iPhoneのマイナンバーカードの朗報と、マイナ免許証の憂鬱(5)
(中休み)マイナカード、マイナ保険証、マイナ免許証の憂鬱
マイナンバーカードに健康保険証の機能を紐付け、健康保険証を廃止するという〈改正マイナンバー法〉は2023年、自公、維新、国民の賛成多数(立憲、共産、れいわが採決自体に反対)で成立したのは記憶に新しいところですが、強行採決で無かったとは言え、野党の多くの反対を押し切ってのものであったことは忘れてはいけない事柄です。
マイナンバーカードがなぜこのような産みの苦しみを背負ってしまったのかは、他でも無く、マイナ保険証の医療情報の誤登録、誤発行が数千件にも及ぶ事態に陥り、大混乱を引き起こしたことなどから、制度構築への信頼が地に堕ちたことによります。
そうした構造的な欠陥を抱えたままに、本来、任意であるべきはずのマイナンバーカードの取得を、国民皆保険制度の健康保険証と一体化させることで、半ば強制的に促進させるという狡猾な手法をとり、加え、2兆円を超えると言われるマイナポイントを人参としてぶら下げに至っては、なんとも下心ミエミエの不純で下品な方策だったと批判されたものでした。
私もこれにはさすがに嫌気が差し、本年春まではそっぽを向いてきたのでした。
本シリーズ、最初の記事でも書きましたが、マイナンバーカード、および、マイナ保険証、さらにはやがてこれに一体化されるだろう、マイナ免許証を常時携行することなく、これに代わりiPhoneの Apple Wallet に格納させることで、セキュリティが飛躍的に強化されるとともに、利便性も高まるという、新次元の制度への信頼を担保として、そっぽの姿勢から転換し、取得へと踏み出したところです。
私のこうした考え方というのは、あまり一般的なものは無いのかも知れません。
逆に、スマホに格納されることへの使い勝手の悪さであったり、情報漏洩へのリスクを考える人は少なく無いようで、ここにネガティヴなイメージを持たれるようです。
私はもとより、医療DXは必須のものという理解はありました。
今の時代、投薬処方の印刷物をFAXで薬局に送信されるという、前時代的であり得ないシステムであったり、薬の処方はもちろん、医療の履歴の管理などが紙ベースであることで、患者への適切な医療、適切な投薬を受ける権利が蔑ろにされがちな現状には、自身の身体に直結することから大きな危機意識さえあります。
さらには、巨大ファーマシーによる超高額な新薬の開発や高額療養費制度により、保健医療制度の破綻は必至という危機感も強く、国民皆保険制度の揺らぎへの懸念からも、このまま座して死を待つのではなく、医療DXの促進は現在の医療システムの合理化に資するものとして待ったなしの状況という認識を持つところです。
マイナンバー制度そのものへのイデオロギー的な評価は別として、さらには、ここに健康保険証を一体化させる手法の“悪手”も批判されるべきこと(マイナカードの取得を半ば強制させる手段としてのマイナ保険証の一体化)と思いますが、
事ここに至ってみれば、何よりも個人情報の漏洩を防止させ、安全に、確実に、かつ誰もが容易に本人確認が取れるシステムを提供し、デジタル化のメリット、デメリットの丁寧な説明と、手ほどきを支援していく、そうした総合的な施策が求められるのだろうと思います。
私はこれらが iPhone Apple Wallet 内に構築され、運用されることへの評価は高いものがありますので、そこを判断の基準に、これまで記事を起こしてきたところです。
小児病的にこれらを批判することは簡単かも知れませんが、ここ数十年の日本社会の低迷の一端に〈デジタル敗戦〉があったことは事実ですし、本件のマイナンバー、マイナ保険証、そしてマイナ免許証の動向をめぐる事象を追いつつ、そこでの問題、課題を抽出しつつ、デジタル移行という潮流へは過剰にネガティヴシンキングにならぬよう、是は是、非は非として、冷静に向き合っていこうと考えています。
なお、昨日、少し触れた「スマホで、信用の絡む決済をすることなど、私には無理」という事柄に関し、少し敷衍的に拡張し、考えてみます。
今では多くの人々が手にするスマートフォンですが、これはいわば、〈電話機能、カメラ機能が付いているモバイルコンピューター〉というのが、モノの本質を言い表す理解だと思います。
つまりネットワークに常時繫がっている超高機能なコンピューターを私たちは掌にしているのです。
そうした環境にあることで、違法なオンラインカジノに嵌まってしまう人もいれば、ロマンス詐欺で身ぐるみ剥がされる人もいるというわけです。
私は金融取引に関してはド素人ですので的確な説明はできませんが、スマホでこの種の取引に心を奪われ、結果、大きな損失を被るであるとか、スパムメール、フィッシングメールに掛かってしまうということも、かなりの数に上るはずです。
私は1995年の Windows95のブレイクの年に、はじめてコンピューターを買った口です。
Windowsではなく、Macでしたけれど・・・
それ以来、30年になりますが、その後、2002年に自身のWabサイトを起ち上げ、このBlogはさらにその3年後の開設でした。
40代という年齢からスタートしたというのは、まあ、ギリギリな年齢だったのかも知れませんが、2002年のWebサイトの構築が、デジタル全般の学習機会になったことは明らかで、今にして思えば、木工業務の紹介と共に、デジタル積極活用への親和性獲得としての意味が大きかったのは間違い無いところでしょう。
現在、複数のメールを運用しており、これらの一部は公開してしまっていたことから、1日あたり、100通以上のスパムが着信し、毎朝この処理に悩ましい日々を送っていますが、これまでただの一度もフィッシングや、詐欺サイトにアクセスしたことによるトラブルに巻き込まれるようなことはありませんでした。
メーラーもスパムを学習しますが、ユーザーも同じで鍛えられていますので、「槍でも鉄砲でも持って来い!」という感じです。
ただ、それと同じ事をスマートフォンで出来るかと云えば、まったく自身は無くなるでしょう。
6インチほどのモニターで、Macと同じ事をしろ!と言われても、できるわけがない。
それを、PCやMacもまともに使ってこずに、老いていく人に、スマホをきちんと使ってください!という話しそのものが無理筋というものです。
数年前、高校のクラス会の準備で思い知らされたのは、同年の世代では数名を除き、ほとんどの人がデジタル忌避感が強いことに焦ったものでした。
このシリーズでは、MacとiPhoneをそれなりに自律的に使っている私のスキルを前提にお話ししてきたところで、 iPhoneのマイナンバーカード、およびiPhoneのマイナ保険証の運用が、なぜ紙ベースより、物理カードより安全なのか、理解にはほど遠いものがあったかもしれません。
この種の情報の社会インフラは、取りこぼしがあってはなりませんので、総務省も、デジタル庁も苦労しているものと思いますが、待ったなしのデジタル社会への移行は進めざるを得ませんが、これを忌避する人々への丁寧な説明と、支援、そしてオルタナティヴの手法を常に用意し、取りこぼさない施策は必須なんだろうと思います。
同時に〈改正マイナンバーカード法〉で大きな批判を浴びたのは、度重なる誤登録などの失態をはじめ、近年の政府機関の深刻な情報漏洩などへの不信、前のデジタル庁大臣の人々を見下す傲岸不遜な態度への不信によるものでしたが、感情的なレベルゆえの拭いがたい不安をもたらすものでした。
〈iPhoneのマイナカード〉施行という大事な時期でもある状況に鑑み、所轄官庁には、保健医療制度が抱える現状と、このデジタル化推進への丁寧で、的確な説明を付すことで、不信の汚名を濯ぎ、デジタル制度への移行が意味する希望のある世界へといざなう指導力を発揮してもらいたいものです。
丁寧な説明と支援システムがあれば、忌避感を募らせる人の中には、デジタル制度の利便性、安全性に気づき、キャッチアップしてくる人も少なく無いはずで、そうした施策を粘り強く投じていくことが必要なのでしょうね。

木工家具のデザイナー & 職人のartisanです。
