位の仕口、アイディアについてお話しします。

3本マストの接合

この3本マストのコートスタンドは一般的によく視られますが、前回も書いたように、3本をすっきりとスマートに接合させるケースを見かけることは無いようです。

それらをデザイン設計した人に尋ねなければその理由は分かりませんが、この3本マストの構造というのは、加工上の難易度から視た場合、簡明でシンプルな作りで、木工技法云々という要請はキホン無用で、初心者でも簡単にできてしまう程度のものです。


そうした容易さから、あえて高度の技法をここに投下しようなどとは考えもしないということは、ありうる想定と言えるかも知れないですね。

しかし、他方、アリの技法を知り、その効用の実用性、汎用性に刮目するであろう、中級クラス以上の木工キャリアの職人であれば、まず最初に思いつく手法と言っても良いかも知れません。
「アリ」はそれだけに応用性、汎用性の高い技法体系です。

他者の設計思考へ想像力を働かせるのはこの程度にし、以下、具体的に視ていきます。

マストにアリ溝を穿つ

この工程、うっかり画像に納めることができませんでしたが、下のDomino 穿孔の画像を参照ください。

マストの接合部(3本の接合、およびマスト上下の接合部)、約130mmにわたる内側直線部にアリ溝を穿ちます。

接合部の内側だけは平滑、直線にしてあり、ここにアリビットで溝を穿っていくのですが、もっとも容易で高精度に加工できる手法は、いわゆるルータースタンド様のマシンを使った方法です。

ハンドルーターでの手作業では、ジグ作りなどがとても面倒。
それに比し、ルータースタンドであれば、直線部から傾斜部へと伸びる部分に、直線部がそのまま延伸しているかのよう、傾斜ジグを仮止めすれば安全、確実、容易に加工ができます。

些末な話しになりますが、このようなアリ溝加工の場合、アリカッターに全ての負荷を与えるのは重負荷切削になり過ぎますので、これを軽減させるため、あらかじめ傾斜盤等で下穴の溝を開けておくのが賢明です。

雇い核用のアリ桟棒の加工

3本のマストを繋ぐためのアリ形状の雇い核ですが、まずは正六角形の棒を作ります(サイズはマストの厚みに規定されます)。

この正六角形の棒の3個所に、アリのオスを作っていきます。
三角形 ×2、という特殊な形状へのアリ桟作りで、少しやっかいな加工になりますが、傾斜盤の基本機能を活かし、落ち着いて、じっくり、丁寧に挑めば、存外、上手く行くものです。

アリ加工の嵌め合い、調整

ただ精度は肝心。噛み合わせがあまり緩いと接合強度が脆弱になりますし、強すぎると、120mmほどの距離を貫通させることはとても難しくなり、下手をすると割裂させてしまうでしょう。
手で押し込める程度の硬さとでも言っておきましょうか。

なお、図示からお分かり頂けると思いますが、アリ䙁の胴付きの長さは、マスト部材の厚みに合わせます。
それにより、接合させれば、マストの端どおしがぴたりと隙間なく 合わさります。

〈呼称〉についてはここでは深く語りませんが、今回のような3本マストの〈アリの雇い核〉による接合は、もちろん機能的には〈チキリ〉ですが、長い距離と、雇い核を介した接合法ということでは、〈アリ䙁〉と〈チキリ〉のハイブリッド、あるいは〈アリの雇い核〉を用いた〈チキリ〉とでも言っておきましょうか。はたまた〈工房悠的接合法〉? ^^)

マスト、上下の接合はDomino

マスト、上下の連結接合はDominoを用いて行います。

意匠面からの全体の構造ですが、下部の9割方は表、裏、あくまでも直線部で、残り一割のマストの結合部で屈曲するカタチ。
上部は外側も内側もテーパー状になっていますが、キホン、直線です。
デザイン的には曲線にした方がより合理的なのかもしれませんが、下段に記すように、Woodpeckerとの結合部の加工上の問題から、これを可能ならしむるために直線にしています(アリ溝ルータービット、および寄せ蟻のためのボール盤加工のため)。

また、この上下の接合部の外側のラインですが、大きく円弧状に、綺麗で滑らかなラインを描くよう、ライン処理しています(下画像参照)。

接地部から真っ直ぐに伸びたラインは、上部マストへの接合部(200mmほどの範囲)で逆方向の傾斜部へとなだらかに屈曲させています。
あえて云えば、デザイン的にはこのあたりがキモと言えるでしょうか。

上下連結部の型板作り

上の直線のマストに下のマストを合わせ、連続的に自然な滑らかさで繫がるよう、直定規などを屈曲させる手法などで型板に墨付けしていきます。

型板作り チップ

なだらかな曲線を描く場合、上述のように直定規などをしならせ、適切な曲面を生成させ描くというのが、1つの賢明な手法ですが。この墨付けにしたがって型板をカットする方法としてお薦めしたいのが、両刃鋸を用いる方法です。

両刃鋸の鋼のしなりを利用し、墨に合わせてカットしていくのです。
今回のように、直線部が多い場合は、手鋸ではなく、移動定盤のある〈横切り〉などを用い、直線部分をカットし、残りの曲線部は、上述のように手鋸でカットする、という2段階の方法を取ります。

えてして、この曲線部を帯鋸や、あるいは糸鋸などで切削するという方法を考えがちですが、手鋸との機能性の差異は明らかで、機械でのカットより手鋸の方が圧倒的に高精度で綺麗にカットできてしまいます。
職人の手業の方が上手く行くものなのです。

つまり、この両刃鋸による曲線のカットという手法は、上述の直定規によるしなりの利用と全く同じ考え方というわけです。

説明が長くなってしまいましたが、上下接合部位、8mm厚のDominoを2段に穿ちます。
10mmのDomino、一枚でも良いかも知れませんが、厚み方向の接合強度を考えた時、8mm、二段の方がはるかに接合強度は高くなります。

Festool社Dominoを日本国内で言及したのはこのBlogの投稿記事が最初でしたが、私のやや前のめりな高揚感に冷や水をかけるコメントも散見されたものの、こうして、大型機械では困難な雇いの枘加工が、ハンディーな電動工具で容易にできるというのは、やはり画期的であったことは間違いが無く、今では多くの大工や、木工屋が有効に使っているようで、最初期の私の判断に間違いは無かったと思います。

Domino 加工途上の画像を少し説明

被加工材の隣りにある木のブロックは、被加工材と同じ厚みのもので、加工の際、Dominoの基準面になるフェンスをより平滑に安定させるためのもの。
反対側の薄い板は、Dominoを適切な位置に開けるため、本体のピンを活用するための当て木です。

加え、こんな芸当ができるのも、ワークベンチ(作業台)がスカンジナビアンタイプで、Dogが有効に使えるからですね。
40年近く使っていますので傷だらけのワークベンチですが、機能上はまったく劣化しておらず、私の終生の相棒というわけです。(ワークベンチの主材にした日本のカバ材はサイコー !!!!)

下の画像は上下の接合、組み立ての工程(BESSEY ボデークランプによる)

2つの部位が屈曲している接合のケースでは、圧締の方法がとても難しいです。
ここでは、3本の最下部の端末を一枚の板で仮止めさせ、この板にBESSEYボデークランプの顎を当て、接合部の上下左右に均等に力が加わるよう、良く良く確認しつつ、クランプを締めていきます。

このようなケースでは、BESSEY・ボデークランプが、顎の長さと共に、その特異な形状がとても有用に働いてくれます。



Häfele コネクターによるWoodpeckerの 結合

このWoodpecker様のフックは3本のマスト最上部のフックを倍増させるもので、大切な部分。
この結合においても、アリ、ということになりますが、ここでは「寄せ蟻」になります。

10年ほど昔、Häfele のカタログを視ていて、気づいたのがこれでした。
6×9mmという、とても小さなプラスチックのアリの駒(「あり継ぎコネクター」という商品)
使うのは、今回が初めて。

Häfele あり継ぎコネクター 断面図

Häfele はこの駒に合わせた金属製のレールも製造販売していますが(動画)、ここでは専用のルータービットを入手し、マストに必要な長さのアリ溝を穿ちます。

ここでは専用のルータービットを入手し、必要な長さのアリ溝を穿ち、
そして〈寄せ蟻〉として機能させるべく、2ヶ所にあり継ぎコネクターが通る穴を空けておきます(画像参照)。

こんな小さな駒で実用性があるのか、もちろん私も懐疑的でしたが、加工上の精度を出せば、案外、実用性がある事が確認されたものです。
ただやはり、耐荷重の懸念は拭いきれませんので、接合部にはボンドを塗布しておきました。

Woodpecker 嘴の納まり

Woodpeckerの嘴ですが、あえて、腹部の結合部より、長くしています。
樹木をコン、コン!と突き、開口している様子にするためですね。
また、寄せ蟻として機能させるため、移動距離の分、多少開くする必要があります。

鉋イラスト

さてさて…、コートスタンドと言ったものを作る機会は稀かも知れませんが、今回紹介した3本の部材を接合させるアリの雇い核の棒、そして Häfele の小っちゃなアリの駒

これらを頭の片隅にでも入れておくことで、接合の手法が問われる、何らかの困難な課題にぶち当たった時、こんな解決法もあるということは知っておいても損では無いかも知れませんね。
あるいは、実践的には、こうした手法の拡張版、応用編というものがあっておかしくないかもしれませんね。

すべからく、スッキリと、クールに美しく。木工仕口はそのためにあるのです。

2026年、より良き木工へ、楽しく、美しく !!!!

hr

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